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130.心の傷
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ジュージューと焼けるオークの肉。
オーク肉は狩るのに手間がかからなくて、美味しいからね。
ブラックキューブの中に常備してあるんだ。
「ねえ、クロード。わたしたちだけ美味しいもの食べていいのかな」
「いいんじゃない?」
僕は適当なことを言い、パンを串に刺して火にかける。
異世界感を出すためにライ麦パンだ。
本当に異世界の黒パンを出してもいいけれど、あれはあまり美味しいものじゃないからね。
「ねえ、その黒い箱ってどうなってんの?」
「うーん、秘密」
「また秘密かぁ。わたしたちをここに連れてきたのってさ、クロードなんでしょ?」
「そうだよ?」
巨大な鳥を召喚したのが僕だと知っている志織ちゃんにはさすがに隠せないよね。
「わたしのためなの?」
「どうだろうね。僕も無視されたから、ムカついてやっちゃったみたいなところもあるかな」
「そうなんだ。クロードも無視されたんだね。みんな、なんであんなことをするのかな」
「どうしてだろう。たぶん理由はいろいろあると思うけれど、きっかけはくだらないことだよ。退屈だとか、刺激が欲しいとか」
「ふーん」
しばしの沈黙。
肉の焼ける音だけが、夜の荒野に響き渡る。
なんか新鮮だな。
背中側にある廃墟風建築以外は荒野には何も無い。
元は100年前にあったという町の残骸とか色々と残っていたのだろうが、氷竜王のドラゴンブレスですべて灰燼と帰している。
オークの脂が弾け、ライ麦パンにも良い感じの焼き目がついた。
「そろそろ食べようか」
「うん」
パンをスライスして、オークの肉を挟む。
味付けは塩だけ。
異世界風サンドイッチは薄味なんだ。
僕の真似をして、志織ちゃんもパンにオークの肉を挟む。
2人同じタイミングでかぶりつく。
ライ麦パンの水分の少ない生地に、オークの肉から出た肉汁が染みこんでなんともジューシー。
塩のみの味付けだけれども、十分に旨味を感じる。
やっぱりオークの肉は美味しいな。
「なにこれ、すっごい美味しい」
「よかった。口に合ったみたいだね」
「うん。なんか、不思議な味。今まで食べたことない。なんのお肉なの?」
それは君、知らないほうがいいんじゃないかな。
「あ、あれだよ。豚の亜種みたいな」
「イノブタみたいなやつ?」
「そ、そんな感じかな。もうちょっとだけ、大きいかも」
「そうなんだ。結構知らない食材ってあるものなんだね」
いっぱいあるよ、特に異世界には。
今度お母様とお嬢様も一緒のときに、シーサーペントのお肉を食べさせてあげよう。
「ん?あれなんだろう。光かな」
志織ちゃんの指差すほうを僕も見る。
僕は暗視スキルも持っているから、暗くなってきた荒野も昼間のように見渡すことができる。
あれは最初に荒野に向かって走っていったクラスメイトたちだな。
松明のようなものを持って、僕たちの方に近づいてきているみたいだ。
なんとなくどんなことを言われるのかは想像がつくけどね。
やがてクラスメイトたちの顔が志織ちゃんにもはっきり見えるようになる。
「ねえ、クロード……」
「大丈夫だよ。なるべく美味しそうにサンドイッチを食べて」
「え?そんなことして本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
志織ちゃんは少し不安そうな顔になるけれど、渋々言われたことを守って美味しそうにサンドイッチを食べ始める。
僕も同じようにする。
ざっざっとクラスメイトたちの足音が聞こえはじめる。
そろそろ声の届く距離だ。
「お、おい、お前ら、その食料どこで……」
「あれ?君たちもう無視はやめたの?」
僕はさっきあの場に残ったクラスメイトたちにも言ったことを口にする。
今まで僕と志織ちゃんのことを無視していたことを、忘れたとは言わせない。
僕は、根に持つタイプなんだよ。
「お、おい、こんなときにそんなこと……」
