ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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87.完治

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 ゴブリンの鋭い嗅覚を刺激する香しい香り。
 僕は胸いっぱいに息を吸い込んだ。

「すーはー、すーはー、フゴフゴ……」

「あんっ、ちょっとっ、くすぐったい」

 最高だ。
 ゴブリンといえば、性欲が強いイメージがあるだろう。
 しかし僕はゴブリンに何度も憑依して、それが間違った認識であることを知った。
 ゴブリンは性欲が強いのではなく、異性のフェロモンに敏感なのだ。
 端的に言ってストライクゾーンがすごく広い。
 姿形ではなく、その生き物が発するフェロモンを感じ取り魅力を感じる。
 他種族の性フェロモンを感じ取る能力を持っているというだけで、特別性欲が強いというわけではなかったのだ。
 性欲でいったら全然人間の肉体のほうが強い気がする。
 世間のゴブリンを擁護するわけではないが、僕の使役しているゴブリンは女性に乱暴してはいけないことを伝えればちゃんと分かってくれるのだ。
 であるからして、この興奮は僕の精神が原因なのだろう。
 パフパフパフパフ。
 前世と今世合わせて40年以上生きてきて、未だかつて体験したことの無い柔らかさだ。
 柔らかくて温かくて、いい匂い。
 
「お、おい、ちょっとこれ暴走してしまっているんじゃないか!?少年を起こさないと!!」

「おい!起きてくれ!!おーい!!」

 黒服がソファに横たわる僕の肉体を揺するが、残念ながらまだ目を覚ましてあげるわけにはいかないんだ。
 まだ僕はこの人の病気を治していない。
 ただパフパフで正気を失っていたわけでは無いんだ。
 ゴブヒールの回復魔法スキルは現在レベル7。
 レベル7ともなれば魔力を他人の身体にめぐらせることによってその人の肉体の状態を感じ取ることができる。
 僕はパフパフしながらお嬢様のお母さんの身体を隅々までサーチする。
 彼女の身体は悪性腫瘍によって臓器やリンパのあちこちに異常が発生している。
 いわゆるガンというやつだ。
 それもすでに治療をしていないということはすでに余命幾ばくもない終末期ということなのだろう。
 医師はすでに治療を諦め、彼女の肉体から痛みを取り除くことに注力しているのかもしれない。
 なんかパフパフとかしてごめん。
 僕はお嬢様のお母さんから離れ、代わりにお嬢様おおっぱいを揉んでおいた。

「きゃぁっ、ちょっ、やめっ、あんっ」

 僕は右手でお嬢さまのおっぱいを揉みながら彼女のお母さんの身体に手をかざし、回復魔法を行使していく。
 治療の順序的に、まず最初に痛み止めとして処方されている薬が身体から排出されてしまうのは避けられない。
 彼女の身体に今まで忘れていた痛みが戻ってしまうのは申し訳ないが、病気を治すためには少しだけ我慢して欲しい。

「ん、痛っ。あっ、ああぁ……」

 痛みに耐える声はどこか艶めかしくて僕はドキドキしてしまう。
 必然的に、お嬢様の胸を揉む手に力が入ってしまう。

「ああぁ、ちょっとっ、んぁっ」

「お、お嬢様!ちょっと少年、早く起きてください。お嬢様が大変なことに!!」

 ふう、さすがにこれ以上は怒られそうだ。
 僕はお嬢様の胸から手を離し、お嬢様のお母さんの治療に全力を注ぐ。

「ああっ、あったかい……」

 すでに治療は最終段階だ。
 痛みは消え、心地よい温かさに身体が包まれているのだろう。
 お嬢さまのお母さんの顔が穏やかな表情になる。
 彼女はあっという間に健康体になった。
 僕はすぐに自分の肉体に戻り、ゴブヒールを送還した。

「消えた……」

「ん……。何かありましたか?」

「少年!君の眷属とかいうやつがお、奥様とお嬢様に、その、なんていうか。とにかく大変だったんだよ!!」

「何があったかは知りませんが、僕の眷属が大変ご迷惑をおかけしてしまったようで申し訳ありません」

 僕は大真面目な顔をして平謝りした。
 ちょっと我を忘れていた。
 今思い出すと大変なことをしてしまった。
 自分の中の童貞に支配されていたような気がする。
 本気で悪いと思っているので僕はぺこぺことお嬢様とお母さんに謝った。
 お嬢様の顔は真っ赤だ。
 お嬢様のお母さんも少し顔が赤いけれど、それは羞恥によるものではないだろう。
 顔色自体が良くなっているのだ。
 
「い、いえ、私は、大丈夫です。す、少し胸を触られただけですから。それよりもお母様はどうなったのですか?」

「一度検査を受けてみてください。健康体になっていると思いますよ」

「ほ、本当なの?」

「今医師を呼んでもらっても構わないですよ」

「志乃、そんなの後でいいわ。おそらくその子の言っていることは本当なの。身体が羽のように軽いわ」

「お母様っ」

 お嬢様はお母さんに抱きつき、嗚咽を漏らし始める。
 2つの山脈同士が衝突して自由自在に形を変える。
 挟まれたい。
 僕はまた自分の中の童貞に支配されそうになるのを堪えた。
 大丈夫、ゴブリンという免罪符がなければ童貞は性欲に支配される度胸などない。
 つくづくゴブヒールには悪いことをしたと思っている。
 ファ〇チキだけでなく焼き鳥も買ってあげよう。
 
「ありがとうございます。謝礼は言い値で構いません。いくらでも好きな額を存じ上げてください。我が家はこれでもそこそこ大きな会社を営んでおりますのでご遠慮はなさらずに」

 おお、言い値。
 ドラマなどではよく聞くけれど、人生で一度も自分が言われると思わなかった言葉だ。
 しかし僕はお金には困ってないんだよね。
 これからも異世界動画を投稿していけば莫大な広告収入が入ってくるだろうし、それ以外にも異世界のマジックアイテムやスキルオーブなど売れそうなものは多い。
 お嬢様が持っていたスキルオーブひとつで他国の軍が動くほどの価値だ。
 適当な金貨スキルでも買って権力者にでも売れば遊んで暮らせるだけの金が手に入るだろう。
 そこから先更なるスキルオーブを求めて権力者達に追い掛け回されるかもしれないけどね。
 
「僕はお金はいいよ」

「では何を?」

「そのスキルオーブをもらえないかな」
 
 僕はお嬢様が持っているアタッシュケースを指差す。
 その中に入っているスキルオーブ、【魔眼(麻痺)】は人間の肉体を癒す力は無くともその能力は強力に違いない。
 もらえるかどうかは分からないけれど、僕は一応言ってみた。
 元々そのスキルオーブを使ってお母さんを治すつもりだったのだから、治した対価として僕がそれをもらったところで結果は変わらないと思うんだ。

「スキルオーブ、というのはこれのことですよね?」

 お嬢様はアタッシュケースを開けてその宝石のような珠を取り出す。
 何度見てもスキルオーブの輝きは心をざわめかせる。

「そうだよ。それが欲しい」

「分かりました。確かにこれは100億円ほどかけて手に入れたものですが、私達では使い方も分かりませんしあなたに払う報酬であれば惜しくもありません」

「ありがとう」
 
 僕は強力なスキルオーブを手に入れた。
 わーい。


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