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82.信仰の自由
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夜の街歌舞伎町は今日も平常運転だ。
夜とは思えないほどに煌びやかで、危険な香りに満ち溢れている。
「ゴブ次郎、ここか?」
「グギャ(イエス)」
そこはどこにでもあるようなラブホテルだった。
こんなところにあの黒服とお嬢様が滞在しているのか。
まだ敵対していると思われる軍人風の男達には見つかっていないみたいで、銃声も聞こえてこない。
僕はゴブ次郎の夢幻魔法で誰にも気取られないようにしてラブホテルの中に入る。
夢幻魔法は幻覚を見せるスキルだけれど、レベル10にもなればその幻覚は防犯カメラの映像さえも欺けるようだ。
スキルというのはつくづく不思議なものだ。
ラブホテルの中はそこそこ掃除が行き届いていて、清潔感がある。
おお、自販機がちょっとアダルティ。
僕は前世でも童貞だったのでラブホテルの中に足を踏み入れるのは初めてなのだ。
ワクワクしながらラブホテル内を大人の社会見学していく。
さすがに部屋の中とかに入るのはマナー違反だと思うので想像で楽しんだ。
一部屋だけドアを開けたままスリリングにアンアンギシギシしている部屋があったけれど、中年カップルだったのでそっとドアを閉めてあげた。
なんかエイリアンVSプ〇デターを思い出した。
さて、問題のお嬢様が滞在しているのは2階の一番奥の部屋だ。
非常階段の近くだから僕たちもそのあたりで待機するとしよう。
僕は拓君の家から持ってきたカップラーメンを取り出して水筒のお湯を注ぐ。
ゴブ次郎にも注いであげる。
「あ、こら、すぐに食べるんじゃない。これは3分待たないとおいしくならないんだよ」
「グギャグギャ(マジっすか)」
「マジマジ。だから大人しく待つんだ」
「グギャグギャグギャグギャグギャ(なかなか長く感じるものですね)」
「そうだね。よし、僕は麺硬めが好きなので1分30秒で食べます」
「グギャグギャグギャ!グギャグギャグギャグギャグギャ(なんすかそれ!好みで時間変えていいなら早く言ってくださいよ)」
僕がフライング気味に麺を啜り始めると、ゴブ次郎も待ちきれなくなったのか蓋を剥がして麺を啜り始めた。
ラブホテルの廊下で食べるカップラーメンもなかなか乙なものだ。
ん?なんか大勢の足音してきた。
ちょっと、今食べ始めたとこじゃないですか。
しょうがないなまったく。
僕は凝縮スキルで熱々カップラーメンに水を注ぎ、スープを温くする。
これで急いで食べても口の中を火傷しないだろう。
僕はカップラーメンをかき込むようにして食べ、立ち上がる。
「ゴブ次郎、来たよ。急いで食べて」
「グギャ、グギャギャ……(え、ちょま……)」
非常階段の扉が勢いよく開き、ぞろぞろと軍人風の男たちが入ってくる。
熱々ラーメンを食べながらでもゴブ次郎はしっかりと仕事をしてくれているのか、男達が僕やゴブ次郎に気付いた様子は無い。
さて、黒服とお嬢様はどう逃げるだろうか。
表の入り口や裏口なんかも軍人風の男が待ち構えているんじゃないかな。
だとしたら、窓とか?