「そんなことね。僕にはそんなことと流せるようなことではなかったように思えるけどね。まだ僕はそこまで長い間無視されたわけではないけど、志織ちゃんは違う。君たちはいったいどれだけの間志織ちゃんのことを無視してきたんだ?それだけ長い間無視していた人によくそんなフレンドリーに話しかけられるね。僕なら無理だ。尊敬するよ。ごめん嘘だ、軽蔑する」
僕は一息に言い切った。
ちょっと息が切れた。
柄にもなく少し熱くなってしまったようだ。
「ちっ、悪かったよ。お前らを無視して悪かった。謝っただろ。これでいいのか」
「いいわけないだろ。僕は許すつもりはないんだから」
「は?じゃあどうしろっていうんだよ!」
「君たちは全然分かってないな。この世の中には、謝ったら許してもらえることしかないと思っているのか?そんなわけない。そんなわけないからみんな、許されないような間違いを犯さないように気をつけて生きてるんじゃないか」
「「「……………………」」」
一同静まりかえる。
やめてほしいな。
未成年への説教とか、僕の役目じゃなと思うんだけどな。
しかし、クラスメイトたちの目は少しだけ変わった気がする。
僕の言葉が少しでも彼ら彼女らに届いたのなら、嬉しいのだけどな。
「クロード、真田、今まで本当にごめん!」
「真田さん、クロード君、ごめんなさい!」
「「「ごめん!」」」
クラスメイトたちは、僕と志織ちゃんに深く頭を下げる。
僕はクラス全員異世界に飛ばしてやって、水や食料を探して苦労する様子を見てそこそこすっきりしたから許してもいいと思っている。
しかし志織ちゃんはどうかな。
「ごめんみんな。わたし、みんなのことは許せないかな」
「「「……………………」」」
「みんな都合が良すぎるよ。平和な日本で、あれだけわたしのことを無視しておいて。わたしには食料や水が欲しくて謝っているようにしか思えない。この食べ物とか水はクロードが見つけたものだから、クロードがいいのなら分けてもいいと思う。でもいままでのことを全部許すとかそういうのは、無理だよ」
「「「……………………」」」
志織ちゃんは僕と出会ったとき、なんの躊躇もなくビルの屋上から飛び降りたんだ。
志織ちゃんがクラスのみんなによって負わされた心の傷は、そうそう癒えるものではないだろう。
オーク肉は狩るのに手間がかからなくて、美味しいからね。
ブラックキューブの中に常備してあるんだ。
「ねえ、クロード。わたしたちだけ美味しいもの食べていいのかな」
「いいんじゃない?」
僕は適当なことを言い、パンを串に刺して火にかける。
異世界感を出すためにライ麦パンだ。
本当に異世界の黒パンを出してもいいけれど、あれはあまり美味しいものじゃないからね。
「ねえ、その黒い箱ってどうなってんの?」
「うーん、秘密」
「また秘密かぁ。わたしたちをここに連れてきたのってさ、クロードなんでしょ?」
「そうだよ?」
巨大な鳥を召喚したのが僕だと知っている志織ちゃんにはさすがに隠せないよね。
「わたしのためなの?」
「どうだろうね。僕も無視されたから、ムカついてやっちゃったみたいなところもあるかな」
「そうなんだ。クロードも無視されたんだね。みんな、なんであんなことをするのかな」
「どうしてだろう。たぶん理由はいろいろあると思うけれど、きっかけはくだらないことだよ。退屈だとか、刺激が欲しいとか」
「ふーん」
しばしの沈黙。
肉の焼ける音だけが、夜の荒野に響き渡る。
なんか新鮮だな。
背中側にある廃墟風建築以外は荒野には何も無い。
元は100年前にあったという町の残骸とか色々と残っていたのだろうが、氷竜王のドラゴンブレスですべて灰燼と帰している。
オークの脂が弾け、ライ麦パンにも良い感じの焼き目がついた。
「そろそろ食べようか」
「うん」
パンをスライスして、オークの肉を挟む。
味付けは塩だけ。
異世界風サンドイッチは薄味なんだ。
僕の真似をして、志織ちゃんもパンにオークの肉を挟む。
2人同じタイミングでかぶりつく。
ライ麦パンの水分の少ない生地に、オークの肉から出た肉汁が染みこんでなんともジューシー。
塩のみの味付けだけれども、十分に旨味を感じる。
やっぱりオークの肉は美味しいな。
「なにこれ、すっごい美味しい」
「よかった。口に合ったみたいだね」
