ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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147.夢幻

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「うーん……めいど……ビキニアーマー……」

 ピピピピというめざまし時計の電子音が鼓膜を叩く。
 誰だめざまし時計なんて仕掛けたのは。
 いや僕しかいないか。
 あれ、でも僕は今異世界にいるはずだ。
 めざまし時計なんて使わずメイドさんに起こしてもらえばいい。
 だとしたら、ここはどこだ?
 言い知れようも不安が胸をつき、ぼやけた頭が覚醒する。

「ここ、どこだ?」

 落ち着いた壁紙とフローリングの床、低い天井に狭い部屋。
 どう考えても日本だ。
 そしてこんな部屋に見覚えもある。
 前世の僕の部屋だ。
 なんとなく身体に異変を感じて、洗面所に駆け込んだ。
 鏡に映っていたのは20代後半くらいの冴えない日本人男性だ。
 忘れようはずも無い、前世の僕の顔だった。
 
「は?どうなってるの。まさか……」

 僕は母さんに電話してみた。

『―――どうしたの?こんな朝早くに』

「いや、なんでもないんだ」

 そう返した僕の瞳からは涙が溢れ出す。
 まさかまたその声が聞けるとは。
 とりとめの無い話をして電話を切る。
 まったくもって意味が分からない。
 まさか、今までのことがすべて夢?
 そっか、夢か。
 なんとなくそれで正しいような気がした。

『…………ード』

「ん?」

 誰かに呼ばれた気がしたけれど、部屋の中には誰もいない。
 きっと気のせいかな。
 僕はスーツを着てネクタイを締めて会社に向かった。




 昨日の今日のはずなのに、長い夢を見ていたように会社のことを覚えていない。
 仕事でミスをしまくって大変だった。
 まあ謝るのは慣れてる。
 僕はひたすら頭を下げまくった。
 昼休みになり、社員食堂でカツカレーを頼む。
 なんだかカツカレーも久しぶりな気がするな。
 毎日のように食べていたはずなんだけど。
 サクリとスプーンをとんかつに刺す。

『…………ード!』

 また誰かの声が聞こえた気がした。
 思春期の女の子みたいな可憐な声だ。
 まあ僕にそんな知り合いはいない。
 呼んでいたとしても僕じゃないだろう。
 
『クロード!!』

 今度ははっきりと聞こえた。
 クロードって夢の中で僕が呼ばれていた名前だ。
 幻聴かな。

『クロード!!戻ってきて!!』

 ピシリ、と空間にヒビが入る。
 何も無いはずの空間がまるでガラスのように割れた。
 そこから大きな鳥と1匹のゴブリンが現われる。
 僕はこの2匹を知っている。
 ガルーダのアナスタシアとゴブリンのゴブ次郎だ。
 空間はバリバリと割れ、他のガルーダやゴブリン、ドラゴンやローパーまで現われた。
 みんな僕の友達だ。

「グギャギャギャ、グギャグギャ(大将、戻りましょう)」

「戻るってどこへ?」

「グギャギャギャギギグギャ(魔王との戦いです)」

「魔王?」

 思い出した。
 僕は魔王との戦いの途中に魔眼の力で……。

「グギャギャギャグギャグギャギャ(マヤ嬢が苦戦してますぜ)」

「うん。マヤを助けなきゃね」

 さあ、僕たちの戦いはこれからだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                あとがき
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 みなさんこれまでご愛読いただきありがとうございました。
 本作はこれにて一区切りとさせていただきます。
 こんな中途半端な終わりになってしまって申し訳ありません。
 本当に行き当たりばったりで書いておりましたので。
 大変見苦しい文章ではありますが、みなさまの御声援のおかげでなんとかここまで頑張って書き続けてこられました。
 お気に入りに入れてくださった方々や感想を下さった方々、読んでくださった方々に改めて深い感謝を申し上げます。
 それではまた別の作品でお会いしましょう。
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