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3.街
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ダメだ、もはや何もする気が起きない。
この砂漠にあったという国はとうの昔に滅びたのではないかと思う。
先ほど見つけた廃墟はその名残に違いない。
そもそもここが3つ隣の国に広がる砂漠だという保証もなかった。
ここは僕の知らないどこか遠い地にある砂漠で、この世の果てまで砂が広がっているだけのような場所なのかもしれない。
砂を操って簡易的な寝台を作り、寝転がる。
ひんやりと冷やされた砂が気持ちいい。
精霊によって弱められた日差しが適度に僕の身体をポカポカと温め、冷やされた砂が適度に僕の身体を冷やす。
これは快適空間だ。
寝転がっていれば食事が出てくるのであればここに永住してもいいくらいだ。
しかし悲しいかな、ここで寝転がって待っていても永遠に食事は出てこない。
ここには食事を作ってくれる料理人も、運んでくれる侍女もいないのだ。
僕が絶望に浸っていると、精霊たちが何やらひそひそと僕にささやきかけてくる。
どうやら砂の下から魔物が僕のことを狙っているらしい。
魔物か。
魔物は、確か食べられるんだよな。
どの魔物も食べられるのかは知らないが、侍女にこの肉はなんの肉だと聞いたらなんかの魔物の肉だと答えたときがあった。
僕の腹がぐぅと鳴る。
限界が近いのを感じる。
もはや食べられるか食べられないかは知らん。
今から僕を襲ってくる魔物を食べる。
僕がそう決めた瞬間砂が爆発したように舞い上がり、巨大なサソリの魔物が現れる。
ラージスコルピオか、ちょっと分が悪いかもしれない。
奴の甲殻はとても硬い。
負けはしないだろうけれど、僕も奴の甲殻を貫けるかわからない。
だがもう腹が減って体力が限界だ。
こいつを仕留めなければ僕に明日はない。
死ぬ気で仕留めてやる。
狙うなら関節だ。
僕は関節に向かって風の刃を放った。
「ギュィィィィッ」
「あれ……」
僕の放った風の刃は、あっさりとラージスコルピオの大きなハサミを切り落とした。
もう1発風の刃。
スパっと鋭い切れ味で、ラージスコルピオの硬い甲殻が切り裂かれた。
なんだか僕の精霊術が強くなっているような気がする。
気がするというレベルではない気もするけれど、とりあえず今はそんなことはどうでもいいか。
僕は風の刃でラージスコルピオを細切れにした。
「肉だ、肉」
切り裂かれた甲殻の断面からはプリプリとした甲殻類特有の弾力のある肉が見えている。
腹が減っていた僕はそのまま手づかみで齧りついた。
「まっずいな……」
幸いなことに肉は柔らかく筋がない。
そのため食感だけはいい。
しかし香りが最悪だ。
非常に生臭く、味もない。
グニグニとした食感も段々気持ち悪く感じてきた。
だが背に腹は代えられん。
ここで食っておかねば僕は確実に死ぬ。
僕は心を無にして食べ進めた。
「おぇぇぇぇっ、ぐぉぉっ」
僕は謎の腹痛と吐き気に襲われていた。
もはや体中の水分を上と下から出し尽くした気がする。
僕の身体がまさか病魔に負けたということはないと思うので、これは十中八九先ほど食べた魔物の肉が原因だろう。
寄生虫か何かがいたのかもしれない。
確か肉の中には生で食べてはいけないものもあったはずだ。
あれがそうだとは知らなかった。
次からは絶対に焼いて食おう。
いや、やはりもう二度とあの肉は食わん。
もう僕の心はとうの昔に折れている。
道で拾った魔物の肉を生で貪り食い、汚物を吐き散らし、このような砂漠の真ん中で下半身を丸出しにして排泄した時点で僕はもう自分を保つことができなくなっていた。
「もういっそ殺してくれ。なんで僕を処刑してくれなかったんだ……」
汗と涙と色々な物でベトベトになった顔に精霊たちが清潔な水をかけてくれる。
冷たい水で顔を洗って少しだけメンタルを取り戻すことができたような気がする。
腹痛と吐き気もいつの間にか治っている。
おそらく精霊が癒してくれたのだろう。
涙が溢れる。
こんな不甲斐ない僕に従ってくれる精霊たちには感謝しかない。
精霊たちに日頃の感謝を伝えると、砂が舞い上がり人の手のような形になった。
手はまず握りこぶしの形になり、次に人差し指だけを伸ばした何かを指さすような形になった。
人差し指の先は何もない砂漠の向こう側を差している。
「こっちに何かあるのか?」
人差し指は空中をツンツンと2度叩く。
すると今度はどこからか水が集まってきて水鏡を形作る。
そこに映っていたのは、多くの人で賑わう街の景色だった。
街からは煮炊きの煙も出ているし、なによりたくさんの人が歩いている。
ちゃんとまだ滅びていない街だ。
「こっちに街があるのか!?」
水鏡に映し出される景色が少し広がり、街全体を映し出す。
まだまだ景色は広がっていき、やがて街の周辺まで映し出される。
そして最後には、僕がいる場所と街を俯瞰した景色になった。
「ここが街でここが僕のいる場所か。街の大きさを1里(約3.9キロ)ほどだと仮定して、街までは10里くらいか」
遠いな。
遠いが、空を飛んでいけばそれほどでもない距離だ。
終わりのない苦行ほど辛いものはない。
明確に街までの距離を知ることができたのはこの上ない僥倖だ。