「うん。なんか、不思議な味。今まで食べたことない。なんのお肉なの?」
それは君、知らないほうがいいんじゃないかな。
「あ、あれだよ。豚の亜種みたいな」
「イノブタみたいなやつ?」
「そ、そんな感じかな。もうちょっとだけ、大きいかも」
「そうなんだ。結構知らない食材ってあるものなんだね」
いっぱいあるよ、特に異世界には。
今度お母様とお嬢様も一緒のときに、シーサーペントのお肉を食べさせてあげよう。
「ん?あれなんだろう。光かな」
志織ちゃんの指差すほうを僕も見る。
僕は暗視スキルも持っているから、暗くなってきた荒野も昼間のように見渡すことができる。
あれは最初に荒野に向かって走っていったクラスメイトたちだな。
松明のようなものを持って、僕たちの方に近づいてきているみたいだ。
なんとなくどんなことを言われるのかは想像がつくけどね。
やがてクラスメイトたちの顔が志織ちゃんにもはっきり見えるようになる。
「ねえ、クロード……」
「大丈夫だよ。なるべく美味しそうにサンドイッチを食べて」
「え?そんなことして本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
志織ちゃんは少し不安そうな顔になるけれど、渋々言われたことを守って美味しそうにサンドイッチを食べ始める。
僕も同じようにする。
ざっざっとクラスメイトたちの足音が聞こえはじめる。
そろそろ声の届く距離だ。
「お、おい、お前ら、その食料どこで……」
「あれ?君たちもう無視はやめたの?」
僕はさっきあの場に残ったクラスメイトたちにも言ったことを口にする。
今まで僕と志織ちゃんのことを無視していたことを、忘れたとは言わせない。
僕は、根に持つタイプなんだよ。
「お、おい、こんなときにそんなこと……」
「そんなことね。僕にはそんなことと流せるようなことではなかったように思えるけどね。まだ僕はそこまで長い間無視されたわけではないけど、志織ちゃんは違う。君たちはいったいどれだけの間志織ちゃんのことを無視してきたんだ?それだけ長い間無視していた人によくそんなフレンドリーに話しかけられるね。僕なら無理だ。尊敬するよ。ごめん嘘だ、軽蔑する」
僕は一息に言い切った。
ちょっと息が切れた。
柄にもなく少し熱くなってしまったようだ。
「ちっ、悪かったよ。お前らを無視して悪かった。謝っただろ。これでいいのか」
「いいわけないだろ。僕は許すつもりはないんだから」
「は?じゃあどうしろっていうんだよ!」
「君たちは全然分かってないな。この世の中には、謝ったら許してもらえることしかないと思っているのか?そんなわけない。そんなわけないからみんな、許されないような間違いを犯さないように気をつけて生きてるんじゃないか」
「「「……………………」」」
一同静まりかえる。
やめてほしいな。
未成年への説教とか、僕の役目じゃなと思うんだけどな。
しかし、クラスメイトたちの目は少しだけ変わった気がする。
僕の言葉が少しでも彼ら彼女らに届いたのなら、嬉しいのだけどな。
「クロード、真田、今まで本当にごめん!」
「真田さん、クロード君、ごめんなさい!」
「「「ごめん!」」」
クラスメイトたちは、僕と志織ちゃんに深く頭を下げる。
僕はクラス全員異世界に飛ばしてやって、水や食料を探して苦労する様子を見てそこそこすっきりしたから許してもいいと思っている。
しかし志織ちゃんはどうかな。
「ごめんみんな。わたし、みんなのことは許せないかな」
「「「……………………」」」
「みんな都合が良すぎるよ。平和な日本で、あれだけわたしのことを無視しておいて。わたしには食料や水が欲しくて謝っているようにしか思えない。この食べ物とか水はクロードが見つけたものだから、クロードがいいのなら分けてもいいと思う。でもいままでのことを全部許すとかそういうのは、無理だよ」
「「「……………………」」」
志織ちゃんは僕と出会ったとき、なんの躊躇もなくビルの屋上から飛び降りたんだ。
志織ちゃんがクラスのみんなによって負わされた心の傷は、そうそう癒えるものではないだろう。
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