ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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88.盗賊退治

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「あん?なんだてめぇ。ああ、新入りか?」

 なんで盗賊というものは僕を見ると新入りだと思うのだろうか。
 新品の皮鎧だって買って今の僕はどこからどう見ても冒険者だというのに。
 まあいい、マヌケな顔で気絶しろ。
 僕は右目の魔眼を発動させる。
 僕があちらの世界でお嬢様のお母さんの病気を治した対価としていただいてきたスキルオーブに封じ込められていたスキル、【魔眼(麻痺)】の力だ。
 このスキルはゴブ次郎にでも覚えさせたら忍っぽくてかっこいいかもと思ったのだが、僕の【スキル効果10倍】スキルと合わせたら僕の機動力不足を補う強力な力になってくれそうだったので僕が覚えることにしたのだ。
 そしてこのスキルは僕の予想をはるかに超える超スキルだった。
 試しに使ってみた見習いの森のゴブリンは、全力の魔眼を食らって心臓が止まってあっさり絶命してしまった。
 全開で使うと脳も肺も心臓も何もかもが麻痺して死んでしまうようだ。
 だから僕はオークを相手にずいぶんと加減を練習して、やっと人間に使えると自信が持てるくらいになったのだ。
 見習いの森でゴブリン相手にそのまま練習しようとも思ったのだけれど、どうしても死ぬと分かっている攻撃を練習する気になれなかった。
 僕は相当にゴブリンに情が湧いてしまっているらしい。
 いやゴブリン達は話してみたら以外に話の分かるやつらなんだよ。
 ただ使役魔法を使わないと意思の疎通ができないのだけどね。
 そして使役魔法は高価なスキルなので見習いの森をうろついているような冒険者が取得している可能性は低い。
 ゴブリンと人間が分かり合うのは難しいのかもしれない。
 そもそも人間同士だって分かり合えないのに、ゴブリンと人間が分かり合えるはずなんて無かったんだ。
 大丈夫、僕とゴブリン部隊はずっ友だから。
 僕は崩れ落ちた見張りを足で転がし、茂みに潜む仲間に合図を送る。
 ミゲル君、会長、リリー姉さんの順番で茂みから素早く出てこちらに走ってくる。
 
「作戦どおりに」

「「「了解」」」

 今回Cランク冒険者に上がるために盗賊退治に来たわけだけど、リリー姉さん以外はみんな盗賊といえど人を殺すことに抵抗がある。
 だから今回はとりあえず様子見で最初は殺さずで行ってみる。
 まあアジトの中に女の人でも囚われていようものならまずリリー姉さんを抑えることは不可能だし、止める理由も無い。
 その時は盗賊には死んでもらう。
 僕たちも覚悟を決めて悪党の命を奪うことを経験させてもらう。
 そんな感じで、作戦は単純に見張りを僕が片付けて後は乱闘だ。
 正直作戦といえるようなものではない。
 でもやってみたかったんだよ、『作戦通りに』『了解』っていうのが。
 僕たちはミゲル君を先頭に、狭い洞窟のようなアジトにぞろぞろと入っていく。
 中は予想通り吐きそうになるような匂いが漂っている。
 視力強化のついでに買った嗅覚強化をオンにしていたのを思い出して慌ててオフにする。
 少しはマシになったけれど、相変わらずひどい匂いなのは変わりない。
 しかしこの匂い、僕の予想が正しければ血の雨が降るかもしれないな。
 この後に起こるであろうことに僕は憂鬱な気分になりながらも、一番後ろをトボトボとついていく。
 先頭を歩くミゲル君が接敵したようで、戦闘が始まる。
 狭い通路での戦いは初めてなので少し手間取っていたミゲル君だったが、メガインパクトというスキルで盾から衝撃を発生させて敵を広い部屋まで吹っ飛ばす。
 広い部屋に出たので僕たちはいつものフォーメーションに広がる。
 つまり僕の役目はあまり無い。
 いや、今までは無かったが今は違う。
 僕には麻痺の魔眼がある。
 僕は右目をカッと見開き麻痺の魔眼を発動させる。
 しかし僕の目を見ている人は誰もいなかった。
 このスキルは目を合わせた人を麻痺させるスキルだ。
 つまり目を合わせないようにするだけで簡単に防がれてしまうのだ。
 寂しい。
 おーい、誰か僕の目を見てよー。
 赤く光っていかにも何かありそうでしょ。
 
「てめえら冒険者か!!クソッ、敵襲!!敵襲!!」

「いくわよ!!」

「おっす」

 リリー姉さんとミゲル君が突撃してしまった。
 もう僕に注目が向けられることは無いだろう。
 とても残念だ。
 リリー姉さんは素早く踏み込むと盗賊たちがカードゲームをしていた木のテーブルを蹴り上げると、それを拳で粉砕した。
 木の破片が散弾のように盗賊たちに降り注ぐ。
 完全に殺しにいっている。
 最初は殺さずで行こうって言ったのに。
 バトルアックスは使ってないから多分加減しているのだろうけど。
 他方を見ればミゲル君に殴り飛ばされた盗賊が地面をゴロゴロと転がっていた。
 こちらはなんとか生きていそうだ。
 ミゲル君は優しい青年なのでやっぱり本気で殴ることはできないようだ。
 しかしいつか命がけの殺し合いに遭遇したときに甘さが出てしまいそうで少し危うくもある。
 会長は弓で僕の後ろから盗賊の足や腕などを狙って矢を放っている。
 こちらは如才ないな。
 しかし僕の役目が無いな。
 今回は殺さない前提で来たのでゴブリン暗殺部隊は召喚する必要がないのだ。
 ゴブ次郎だけはいつでも姿を隠して僕のそばにいるけれどね。
 忍だから。
 今日も最高に忍んでるよゴブ次郎。
 ちょっと僕の存在感も忍んじゃってるけどね。
 誰かここにも敵がいますよ~。
 広い部屋の中の敵は、あっという間に全員動かなくなって僕たちは次の部屋に進む。
 いやぁ、次の部屋は行かないほうがいいと思うんだよな。
 ああ気が重い。
 その部屋には案の定、死んだような目をした裸のお姉さんたちと数人の男達が。
 男達は汚い尻を丸出しにしてへこへこ腰を振っている。
 敵襲を受けているというのに、戦いもせずマヌケにも腰を振り続ける男達はきっとこの盗賊の幹部なのだろう。
 部下達が侵入者を撃退することを信じきっているのか、ただの馬鹿なのか。
 気持ち悪いにやけ面を浮かべながら女を犯すその男達は、人間という種族の本質を僕に思い出させてくれる。
 そして前を歩くリリー姉さんから放たれる肌がビリビリするような殺気。
 
「下種が。楽に死ねると思わないことね……」

 こうなってはもう僕たちにできることは少ない。
 そして地獄の蓋は開かれる。
 
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