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6.奴隷契約(口約束)
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「ねえねえ、ロキ。私の身体に溺れた?」
この僕がこんな小娘の身体に溺れるわけがないだろう、と言いたいところだが正直言うと少し溺れた。
処女の若い女なんかと思っていたが、案外悪くないものだ。
歳を経た女のような手練手管はないものの、エネルギッシュで弾けるような魅力が若い女にはあった。
僕は一瞬だが我を忘れてアイファを求めてしまった。
「ロキ、何か答えてよ!本当に私の身体に溺れちゃったの?約束通り処女をあげたんだから奴隷になってもらうからね」
僕は処女と引き換えに奴隷になるという約束に同意した覚えはない。
そのためこの約束は無効だ。
だが、それでは僕がやるだけやって約束を守らないやつみたいじゃないか。
だから期限付きでよければこの女の戯言に付き合ってやることにした。
「それで、奴隷って何をすればいいんだ。股ぐらでも舐めればいいのか?」
「ま、股ぐらって......それもいいかも。て、そうじゃない!」
アイファは顔を真っ赤にして僕の言葉を否定する。
先ほどまでくんずほぐれつしていたというのに、今更股ぐら舐める発言くらいで何を恥じるというのか。
「そうじゃなくて、私を守ってここから連れ出してほしいの。あなたにも都合があると思う。一生とはいかないかもしれないけれど、少しの間でいいから私を守ってよ」
守って、というのはいったい何からだろうか。
スラムの暴漢からか、他のチームの襲撃からか、それとも世間の荒波からなのか。
それら全てからことごとく一人の女を守るなどは、物語の中の騎士みたいだな。
きっとアイファが求めているのは、辛い現実から連れ出してくれる虚構の騎士なのだろう。
「私たちスラムの女の行く末なんて知れてるわ。娼館に就職できればいいほう。多くが街角に立って客を取る街娼になるわ。そして歳老いて客が取れなくなれば死んでいくの」
「まあそうだろうな」
今の世の中では、女の生き方は限られている。
中流階級以上の女は普通、親に決められた結婚相手と結婚して妻となり子を産む。
しかし中流階級より下、下層階級の女は結婚相手すらも見つけることが難しい。
だがアイファの器量であれば、まだ選択支は多いほうのはずだ。
「それがなぜ奴隷という答えに行きついたんだ」
「女が一番価値があるのはいつだと思う?」
「僕は21歳から25歳くらいの間だと思うが」
「全然違う。10代処女よ。女は10代で処女のときが一番価値があるの。だから私は他のみんなのように簡単には身体を売らなかった。収入は少なくて生活は辛かったけれど、泥水をすすって耐えた。それもすべて今日、最高の価値の自分を使ってロキを奴隷にするためだったのよ」
自分の価値か。
僕はいったいどのくらいなんだろうな。
小娘の処女で奴隷になるくらいだからそれほど高くないのかもしれない。
「まあいいだろう。僕は他に行く場所もないし、しばらくお前の奴隷になってやってもいい」
「ずいぶんな態度の大きな奴隷だわ」
奴隷に敬語が必要なら、僕には奴隷は無理だ。
「とりあえず、この絹の服はここではやめたほうがいいわね。うわっ、これすごい肌触りのいい布ね」
「そこそこいい布だろうからな。そいつを売って僕に合いそうな服を買ってきてくれないか?差額はお前のものにしていいから」
「え、いいの?だってこれすごい高く売れると思うけど」
「僕は金の使い方がわからん。お前が使って僕を養ってくれればいい」
「お金の使い方がわからないって、どこで生きてきたのよ」
王宮だ。
だがそんなことは口に出すことができない。
口に出したところで信じてもらえるとは思えない。
「まあわかったわ。じゃあ私は少し出かけてくるけど、素っ裸なんだからこの部屋から出ないでね」
「わかっている」
誰が全裸でうろつくものか。
それはただの変態だ。
僕は毛布をかぶり、出ていくアイファを見送った。
バタバタと廊下を駆けていく騒がしい音がわずかに聞こえる。
どうしたものか、暇だ。
「そういえば、なんで精霊術が強くなってるんだろうな」
あのときは腹が減っていてそれどころではなかった。
その後も腹を壊したり街を見つけたりと忙しくて考えている暇がなかった。
考えて分かる問題かどうかも分からないが。
普通に考えて、王宮を出たこと以外に理由は考えられないよな。
王宮の外が僕にとってとてもいい環境だったのか、逆に王宮の中が僕にとって劣悪な環境だったのか。
どちらかといえば後者だろうか。
王宮の中は精霊が少ない環境だったように思える。
それになんだかいつも身体がだるかった。
あの王なら僕に日常的に遅効性の毒を盛るくらいは普通にしてそうだ。
