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37.貴族と盗賊
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一度はどこかに行ったあの身なりのいい男だったが、なにやら客を連れてもう一度戻ってきた。
客はやたらキラキラした服を着た若い男と、筋骨隆々の強面の2人。
奴隷を買いに来た客だとしたら嫌だな、目を合わせないでおこう。
僕はびくびくしながら毛布をかぶって目を瞑っていたが、客は僕の檻の前を通り過ぎて隣の檻に向かった。
僕は息を吐き出し安堵する。
冷や汗かいたわ。
「なんだ、元気そうじゃないか。まったく、手間をかけさせよって」
「すいませんね旦那。ちょっと厄介なガキにやられまして」
なんか話してる。
知り合いなのかな。
あの煌びやかな男、見るからに貴族っぽいけど盗賊と知り合いなのか?
チラリと盗み見ると、なんとあの貴族風の男が身なりのいい男から鍵を受け取って用心棒の男の檻の扉を開けている。
「おいおいガキって嘘だろ?手ぇ抜いたんじゃねえのか?」
筋骨隆々の男は盗賊のボスだった男の檻の鍵を開けて話している。
こいつら全員知り合いなのか?
そんで助けに来たってわけか。
しかし盗賊だぞ?
なんで貴族が盗賊を助けるんだ。
「全力だったさ。2人がかりでな……」
「それで負けたってか。どんなガキだ?俺が報復してきてやってもいいぜ」
「それには及ばねえ。そこで寝たフリしてる奴だからよ」
「なに?」
全員の目がこちらを向いているのを感じた。
僕は寝たフリを続ける。
「おい寝たフリしてんじゃねえぞ!!」
檻がガンッと蹴られて僕はビクリとする。
もう誤魔化しきれない。
僕は毛布をどけ、ムクリと起き上がった。
「こ、こんにちは……」
貴族風の男と筋骨隆々の男はジロジロと睨むようにこちらを見てくる。
「ホントにこいつがやったのか?まだ20にもなってねえようなガキに見えるが……」
「多分近接戦は常人以下ですが、変なスキルをわんさか持ったガキです」
常人以下で悪かったね。
変なスキルで悪かったね。
「使えるなら雇ってやるが、どうだ?」
「やめたほうがいいですね。噛みつかれますよ」
「それもそうか……」
「じゃあな坊主、せいぜい死ぬなよ?」
そう言い残して盗賊と貴族一行は去っていった。
残されたのは僕一人。
遠くの檻に別の奴隷は見えるが、僕の檻は端なので隣とその隣の檻が開いたおかげで僕のご近所さんは誰もいなくなった。
あんなんでも居なくなると少し寂しいな。
結局あの貴族と盗賊はどういった関係だったのだろうか。
簡単に思い浮かぶのはあの貴族が命令して部下に盗賊をやらせていたということだ。
普通に考えてボスと用心棒、幹部2人は全員マジックウェポンを持っていたし装備が整いすぎている。
あとボスと用心棒は盗賊にしては強すぎる。
昔の貴族なんかは盗賊まがいのことをして勝手に通行料なんかをせしめていたって言うが、ここは伯爵領だ。
伯爵様の顔も名前も知らないけど、息子であるリグリット様の人柄や家の教育方針を見るにそんなことをやりそうな人物には思えない。
ということは他領もしくは他国の貴族か。
でもそんなことをしてもいいんだろうか。
他人の領土で部下に盗賊をやらせるっていうのはまるで……。
やめよう。