精霊たちには感謝しかない。
しかし、できるならもう少し早く教えて欲しかった。
この砂漠にあったという国はとうの昔に滅びたのではないかと思う。
先ほど見つけた廃墟はその名残に違いない。
そもそもここが3つ隣の国に広がる砂漠だという保証もなかった。
ここは僕の知らないどこか遠い地にある砂漠で、この世の果てまで砂が広がっているだけのような場所なのかもしれない。
砂を操って簡易的な寝台を作り、寝転がる。
ひんやりと冷やされた砂が気持ちいい。
精霊によって弱められた日差しが適度に僕の身体をポカポカと温め、冷やされた砂が適度に僕の身体を冷やす。
これは快適空間だ。
寝転がっていれば食事が出てくるのであればここに永住してもいいくらいだ。
しかし悲しいかな、ここで寝転がって待っていても永遠に食事は出てこない。
ここには食事を作ってくれる料理人も、運んでくれる侍女もいないのだ。
僕が絶望に浸っていると、精霊たちが何やらひそひそと僕にささやきかけてくる。
どうやら砂の下から魔物が僕のことを狙っているらしい。
魔物か。
魔物は、確か食べられるんだよな。
どの魔物も食べられるのかは知らないが、侍女にこの肉はなんの肉だと聞いたらなんかの魔物の肉だと答えたときがあった。
僕の腹がぐぅと鳴る。
限界が近いのを感じる。
もはや食べられるか食べられないかは知らん。
今から僕を襲ってくる魔物を食べる。
僕がそう決めた瞬間砂が爆発したように舞い上がり、巨大なサソリの魔物が現れる。
ラージスコルピオか、ちょっと分が悪いかもしれない。
奴の甲殻はとても硬い。
負けはしないだろうけれど、僕も奴の甲殻を貫けるかわからない。
だがもう腹が減って体力が限界だ。
こいつを仕留めなければ僕に明日はない。
死ぬ気で仕留めてやる。
狙うなら関節だ。
僕は関節に向かって風の刃を放った。
「ギュィィィィッ」
「あれ……」
僕の放った風の刃は、あっさりとラージスコルピオの大きなハサミを切り落とした。
もう1発風の刃。
スパっと鋭い切れ味で、ラージスコルピオの硬い甲殻が切り裂かれた。
なんだか僕の精霊術が強くなっているような気がする。
気がするというレベルではない気もするけれど、とりあえず今はそんなことはどうでもいいか。
僕は風の刃でラージスコルピオを細切れにした。
「肉だ、肉」
切り裂かれた甲殻の断面からはプリプリとした甲殻類特有の弾力のある肉が見えている。
腹が減っていた僕はそのまま手づかみで齧りついた。
「まっずいな……」
幸いなことに肉は柔らかく筋がない。
そのため食感だけはいい。
しかし香りが最悪だ。
非常に生臭く、味もない。
グニグニとした食感も段々気持ち悪く感じてきた。
だが背に腹は代えられん。
ここで食っておかねば僕は確実に死ぬ。
僕は心を無にして食べ進めた。
「おぇぇぇぇっ、ぐぉぉっ」
僕は謎の腹痛と吐き気に襲われていた。
もはや体中の水分を上と下から出し尽くした気がする。
僕の身体がまさか病魔に負けたということはないと思うので、これは十中八九先ほど食べた魔物の肉が原因だろう。
寄生虫か何かがいたのかもしれない。
確か肉の中には生で食べてはいけないものもあったはずだ。
あれがそうだとは知らなかった。
次からは絶対に焼いて食おう。
いや、やはりもう二度とあの肉は食わん。
もう僕の心はとうの昔に折れている。
道で拾った魔物の肉を生で貪り食い、汚物を吐き散らし、このような砂漠の真ん中で下半身を丸出しにして排泄した時点で僕はもう自分を保つことができなくなっていた。
「もういっそ殺してくれ。なんで僕を処刑してくれなかったんだ……」
汗と涙と色々な物でベトベトになった顔に精霊たちが清潔な水をかけてくれる。
冷たい水で顔を洗って少しだけメンタルを取り戻すことができたような気がする。
腹痛と吐き気もいつの間にか治っている。
おそらく精霊が癒してくれたのだろう。
涙が溢れる。
こんな不甲斐ない僕に従ってくれる精霊たちには感謝しかない。
精霊たちに日頃の感謝を伝えると、砂が舞い上がり人の手のような形になった。
手はまず握りこぶしの形になり、次に人差し指だけを伸ばした何かを指さすような形になった。
人差し指の先は何もない砂漠の向こう側を差している。
「こっちに何かあるのか?」
人差し指は空中をツンツンと2度叩く。
すると今度はどこからか水が集まってきて水鏡を形作る。
そこに映っていたのは、多くの人で賑わう街の景色だった。
街からは煮炊きの煙も出ているし、なによりたくさんの人が歩いている。
ちゃんとまだ滅びていない街だ。
「こっちに街があるのか!?」
水鏡に映し出される景色が少し広がり、街全体を映し出す。
まだまだ景色は広がっていき、やがて街の周辺まで映し出される。
そして最後には、僕がいる場所と街を俯瞰した景色になった。
「ここが街でここが僕のいる場所か。街の大きさを1里(約3.9キロ)ほどだと仮定して、街までは10里くらいか」
遠いな。
遠いが、空を飛んでいけばそれほどでもない距離だ。
終わりのない苦行ほど辛いものはない。
明確に街までの距離を知ることができたのはこの上ない僥倖だ。
精霊たちには感謝しかない。
しかし、できるならもう少し早く教えて欲しかった。
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