俺のメイドちゃんだけキリングマシーンなんだけど

兎屋亀吉

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24.パンケーキ

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 警察がこの立て籠もり事件に気づいているのならば警官隊の突入はすでに準備されており、内部から呼応するように支援してやれば生徒たちの救出はあっという間だろう。
 俺はそう思っていた。
 だが、現実には警官隊は一向に準備が整わない。
 それどころか学園の包囲すらも完了していないあり様だ。
 なぜだ。

『どうやら警察内部にも奴らの仲間が潜り込んでいたようで、あちこちでかく乱工作を行っているようです』

 警察にまで入り込まれていたのか。
 あらためて日本の防諜能力の低さを実感したな。
 政治家の中に他国の息のかかった人間が入り込んでしまうのはこの国の政治のシステム上仕方がないにしても、とるも落とすも自由にできる公務員に工作員を採用するなよ。

『警察を擁護するわけではありませんが、警察内部の工作員は全員生粋の日本人です。ただ合法、非合法問わず多額の借金のあるような人間ばかりで、提示された報酬につられて工作活動をしているようです』

 借金で首の回らなくなった人間というのは視野狭窄に陥ってなんでもやってしまうからな。
 厄介なことをしてくれる。
 警察官なんて公務員の中でも給料の高い方の職業だ。
 末端の人間でも普通に生活をしていたら金は貯まっていくばかりだろう。
 多額の借金をするような事態はギャンブルにでもはまらない限りはあり得ない。
 女かギャンブルのどちらかだろうな。
 どっちも立派な依存症だ。
 金策よりも前に精神科でカウンセリングを受けるべきだった。
 だが人間とは弱い生き物だ。
 ギャンブルや女に依存し、窮地に陥った状態で目の前に大金が積み上げられれば正常な判断などできまい。
 かの国がバックにいたせいで奴ら金だけは唸るほど持っているからな。
 きっと借金を全額返済して更に女かギャンブルに耽る毎日に戻ることのできる金額だったに違いない。
 借金がたくさんある自堕落な警察官を描いた漫画があったが、リアルではそんな警察官ただのクズでしかない。
 こういう事態になる前に上司が気づいてなんとかするべきだ。
 大〇部長あんたのことではないから安心しろ。
 〇原部長はいつも自堕落な警察官に怒っている。
 最低限の責任は果たしていると思う。
 きっと責任があるのはもっと上の人事権を持っている人だ。
 怒って変わらないなら辞めさせるしかないからな。
 
「お、おい。まだ助けは来ないのかよ」

「もうすぐここに立てこもって6時間になるわよ」

「こういう事件って、どのくらいで人質が解放されるんだろう」

 まずいな、一向に変わらない状況に生徒たちの精神が不安定になってきている。
 俺はどうやって調べているのかわからないエルザ情報で状況を知ることができているが、他の生徒たちは外からの情報が全く入らない。
 テレビはあるが妨害電波のせいで何も映らないし、パソコンの光通信も線が切断されているようでネットには繋がらない。
 現状を知ることができないというのは恐怖だ。
 大人しく食堂の中にいてくれればいいのだが、勝手な行動をとる生徒が出てくるかもしれない。
 一人でも生徒が外に出るということは通路を塞いだバリケードをどかすということだ。
 それは全員を危険にさらす行為だ。
 生徒たちがそこまで馬鹿ではないと信じたいが、不安に駆られた人間というのもまた借金に首が回らない人間と同じように何をするかわからないものだからな。
 そろそろ何かしら理由をつけて情報を明かしたほうがいいかもしれん。
 俺は雪村を探した。
 俺の口から情報を出すよりも雪村から言ってもらったほうが信憑性があるだろう。
 雪村はちょうど厨房のほうからこちらに向かってきているところだった。
 手にはなぜかパンケーキの乗った皿を持っている。

「みんな、不安だろうけど今は冷静になろう。お腹が減っている人もいると思うから、おやつにしない?厨房のお姉さんたちにパンケーキを焼いてもらったんだ」

「「「わぁっ」」」

 なぜか盛り上がる一同。
 そんなにパンケーキがうれしかったのだろうか。
 こんな状況でパンケーキを出してきた奴がいたら普通ならリンチにされることだろう。
 しかし雪村ならば許される。
 それこそがカリスマ。
 それこそが宗教。
 先ほどまでの不穏な空気は雪村とパンケーキによってすべて払拭された。


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