ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

文字の大きさ
12 / 159

12.【毛魔法】の可能性と【チャージ】

しおりを挟む
 僕は髪を1本伸ばし、抜けろと念じる。
 髪はするっと抜けた。
 すごいなこのスキルなんでもありか。
 僕は抜けた髪を操ろうと念じてみるが、さすがに抜けた髪は操れないみたいだ。
 でもレベルが上がったらできるようになりそうで怖いな。
 僕は髪を操って少し逆立たせる。
 さあやってみようか。
 毛針!!
 針のように尖った僕の髪はスポスポと抜けるけれども、あまり遠くには飛ばずに足元に落ちた。
 まあそうなるね。
 針のように尖らせることができても、自己脱毛することができても、飛ばせるとは限らない。
 僕はおもむろに足元に落ちた毛が生えていた辺りを触る。

「ファッ!?」

 驚きのあまり声が出てしまった。
 僕の、僕の、髪が!!
 さっきまでふさふさしていたそこには、無限の荒野が広がっていた。
 当たり前の話だが、髪の毛も無限に生えているわけじゃない。
 僕は慌てて髪が生えるように念じる。
 髪は元通りファサっと生い茂った。
 よかった、戻った。
 ドキドキした。
 僕はこの技を封印した。
 さて、これでひとしきり【スキル効果10倍】の検証は終わったかな。
 ああ、あと【チャージ】が残っていたか。
 なんかいつも【チャージ】だけ忘れちゃうんだよね。
 僕の持っているスキルの中で【スキル効果10倍】を抜いた唯一のエクストラスキルだからかな。
 え?魔眼?知らない子ですね。
 【チャージ】はそもそも10倍ではないときの威力を検証してない。
 はたして【スキル効果10倍】で威力が10倍になるのか、それともその他の何かが10倍になるのか。
 一応昨日まで着火を2回ほどチャージしているけれど、威力が10倍になるのだとするとさっきの着火の10倍バージョンの2倍くらいの威力だろうか。
 僕はチャージの光球を出現させる。
 虚空に現れたのは着火2回分がチャージされている光球。
 ぼんやりと薄い赤色に光っている。
 とりあえずそのへんの岩に撃ってみよう。
 僕は近くにあった僕と同じくらいのサイズの岩にその光球をぶつけてみた。
 光球が弾けて中からちょろっと火が出て岩肌を舐めた。
 岩には焦げ後もない。
 少し煙が出ているだけだ。
 僕は【凝縮lv1】を使って水をかけ、煙を消す。
 どうやら【チャージ】スキルが【スキル効果10倍】で増幅されるのは威力ではないようだ。
 ではチャージできる容量か?
 しかし僕は元々どのくらいの魔法をチャージしておけるのか試していないので分からない。
 こんなことなら【チャージ】だけを先に取得して検証しておくんだった。
 今どれだけの魔法をチャージしておけるのかだけでも検証しておくとしよう。
 僕は効果が10倍になって松明くらいの大きさになった着火の魔法を【チャージ】の光球に吸い込ませていく。
 40回着火を吸い込ませた状態で、光球は魔法を吸い込まなくなった。
 魔力の消費量は僕の全魔力の半分くらいか。
 どうやら僕の魔力量は一般人よりは少し多いけれど、魔法職を専門とする人たちほど多くないくらいの量らしい。
 転生者特典なのだとしたら、微妙な魔力量だ。
 【チャージ】の光球はぼんやりと光ったままその色を濃い赤色に変化させていた。
 松明程度の火といえども、40回分の魔法だ。
 威力は馬鹿にならないだろう。
 しかしこのチャージ回数が【スキル効果10倍】で増幅されているとしたら、本当の回数は4回になるのかな。
 回数が固定されているのか、威力が固定されているのかは分からない。
 でも後者だとしたら、本来は本当にゴミスキルだったのかもしれない。
 プカプカと揺れる赤い光球を見る。
 この玉に僕の全魔力の半分くらいの魔法が込められているんだよな。
 撃っても大丈夫かな。
 僕は松明を40本まとめた炎を想像して検証をやめることにした。
 どこか高威力の魔法を撃っても大丈夫な場所を探さなきゃな。



 
 オーク、という魔物がいる。
 二足歩行の豚のような姿をしており、体中を筋肉と脂肪の鎧に覆われた強力な魔物だ。
 詳しくはエロ同人を参照。
 冒険者の中には、このオークを倒せれば一人前の冒険者だという風潮がある。
 冒険者の登竜門的な魔物なわけだ。
 冒険者には冒険者ランクというものがあって、薬草ばかり納品していた頃の僕がEランク。
 そして今の僕がDランク。
 一般的に、Cランク冒険者になれれば冒険者として成功したという認識だ。
 つまり僕はあとひとつランクを上げれば、一端の冒険者として認められるというわけだ。
 そこで最初の話題、オークが重要になってくる。
 Cランクに上がる条件の一つがオークを単独で倒すことなのだ。
 スキルが強力になったおかげでゴブリン狩りも作業と化してきたところだ。
 ここらで僕も見習い冒険者を卒業しておきたい。
 これは狩るっきゃない。
 というわけで、僕は今野営の道具を買い揃えている。
 そう、オークはこの街のすぐ近くにはいないために泊りがけで狩りに行かなければならないのだ。
 冒険者としての初めての遠出に、少しワクワクしている。
 もちろんソロ冒険者の僕が街の外で寝起きするのにはそれなりのリスクがある。
 しかしそのへんはちゃんと考えてある。
 ふっふっふ、完璧で鉄壁の就寝スタイルをちゃんと練習してあるんだ。
 あとは色々買い込んで、出発するだけだ。
 僕は市場で必要なものを買い込んでいく。
 この世界には簡単に組み立てられるテントなんてないから、防水加工がされた丈夫な布を持っていって現地で木の棒を組んだものに縛りつけるしかない。
 不便だね。
 僕は手に取った布の酷い匂いにげんなりした。
 なにか動物性の油を塗ったのか、吐きそうな匂いがする。
 僕は比較的匂いのマシなものを選んで代金を支払う。
 必要なものは大体買っただろうか。
 買った物を確認しながらふと横手の裏路地に目を向ける。
 エルフの露店商、シルキーさんは元気にしているだろうか。
 僕はふらりと路地裏に入り込んだ。
 シルキーさんの露店はたしかこのあたりだった。
 前に露店があった場所に行くと、そこには以前と変わらず美しいエルフの商人が店を開いていた。

「あ、あんたはこの前の。ねえお願い。この前のお金もう無くなっちゃったのよ。何か買って?ね?お願い……」

 やっぱりこの人は苦手なタイプだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

処理中です...