僕はどうしたらあのおっぱいの大きな女の人に好印象を持たれるだろうか。
逃げるのを助けてあげても怪しまれてしまうだろうし、なにが目的なのかとか聞かれそうだし。
特に目的なんてないもの。
あえて言うならおっぱいだけれど、別に無理矢理揉んでやろうとかそんなことは童貞は思わないわけで。
ただ遠くから眺めていたいというだけの話なのだ。
もう少し、もう少しだけあのおっぱいを眺めていたい。
一応アタッシュケースの中身も気にならないといったら嘘になるけれど、そちらは多分明日になれば忘れているレベルの気がかりだ。
僕は軍人風の男たちの最後尾に着いていく。
非常階段から浸入してきた軍人風の男は全部で7人。
昼間見た数よりも幾分か少ない。
おそらくこの7人が全員では無いだろう。
表の入り口などを見張ることに人員を割いたのかな。
しかし全員がごつい銃を携えており、お嬢様たちに勝ち目は無いように思える。
男達はキビキビとした動きでお嬢様たちの宿泊している部屋のドアを囲み、一人が銃を構えたままドアを蹴り破った。
「くそっ、もう嗅ぎつけられたか。お嬢様を起こせ!」
「お嬢さま、起きてください!敵襲です!!」
軍人風の男たちはぞろぞろと中に入っていく。
あまり素早くない。
そこまで練度が高いわけでは無いのかな。
銃も構えてから撃つまでちょっと間があるし。
男達は銃を構えて黒服たちを一人ずつ銃で撃っていくが、すべて僕の反転魔法に阻まれて銃弾はパラパラと床に落ちる。
「#$%&!?&%$#!!」
男達はうろたえた様子でなにがしかの言葉を放つが、やはりそれらは日本語ではないので何を言っているのか分からない。
僕は翻訳スキルをオンにする。
このスキルはアクティブスキルなのでオンにしないと翻訳してくれないのだ。
『どうなってやがるんだ!!こいつら神にでも守られてるのか!?』
『くそったれ!!死ね!死ねよ!!』
なるほど、かなり慌てていらっしゃる。
それはそうだ。
銃弾の雨を浴びせても見えない壁に阻まれたように標的には当たらない。
銃弾の持つ運動エネルギーはすべてゼロになって床に落ちてしまう。
「こ、これは!?昼間と同じ」
「ええ、あの時の少年が関係しているのかもしれません」
黒服とお嬢様には昼間顔を見られているからね。
僕は悩む。
ここで姿を見せていいものか。
一応命を助けているわけだから敵じゃないと分かってくれればいいのだけれど。
昼間のような恐怖の瞳を向けられたらちょっとショックだな。
ここでもう少しおっぱいを見学するというのも手だ。
お嬢さまの格好は昼間と違ってジャケットを脱いでいる。
その素晴らしい山脈を惜しむことなくさらけ出した姿は少し神々しくもある。
南無阿弥陀仏。
僕は思わず手を合わせて拝んだ。
これは信仰なんだよ。
山岳信仰だ。
夜とは思えないほどに煌びやかで、危険な香りに満ち溢れている。
「ゴブ次郎、ここか?」
「グギャ(イエス)」
そこはどこにでもあるようなラブホテルだった。
こんなところにあの黒服とお嬢様が滞在しているのか。
まだ敵対していると思われる軍人風の男達には見つかっていないみたいで、銃声も聞こえてこない。
僕はゴブ次郎の夢幻魔法で誰にも気取られないようにしてラブホテルの中に入る。
夢幻魔法は幻覚を見せるスキルだけれど、レベル10にもなればその幻覚は防犯カメラの映像さえも欺けるようだ。
スキルというのはつくづく不思議なものだ。
ラブホテルの中はそこそこ掃除が行き届いていて、清潔感がある。
おお、自販機がちょっとアダルティ。
僕は前世でも童貞だったのでラブホテルの中に足を踏み入れるのは初めてなのだ。
ワクワクしながらラブホテル内を大人の社会見学していく。
さすがに部屋の中とかに入るのはマナー違反だと思うので想像で楽しんだ。
一部屋だけドアを開けたままスリリングにアンアンギシギシしている部屋があったけれど、中年カップルだったのでそっとドアを閉めてあげた。
なんかエイリアンVSプ〇デターを思い出した。
さて、問題のお嬢様が滞在しているのは2階の一番奥の部屋だ。
非常階段の近くだから僕たちもそのあたりで待機するとしよう。
僕は拓君の家から持ってきたカップラーメンを取り出して水筒のお湯を注ぐ。
ゴブ次郎にも注いであげる。
「あ、こら、すぐに食べるんじゃない。これは3分待たないとおいしくならないんだよ」
「グギャグギャ(マジっすか)」
「マジマジ。だから大人しく待つんだ」
「グギャグギャグギャグギャグギャ(なかなか長く感じるものですね)」
「そうだね。よし、僕は麺硬めが好きなので1分30秒で食べます」
「グギャグギャグギャ!グギャグギャグギャグギャグギャ(なんすかそれ!好みで時間変えていいなら早く言ってくださいよ)」
僕がフライング気味に麺を啜り始めると、ゴブ次郎も待ちきれなくなったのか蓋を剥がして麺を啜り始めた。
ラブホテルの廊下で食べるカップラーメンもなかなか乙なものだ。
ん?なんか大勢の足音してきた。
ちょっと、今食べ始めたとこじゃないですか。
しょうがないなまったく。
僕は凝縮スキルで熱々カップラーメンに水を注ぎ、スープを温くする。
これで急いで食べても口の中を火傷しないだろう。
僕はカップラーメンをかき込むようにして食べ、立ち上がる。
「ゴブ次郎、来たよ。急いで食べて」
「グギャ、グギャギャ……(え、ちょま……)」
非常階段の扉が勢いよく開き、ぞろぞろと軍人風の男たちが入ってくる。
熱々ラーメンを食べながらでもゴブ次郎はしっかりと仕事をしてくれているのか、男達が僕やゴブ次郎に気付いた様子は無い。
さて、黒服とお嬢様はどう逃げるだろうか。
表の入り口や裏口なんかも軍人風の男が待ち構えているんじゃないかな。
だとしたら、窓とか?
