ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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31.深山幽谷

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 シルキーさんがこの国を去ってから1ヶ月ほどが経過した。
 僕は毎日オークを狩り、欲しかったスキルを全て手に入れた。
 
一般スキル
 【回転lv5】
 【凝縮lv5】
 【振動lv5】
 【曲鉄lv5】
 【着鉄lv5】
 【浮遊lv5】
 【リキッドステイクlv5】
 【ブラックキューブlv3】
 【詠唱lv2】
 【憑依lv2】
 【骨太lv1】

魔法スキル
 【生活魔法lv5】
 【毛魔法lv5】
 【反転魔法lv5】
 【変色魔法lv4】
 【使役魔法lv2】
 【石魔法lv2】

エクストラスキル
 【魔眼(性別)】
 【チャージ】
 【スキル効果10倍】
 【異世界召喚(スプーン)】
 【異世界召喚(鳩)】

 僕のスキルもよくここまで増えたものだ。
 スキル屋の店主に取り置きをお願いしておいた骨太スキルとシルキーさんの商品の中にあった2つの異世界召喚スキルも取得してよりいっそうごちゃごちゃしてきた。
 シルキーさんの商品の中にはほかに【魔眼(あくび)】と【植物鑑定(産地)】というスキルがあったけれどこの2つは取得しなかった。
 別にゴミスキルだから取得しなかったわけじゃない。
 人間には目が2つしかないから魔眼スキルは2つまでしか身につけることができないんだ。
 だから僕のもう片方の目はちゃんとした魔眼のために残しておきたいというのが【魔眼(あくび)】を取得しなかった理由。
 もうひとつの【植物鑑定(産地)】というスキルは単純に古代文字が読めないからだ。
 鑑定系スキルで浮かび上がる文字は必ず古代文字になる。
 僕には古代文字を読むことができないので取得しても意味がないというわけだ。
 このようにたくさんのスキルを手に入れた僕だけれど、狩りのやりかたは今までと少しだけ変化している。
 これも【異世界召喚(鳩)】と【使役魔法lv2】、【憑依lv2】が合わさることで召喚士のように偵察が可能になったことが非常に大きい。
 感覚強化や索敵系のスキルを持たない僕は今まで獲物を探すことを諦めて、罠を張っての待ちに徹していた。
 しかし異世界から召喚した鳩に憑依できるようになったおかげで、空から獲物を探すことができるようになった。
 憑依している間自分の身体は無防備になるが、僕には防御に定評のある黒巻貝がある。
 黒巻貝で自分を守り、憑依で敵を探し、見つけたら先回りして罠を張る。
 これが今の僕のスタイルだ。
 まだまだ正面切っての戦闘は怖いけれど、オーク狩りでは余裕が出てきたので少しずつ訓練するようにしている。
 今日も僕は鳩に憑依して空から見つけたオークの正面に姿を現す。
 金属製の武器を持ったオークには近づかないようにしているので、こいつはただの棍棒を携えた普通のオークだ。
 オークは僕に気付くと出会いざまに棍棒を振り抜く。
 しかし僕の周囲の空間には反転魔法が張り巡らされている。
 オークの放った棍棒の一撃はその力をすべて反転されてオークの脳天に突き刺さった。
 どうやら自滅してしまったようだ。
 これが最近の僕の訓練だ。
 反転魔法があるので攻撃が僕に当たることは無いと分かっているのだけれど、いざ攻撃されれば怖い。
 だから攻撃から逃げずに反転魔法で跳ね返す訓練をしているのだ。
 1歩も後ろに下がることなく攻撃を跳ね返せれば良、少し下がっても攻撃から逃げなければ可、逃げてしまえば不可として自己採点して記録をとっている。
 最近では良の数も増えてきて、訓練の成果は着実にあがっていると自分では思っている。
 チートの道も一歩からだ。
 僕はオークを血抜きしてそのままブラックキューブに突っ込んだ。
 いまでは僕のブラックキューブはレベル3となり、出せる黒箱の数は30だ。
 10個は獲物を入れる用にしてあるので一日に狩るオークの数は最大で10匹だ。
 今日はすでに4匹のオークを狩っている。
 これだけで金貨12枚にはなる計算だ。
 もう帰ってもいいけれど、もう少しスキルの訓練を続けることにしよう。
 僕は鳩に憑依して次のオークを探した。




 さて、オークの縄張りで狩りを続ける上で忘れてはいけないことがもう一つあった。
 それがお風呂だ。
 以前川沿いの砂地にお風呂用の穴を掘って、お風呂を楽しんでいたときにオークに邪魔されたことがあった。
 そのときに、今度は絶対石を加工できるスキルを手に入れて岩風呂に入ってやると僕は誓った。
 そうして手に入れたのが【石魔法lv2】だ。
 色々試してすでにレベルが2に上がっている。
 これを手に入れるのは中々大変だった。
 金額という意味では金貨10枚と魔法スキルにしては安かった。
 しかしこれは石工が使うスキルで、石工組合に所属していない人間に買うことは難しかった。
 そこで鍛冶屋の店主に石工職人を紹介してもらって、その人にスキル購入の仲介を頼んだのだ。
 そうやってスキルを買う人は少なくないみたいで、組合に所属していない流れの職人さんなんかはそうやってスキルを買うそうだ。
 僕もそれにならって仲介料を払ってスキルを代わりに買ってもらったというわけだ。
 コミュ障の僕には初対面の人にお願い事をするというのは中々大変だった。
 でも僕はやりとげて、こうしてスキルがここにある。
 小石を拾ってスキルの練習もして、スキルレベルもひとつ上がった。
 さっそくお風呂を造ろう。
 僕は川沿いに転がっている大きな岩の上に立ち、そこにお風呂を創造していく。
 石魔法の効果は単純だ。
 触れた石を自由な形に変化させるというただそれだけ。
 ただしその変化はゆるやかで、とても戦闘に使えるようなものではない。
 岩はゆっくりとその形を変えていく。
 やがて変形が終わり、岩は湯船になった。
 まるで岩の上に石で出来た浴槽をコンクリートで取り付けたような形で、あまりオシャレではないけれど誰も見ていないのだから別に構わない。
 自分だけのお風呂というのは、中々にテンションが上がる。
 僕は生活魔法の凝水で水を注ぎ、着火をチャージした光球を水に向かって放つ。
 ボコボコと水が温まり、少し熱めのいい温度になる。
 僕は我慢できずに飛び込んだ。

「あっちっ、おお、おおお!」

 オークの縄張りを見渡しながら入るお風呂というのも、なかなか乙なものだ。


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