僕が考えるには大きすぎる問題のようだ。
頭が疲れたので寝ることにする。
寂しくなってしまった檻の中で、僕は眠りに就いた。
次の日、スキル屋の店主が会いに来た。
馴染みの客ではあるものの、別に友人でもない僕に会いに来てくれるとはなかなか律儀な男だ。
「スタークが毛を操る盗賊を奴隷にしたって自慢しててな。見に来てみればやっぱり坊主か。なんで盗賊退治がこうなるんだ……」
僕はこうなった経緯を説明した。
さっきまで隣とその隣に居た盗賊の話もそれとなく混ぜる。
「はあ、何がどうなってんだかな。とりあえずその貴族風の男と盗賊の話は知り合いの執政官に話しておく。しかし坊主を助けてやるのは難しいかもしれない。盗賊を除けばその場に居たのはみんなスタークに味方する人間ばかりだ。俺からもかけ合って見るが多分スタークは俺の話なんて聞かないだろうしな」
スタークという商人は一代で行商からのし上がって店を持つに至った商人らしい。
店主はスキル屋だった父親の後を継いで商人になった。
スタークはそういう親の後を継いだり、資金援助を受けて商人になった人間を毛嫌いしているらしい。
その話を聞いて、僕は苦労が人間の人格を歪めてしまうこともあるんだなと思った。
「すまないな、坊主。本当は俺がお前を買ってやるのが一番手っ取り早いんだろうが、犯罪奴隷っていうのは解放が認められてねえ。買ったら死ぬまで責任持たなくちゃならねえんだ。俺にはお前にそこまで責任持てねえ」
本当に、律儀な男だ。
赤の他人のことなんだから、そんなに責任だなんだと考えずに放っておいても誰も文句は言わないのにな。
なんだか泣きそうになってしまったよ。
僕は店主に顔を見せないようにして、お礼を言う。
「そこまでしてもらうのは僕のほうが悪いと思っちゃうよ。今まで色々お世話になりました。また、スキルを買いに行くよ」
「ああ、また来い。銀貨10枚のスキルがあんなに売れたのは初めてだったよ。こいつを選別にやる。スキルは奴隷になっても取り上げることはできねえからな。鑑定証は燃やせ」
店主はポケットから一つのスキルオーブを取り出した。
スキル名:【召喚術(ゴブリン)】
詳細:エクストラスキル。ゴブリンを召喚することができる。
「面白そうなスキルだね」
「坊主が好きそうなスキルだと思って売らずに取っておいたんだよ」
店主の優しさが今は嬉しかった。
ゴブリンを召喚するスキル、ありがたく頂きます。
ゴブリン軍団作ってやる。
客はやたらキラキラした服を着た若い男と、筋骨隆々の強面の2人。
奴隷を買いに来た客だとしたら嫌だな、目を合わせないでおこう。
僕はびくびくしながら毛布をかぶって目を瞑っていたが、客は僕の檻の前を通り過ぎて隣の檻に向かった。
僕は息を吐き出し安堵する。
冷や汗かいたわ。
「なんだ、元気そうじゃないか。まったく、手間をかけさせよって」
「すいませんね旦那。ちょっと厄介なガキにやられまして」
なんか話してる。
知り合いなのかな。
あの煌びやかな男、見るからに貴族っぽいけど盗賊と知り合いなのか?
チラリと盗み見ると、なんとあの貴族風の男が身なりのいい男から鍵を受け取って用心棒の男の檻の扉を開けている。
「おいおいガキって嘘だろ?手ぇ抜いたんじゃねえのか?」
筋骨隆々の男は盗賊のボスだった男の檻の鍵を開けて話している。
こいつら全員知り合いなのか?
そんで助けに来たってわけか。
しかし盗賊だぞ?