僕はどうしたらあのおっぱいの大きな女の人に好印象を持たれるだろうか。
逃げるのを助けてあげても怪しまれてしまうだろうし、なにが目的なのかとか聞かれそうだし。
特に目的なんてないもの。
あえて言うならおっぱいだけれど、別に無理矢理揉んでやろうとかそんなことは童貞は思わないわけで。
ただ遠くから眺めていたいというだけの話なのだ。
もう少し、もう少しだけあのおっぱいを眺めていたい。
一応アタッシュケースの中身も気にならないといったら嘘になるけれど、そちらは多分明日になれば忘れているレベルの気がかりだ。
僕は軍人風の男たちの最後尾に着いていく。
非常階段から浸入してきた軍人風の男は全部で7人。
昼間見た数よりも幾分か少ない。
おそらくこの7人が全員では無いだろう。
表の入り口などを見張ることに人員を割いたのかな。
しかし全員がごつい銃を携えており、お嬢様たちに勝ち目は無いように思える。
男達はキビキビとした動きでお嬢様たちの宿泊している部屋のドアを囲み、一人が銃を構えたままドアを蹴り破った。
「くそっ、もう嗅ぎつけられたか。お嬢様を起こせ!」
「お嬢さま、起きてください!敵襲です!!」
軍人風の男たちはぞろぞろと中に入っていく。
あまり素早くない。
そこまで練度が高いわけでは無いのかな。
銃も構えてから撃つまでちょっと間があるし。
男達は銃を構えて黒服たちを一人ずつ銃で撃っていくが、すべて僕の反転魔法に阻まれて銃弾はパラパラと床に落ちる。
「#$%&!?&%$#!!」
男達はうろたえた様子でなにがしかの言葉を放つが、やはりそれらは日本語ではないので何を言っているのか分からない。
僕は翻訳スキルをオンにする。
このスキルはアクティブスキルなのでオンにしないと翻訳してくれないのだ。
『どうなってやがるんだ!!こいつら神にでも守られてるのか!?』
『くそったれ!!死ね!死ねよ!!』
なるほど、かなり慌てていらっしゃる。
それはそうだ。
銃弾の雨を浴びせても見えない壁に阻まれたように標的には当たらない。
銃弾の持つ運動エネルギーはすべてゼロになって床に落ちてしまう。
「こ、これは!?昼間と同じ」
「ええ、あの時の少年が関係しているのかもしれません」
黒服とお嬢様には昼間顔を見られているからね。
僕は悩む。
ここで姿を見せていいものか。
一応命を助けているわけだから敵じゃないと分かってくれればいいのだけれど。
昼間のような恐怖の瞳を向けられたらちょっとショックだな。
ここでもう少しおっぱいを見学するというのも手だ。
お嬢さまの格好は昼間と違ってジャケットを脱いでいる。
その素晴らしい山脈を惜しむことなくさらけ出した姿は少し神々しくもある。
南無阿弥陀仏。
僕は思わず手を合わせて拝んだ。
これは信仰なんだよ。
山岳信仰だ。
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