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7.嫌な女
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ふいに、扉の外に人の気配を感じて検証の手を止める。
たまにこうして精霊たちの感覚がダイレクトに伝わってくるようなことがある。
王宮を出て力が強くなってからというもの、そういうことが増えてきたような気がする。
精霊たちをより身近に感じることができるようになったということなのだろうか。
「アイファ、いる?」
扉の外から女の声でそう問いかけられる。
おそらくアイファの知り合いだろう。
この建物にいるということは同じチームの仲間かなにかに違いない。
僕は何も答えなかった。
住人が留守だったら普通は出直すものだと思ったからだ。
しかしその客は部屋の住人が明らかに留守にもかかわらず、扉を開けて入ってきた。
僕は思わず固まってしまった。
何も悪いことはしていないが、何か決定的な瞬間でも見られてしまったかのような錯覚を覚える。
「あ、あなた誰よ」
「お前こそ誰だ」
強い口調で問われたのでつい強い言葉で返してしまったが、彼女は間違っておらず問い詰められるべきは僕な気がする。
友達の部屋に行ったら留守の部屋に裸の男がいたら誰だって強い口調で問い詰めたくもなるだろう。
「私は、アイファの友達のリーシアよ。アイファが客を取ったとは思えないんだけど、あなたなんでこの部屋にいるの?ていうかなんで裸なの?」
リーシアと名乗った女はアイファと同じように砂漠の国の民らしい褐色の肌をした黒髪の16歳くらいの若い女だ。
アイファが赤みがかった瞳をしているのに比べて、こいつは青みの強い瞳をしている。
体つきも、スレンダーなアイファに比べてずいぶんと肉感的だ。
踊り子のように煽情的な服はここの女たちの制服なのだろうか。
よくアイファは今まで処女を保っていられたものだ。
「ねえ聞いてるの?私は名乗ったんだからあなたも名乗りなさいよ」
「僕はロキという。アイファの同居人だ。今日から世話になっている」
「同居人?それってアイファの男ってこと?」
「似たようなものだ。やることをやって、その代わりに僕はアイファの言うことを聞く」
奴隷という言葉は出さないことにした。
見ず知らずの男が君の友人の奴隷ですと言ってきたら僕なら消し炭にする。
そのような変態と付き合うことはその友人にとって絶対にいい影響を与えないからだ。
「ふーん、綺麗な顔してるわね。いい男だわ。アイファのやつ、処女を拗らせてるくせに生意気じゃないの」
処女を拗らせているという意見には同意するが、この女の発言にはなんとなく悪意を感じるな。
友達ではないのだろうか。
それとも女同士の友情というのはこういうものなのか。
「ねえ、アイファなんかやめて私にしなよ。アイファって処女だからあんまり気持ちよくなかったでしょ?あ、それともまだやってない?雰囲気が大事!とか言ってきゃはははっ」
僕は一度寝た程度の女になんらかの情を感じるような男ではないが、この女の言っていることは酷く不愉快だった。
ただでさえこのチームにいるような小娘共は僕の好みからは外れているというのに、この女は品性まで最悪ときている。
僕の嫌いな女トップ10に入れてやってもいいくらいだ。
「消えろクソ女。僕は仮にも友人だと口にした相手を貶めるような人間が一番嫌いなんだ」
「はぁ?何言って……きゃっ」
僕は口で言うのも面倒になったので強制的に女の身体を浮かせ、扉から放り出した。
扉も閉めて開かないように精霊の力で押さえつける。
この部屋に鍵さえ付いていればこのような不快な想いをする必要もなかったというのに。
今後僕かアイファが通るとき以外は開かないようにずっと押さえておくことにしよう。
『何これ扉が開かない。鍵なんてこの部屋の扉には付いてないはずなのに』
扉の外でアイファの声がしたので押さえていた扉を開放する。
アイファが帰ってくるまでの間、何人もの人間が来て扉をガンガン叩いたりもしていたが僕の精霊に守られた扉をスラムのガキ共が開けられるはずもない。
「ちょっとロキ、なにやってるの。扉が開かないからみんな何事かと私に聞いてくるじゃないの。出ていって説明くらいしてよ」
「不快な女がまた話しかけてくるんじゃないかと思ってな。僕はあの女とは二度と言葉を交わしたくないんだ」
あの女の気配は覚えた。
誰かが扉をガンガン叩いているときにも後ろでうろうろしていたのが分かった。
出ていけばどうせまた面倒なことを言い出したことだろう。
「不快な女?もしかして私が出かけてる間に誰か来た?」
「ああ、リーシアという女が返事もしていないのに勝手に部屋に入ってきた。小うるさいクソ女だったので強制的に追い出して扉を閉ざした」
「はぁ、リーシアのせいか。まあいいわ。とりあえず服着て。みんなに説明に行くわよ」
アイファの買ってきた服を麻袋から引っ張り出す。
ずいぶんと布地の少ない服だ。
この国は気温が高いためか、男も女も肌の露出度が高い服を着ている。
砂漠を移動するときなどは日差しを遮ることのできる外套などを身に付けることもあるようだが、日陰が多い街中や室内では皆ほとんど裸みたいなものだ。
男は上半身裸が基本だ。
アイファは僕が肌を露出するような服に慣れていないことを悟って上半身に羽織るベストのようなものも買ってきてくれたようだ。
