ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

文字の大きさ
146 / 159

146.僕とメイド

しおりを挟む
 校外演習は中止となった。
 そもそも演習場所の森が封鎖されてしまったからね。
 強力な結界を張ることのできる魔法使いによって、森を覆うように結界が張られ中の魔物が出てこないようにされているらしい。
 森では何が起こっているんだろうね。
 まあ十中八九魔王が誕生しているんだろうけど。
 この魔王は、僕がクラスメイトたちを異世界に連れて行ったせいで発生した魔王ではないらしい。
 この世界における僕の影響は、勇者の性別とスキル以外には無い。
 神様が勇者を用意して倒す役目を持たせたということは、おそらく突発的に発生した魔王ではなく自然発生的な魔王なんだと思う。
 神様は魔王のことを思考能力の無い力の塊だと言っていた。
 氷竜王と同じくらいの強さなら、氷竜王は魔王じゃないのかと聞いてみたらその答えが返ってきたんだ。
 そして氷竜王といえども世界に対して不利益をもたらすのであれば勇者が生まれ、それを討伐すると。
 まあつまり、強い力を持っていて神様にとって邪魔な存在だったら魔王認定されてしまうというわけだ。
 僕?僕は大丈夫でしょ。
 たぶん神様に愛されてると思うし。
 怒られたら土下座するし。
 
「クロード様、どうでしょうか。気持ちいいですか?」

「うん。とても気持ちいいよ」

 そんな僕はといえば、別にエロいことをしているわけではないよ。
 自室でクレアさんにマッサージを受けているんだ。
 まあエロいといえばエロいかもしれない。
 なにせクレアさんはビキニアーマーを身につけているのだから。
 いやね、僕は思ったんだよ。
 クレアさんに似合うのはメイド服じゃなくてこういった布の少ない、鍛え上げられた自身の肉体をさらけ出すような服なんじゃないかって。
 それもフリフリとした飾り気の多いものはダメだ。
 もっとナチュラルで、ネイチャーで、超自然的な何かだ。
 もういっそ裸が似合うんじゃないかと思う。
 妥協のビキニアーマーだ。
 古傷のたくさんあるしなやかな肉体に、危険な部分だけを隠すだけの金のビキニアーマーがとてもマッチしている。
 やっぱこれだったね。
 クレアさんは特に頬を赤らめるでもなく、淡々と仕事をこなしている。
 この無機質な感じもまたいい。
 床に寝転がっていたらホウキで掃きだされそうな感じがたまらない。
 よし、明日はアフリカで買ってきた原住民族の踊り子衣装を試してみようか。





 私がメイドとして働くことになったのは偶然だった。
 冒険者ギルドでいつものようにつまらない依頼を見ていたら、突然緊急依頼だとか言って魔法学園のメイドの仕事が貼り出された。
 いったいなんの冗談だとギルド長に話を聞くと、魔法学園の生徒が高位のドラゴンを使い魔として召喚したのだというではないか。
 その生徒と使い魔を恐れて誰もメイドをやりたがらないから、冒険者ギルドに依頼されたのだという。
 ドラゴンにメイドとして奉仕できるのは冒険者くらいだと思ったのだろう。
 安直な考えだ。
 この依頼を出した奴はたぶん馬鹿だな。
 だが私はこの依頼を面白そうだと思った。
 知り合いで同じく冒険者のフーリッシュも乗り気のようだったので、一緒に依頼を受けることにした。
 募集人員は2名。
 募集要項は礼節をわきまえたなるべく高位の冒険者。
 報酬は1日金貨1枚。
 高位の冒険者がこんなはした金で依頼なんて受けるかと思った。
 だが、実際に私とフーリッシュは受けている。
 この依頼を出した者は今頃ドヤ顔でも浮かべていることだろう。
 すこしだけ苛立ったのでごねて報酬を金貨2枚に引き上げさせた。
 さすがに高ランク冒険者相手に1日金貨1枚は舐めすぎだ。
 学園は私のような大柄な女がメイドとしてやってくるとは思っていなかったのか、急いでメイド服を仕立てさせた。
 ひらひらとしていて、なんとも落ち着かない服だ。
 フーリッシュは何を着ても似合うから羨ましい。
 私のような大女など、何を着てもしっくりこないと言うのに。
 これから働く学園の寮を案内された。
 貴族のボンボン共はこんなところで暮らしているのか。
 そりゃあ自分が選ばれた存在だと思うよな。
 私なんてここの生徒たちくらいの頃は冒険者として毎日のように野宿をしていたものだ。
 食べるものに金を使うのももったいなかったから毎日黒パンと塩スープばかり。
 どうしてこんなに身体が大きくなってしまったのか、まったく分からない。
 部屋の掃除をして過ごしていると、廊下からフーリッシュの声がする。
 人に変身した高位のドラゴンというやつを連れてきたのか。
 どんなやつなのか楽しみだ。
 私よりも大きな男だったりしてな。
 確か名前はクロードだったな、よし。
 ガチャリと扉が開く。

「私クロード様の専属メイドを勤めさせていただきます、クレアと申します。以後よろしくお願いいたします」

 クロード様は動かない。
 じっと私のほうを見上げて固まっている。
 ずいぶんと小さな人だな。
 私と並んだら、大人と子供のようになってしまうんじゃないだろうか。
 クロード様はやはり動かない。
 どうしたのだろうか。
 私が何かご機嫌を損ねるようなことをしてしまったというのか。
 
「あの、クロード様?」

「ん?ああ、ごめんね。これからよろしくね」

「はい。よろしくお願いします」

 よかった、何か考え事をしていただけのようだ。
 それにしても心地のいい声だ。
 少年のように可憐で、それでいて落ち着きのある声。
 不思議ともう一度聞きたくなってしまうような声だ。
 私は誰にも言ったことは無いが、男の声が好きなんだ。
 男の顔とか性格とか、それ以前に声が気になる。
 クロード様の声は、今まで聞いたどの声よりも私の心に染み渡る声だった。
 そしてその小柄な体格。
 私は自分がこんな大女だからなのか、背の小さな男が好きなんだ。
 それらを総合すると、クロード様は私の好みドストライク。
 なかなか楽しい仕事になりそうだ。



 後日クロード様から異国の踊り子の衣装を頂いた。
 身につけてみたが、これは素晴らしい。
 私に似合う服なんて無いと思っていたのに。
 身体を覆う布は少ないが、普段着にしようと思う。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

処理中です...