なんで貴族が盗賊を助けるんだ。
「全力だったさ。2人がかりでな……」
「それで負けたってか。どんなガキだ?俺が報復してきてやってもいいぜ」
「それには及ばねえ。そこで寝たフリしてる奴だからよ」
「なに?」
全員の目がこちらを向いているのを感じた。
僕は寝たフリを続ける。
「おい寝たフリしてんじゃねえぞ!!」
檻がガンッと蹴られて僕はビクリとする。
もう誤魔化しきれない。
僕は毛布をどけ、ムクリと起き上がった。
「こ、こんにちは……」
貴族風の男と筋骨隆々の男はジロジロと睨むようにこちらを見てくる。
「ホントにこいつがやったのか?まだ20にもなってねえようなガキに見えるが……」
「多分近接戦は常人以下ですが、変なスキルをわんさか持ったガキです」
常人以下で悪かったね。
変なスキルで悪かったね。
「使えるなら雇ってやるが、どうだ?」
「やめたほうがいいですね。噛みつかれますよ」
「それもそうか……」
「じゃあな坊主、せいぜい死ぬなよ?」
そう言い残して盗賊と貴族一行は去っていった。
残されたのは僕一人。
遠くの檻に別の奴隷は見えるが、僕の檻は端なので隣とその隣の檻が開いたおかげで僕のご近所さんは誰もいなくなった。
あんなんでも居なくなると少し寂しいな。
結局あの貴族と盗賊はどういった関係だったのだろうか。
簡単に思い浮かぶのはあの貴族が命令して部下に盗賊をやらせていたということだ。
普通に考えてボスと用心棒、幹部2人は全員マジックウェポンを持っていたし装備が整いすぎている。
あとボスと用心棒は盗賊にしては強すぎる。
昔の貴族なんかは盗賊まがいのことをして勝手に通行料なんかをせしめていたって言うが、ここは伯爵領だ。
伯爵様の顔も名前も知らないけど、息子であるリグリット様の人柄や家の教育方針を見るにそんなことをやりそうな人物には思えない。
ということは他領もしくは他国の貴族か。
でもそんなことをしてもいいんだろうか。
他人の領土で部下に盗賊をやらせるっていうのはまるで……。
やめよう。
僕が考えるには大きすぎる問題のようだ。
頭が疲れたので寝ることにする。
寂しくなってしまった檻の中で、僕は眠りに就いた。
次の日、スキル屋の店主が会いに来た。
馴染みの客ではあるものの、別に友人でもない僕に会いに来てくれるとはなかなか律儀な男だ。
「スタークが毛を操る盗賊を奴隷にしたって自慢しててな。見に来てみればやっぱり坊主か。なんで盗賊退治がこうなるんだ……」
僕はこうなった経緯を説明した。
さっきまで隣とその隣に居た盗賊の話もそれとなく混ぜる。
「はあ、何がどうなってんだかな。とりあえずその貴族風の男と盗賊の話は知り合いの執政官に話しておく。しかし坊主を助けてやるのは難しいかもしれない。盗賊を除けばその場に居たのはみんなスタークに味方する人間ばかりだ。俺からもかけ合って見るが多分スタークは俺の話なんて聞かないだろうしな」
スタークという商人は一代で行商からのし上がって店を持つに至った商人らしい。
店主はスキル屋だった父親の後を継いで商人になった。
スタークはそういう親の後を継いだり、資金援助を受けて商人になった人間を毛嫌いしているらしい。
その話を聞いて、僕は苦労が人間の人格を歪めてしまうこともあるんだなと思った。
「すまないな、坊主。本当は俺がお前を買ってやるのが一番手っ取り早いんだろうが、犯罪奴隷っていうのは解放が認められてねえ。買ったら死ぬまで責任持たなくちゃならねえんだ。俺にはお前にそこまで責任持てねえ」
本当に、律儀な男だ。
赤の他人のことなんだから、そんなに責任だなんだと考えずに放っておいても誰も文句は言わないのにな。
なんだか泣きそうになってしまったよ。
僕は店主に顔を見せないようにして、お礼を言う。
「そこまでしてもらうのは僕のほうが悪いと思っちゃうよ。今まで色々お世話になりました。また、スキルを買いに行くよ」
「ああ、また来い。銀貨10枚のスキルがあんなに売れたのは初めてだったよ。こいつを選別にやる。スキルは奴隷になっても取り上げることはできねえからな。鑑定証は燃やせ」
店主はポケットから一つのスキルオーブを取り出した。
スキル名:【召喚術(ゴブリン)】
詳細:エクストラスキル。ゴブリンを召喚することができる。
「面白そうなスキルだね」
「坊主が好きそうなスキルだと思って売らずに取っておいたんだよ」
店主の優しさが今は嬉しかった。
ゴブリンを召喚するスキル、ありがたく頂きます。
ゴブリン軍団作ってやる。
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