気遣いはありがたいが、それほど裸と変わらんな。
たまにこうして精霊たちの感覚がダイレクトに伝わってくるようなことがある。
王宮を出て力が強くなってからというもの、そういうことが増えてきたような気がする。
精霊たちをより身近に感じることができるようになったということなのだろうか。
「アイファ、いる?」
扉の外から女の声でそう問いかけられる。
おそらくアイファの知り合いだろう。
この建物にいるということは同じチームの仲間かなにかに違いない。
僕は何も答えなかった。
住人が留守だったら普通は出直すものだと思ったからだ。
しかしその客は部屋の住人が明らかに留守にもかかわらず、扉を開けて入ってきた。
僕は思わず固まってしまった。
何も悪いことはしていないが、何か決定的な瞬間でも見られてしまったかのような錯覚を覚える。
「あ、あなた誰よ」
「お前こそ誰だ」
強い口調で問われたのでつい強い言葉で返してしまったが、彼女は間違っておらず問い詰められるべきは僕な気がする。
友達の部屋に行ったら留守の部屋に裸の男がいたら誰だって強い口調で問い詰めたくもなるだろう。
「私は、アイファの友達のリーシアよ。アイファが客を取ったとは思えないんだけど、あなたなんでこの部屋にいるの?ていうかなんで裸なの?」
リーシアと名乗った女はアイファと同じように砂漠の国の民らしい褐色の肌をした黒髪の16歳くらいの若い女だ。
アイファが赤みがかった瞳をしているのに比べて、こいつは青みの強い瞳をしている。
体つきも、スレンダーなアイファに比べてずいぶんと肉感的だ。
踊り子のように煽情的な服はここの女たちの制服なのだろうか。
よくアイファは今まで処女を保っていられたものだ。
「ねえ聞いてるの?私は名乗ったんだからあなたも名乗りなさいよ」
「僕はロキという。アイファの同居人だ。今日から世話になっている」
「同居人?それってアイファの男ってこと?」
「似たようなものだ。やることをやって、その代わりに僕はアイファの言うことを聞く」
奴隷という言葉は出さないことにした。
見ず知らずの男が君の友人の奴隷ですと言ってきたら僕なら消し炭にする。
そのような変態と付き合うことはその友人にとって絶対にいい影響を与えないからだ。
「ふーん、綺麗な顔してるわね。いい男だわ。アイファのやつ、処女を拗らせてるくせに生意気じゃないの」
処女を拗らせているという意見には同意するが、この女の発言にはなんとなく悪意を感じるな。
友達ではないのだろうか。
それとも女同士の友情というのはこういうものなのか。
「ねえ、アイファなんかやめて私にしなよ。アイファって処女だからあんまり気持ちよくなかったでしょ?あ、それともまだやってない?雰囲気が大事!とか言ってきゃはははっ」
僕は一度寝た程度の女になんらかの情を感じるような男ではないが、この女の言っていることは酷く不愉快だった。
ただでさえこのチームにいるような小娘共は僕の好みからは外れているというのに、この女は品性まで最悪ときている。
僕の嫌いな女トップ10に入れてやってもいいくらいだ。
「消えろクソ女。僕は仮にも友人だと口にした相手を貶めるような人間が一番嫌いなんだ」
「はぁ?何言って……きゃっ」
僕は口で言うのも面倒になったので強制的に女の身体を浮かせ、扉から放り出した。
扉も閉めて開かないように精霊の力で押さえつける。
この部屋に鍵さえ付いていればこのような不快な想いをする必要もなかったというのに。
今後僕かアイファが通るとき以外は開かないようにずっと押さえておくことにしよう。
『何これ扉が開かない。鍵なんてこの部屋の扉には付いてないはずなのに』
扉の外でアイファの声がしたので押さえていた扉を開放する。
アイファが帰ってくるまでの間、何人もの人間が来て扉をガンガン叩いたりもしていたが僕の精霊に守られた扉をスラムのガキ共が開けられるはずもない。
「ちょっとロキ、なにやってるの。扉が開かないからみんな何事かと私に聞いてくるじゃないの。出ていって説明くらいしてよ」
「不快な女がまた話しかけてくるんじゃないかと思ってな。僕はあの女とは二度と言葉を交わしたくないんだ」
あの女の気配は覚えた。
誰かが扉をガンガン叩いているときにも後ろでうろうろしていたのが分かった。
出ていけばどうせまた面倒なことを言い出したことだろう。
「不快な女?もしかして私が出かけてる間に誰か来た?」
「ああ、リーシアという女が返事もしていないのに勝手に部屋に入ってきた。小うるさいクソ女だったので強制的に追い出して扉を閉ざした」
「はぁ、リーシアのせいか。まあいいわ。とりあえず服着て。みんなに説明に行くわよ」
アイファの買ってきた服を麻袋から引っ張り出す。
ずいぶんと布地の少ない服だ。
この国は気温が高いためか、男も女も肌の露出度が高い服を着ている。
砂漠を移動するときなどは日差しを遮ることのできる外套などを身に付けることもあるようだが、日陰が多い街中や室内では皆ほとんど裸みたいなものだ。
男は上半身裸が基本だ。
アイファは僕が肌を露出するような服に慣れていないことを悟って上半身に羽織るベストのようなものも買ってきてくれたようだ。
気遣いはありがたいが、それほど裸と変わらんな。
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