王宮なんかやっぱり人が暮らす場所じゃないな。
誰も彼も陰謀に忙しそうにしている、そんな場所だった気がする。
なんにせよ精霊術が強くなったのはいいことだ。
もう王軍が全軍でかかってきても負ける気がしない。
いつか必ず、あの副将軍に復讐してやろう。
「暇だし、空間を超える練習でもするか」
空間を司る精霊というものも、この世には存在している。
しかし今まで僕はこの精霊に接する機会が全くなかった。
空間を司る精霊は、次元のこちら側にいては接することのできないものなのだ。
ひょんなことから先日、僕は空間を超えるという経験をした。
そのときに僕は空間を司る精霊の存在を知ったのだ。
僕が精霊の存在を知ったというよりも、精霊が僕の存在を知ったというべきか。
僕は異なる空間同士をつなぐ穴を開け、そっと手を入れる。
目の前の穴に突き入れた僕の手が、天井付近から生えてきた。
なるほどこれが空間の精霊が司る力というわけか。
もう少し手や足で試してみよう。
いきなり全身を転移させるようなことしない。
手足の1本や2本、次元の狭間で行方不明になったところで精霊が新しいのを生やしてくれるだろう。
しかし全身を転移させようとして失敗すれば僕は次元の狭間を一生彷徨うことになってしまう。
さすがの僕でも気が狂ってしまうだろう。
完璧にこの力を理解してから全身の転移を試すべきだ。
僕はじっくりと検証を続けた。
この僕がこんな小娘の身体に溺れるわけがないだろう、と言いたいところだが正直言うと少し溺れた。
処女の若い女なんかと思っていたが、案外悪くないものだ。
歳を経た女のような手練手管はないものの、エネルギッシュで弾けるような魅力が若い女にはあった。
僕は一瞬だが我を忘れてアイファを求めてしまった。
「ロキ、何か答えてよ!本当に私の身体に溺れちゃったの?約束通り処女をあげたんだから奴隷になってもらうからね」
僕は処女と引き換えに奴隷になるという約束に同意した覚えはない。
そのためこの約束は無効だ。
だが、それでは僕がやるだけやって約束を守らないやつみたいじゃないか。
だから期限付きでよければこの女の戯言に付き合ってやることにした。
「それで、奴隷って何をすればいいんだ。股ぐらでも舐めればいいのか?」
「ま、股ぐらって......それもいいかも。て、そうじゃない!」
アイファは顔を真っ赤にして僕の言葉を否定する。
先ほどまでくんずほぐれつしていたというのに、今更股ぐら舐める発言くらいで何を恥じるというのか。
「そうじゃなくて、私を守ってここから連れ出してほしいの。あなたにも都合があると思う。一生とはいかないかもしれないけれど、少しの間でいいから私を守ってよ」
守って、というのはいったい何からだろうか。
スラムの暴漢からか、他のチームの襲撃からか、それとも世間の荒波からなのか。
それら全てからことごとく一人の女を守るなどは、物語の中の騎士みたいだな。
きっとアイファが求めているのは、辛い現実から連れ出してくれる虚構の騎士なのだろう。
「私たちスラムの女の行く末なんて知れてるわ。娼館に就職できればいいほう。多くが街角に立って客を取る街娼になるわ。そして歳老いて客が取れなくなれば死んでいくの」
「まあそうだろうな」
今の世の中では、女の生き方は限られている。
中流階級以上の女は普通、親に決められた結婚相手と結婚して妻となり子を産む。
しかし中流階級より下、下層階級の女は結婚相手すらも見つけることが難しい。
だがアイファの器量であれば、まだ選択支は多いほうのはずだ。
「それがなぜ奴隷という答えに行きついたんだ」
「女が一番価値があるのはいつだと思う?」
「僕は21歳から25歳くらいの間だと思うが」
「全然違う。10代処女よ。女は10代で処女のときが一番価値があるの。だから私は他のみんなのように簡単には身体を売らなかった。収入は少なくて生活は辛かったけれど、泥水をすすって耐えた。それもすべて今日、最高の価値の自分を使ってロキを奴隷にするためだったのよ」
自分の価値か。
僕はいったいどのくらいなんだろうな。
小娘の処女で奴隷になるくらいだからそれほど高くないのかもしれない。
「まあいいだろう。僕は他に行く場所もないし、しばらくお前の奴隷になってやってもいい」
「ずいぶんな態度の大きな奴隷だわ」
奴隷に敬語が必要なら、僕には奴隷は無理だ。
「とりあえず、この絹の服はここではやめたほうがいいわね。うわっ、これすごい肌触りのいい布ね」
「そこそこいい布だろうからな。そいつを売って僕に合いそうな服を買ってきてくれないか?差額はお前のものにしていいから」
「え、いいの?だってこれすごい高く売れると思うけど」
「僕は金の使い方がわからん。お前が使って僕を養ってくれればいい」
「お金の使い方がわからないって、どこで生きてきたのよ」
王宮だ。
だがそんなことは口に出すことができない。
口に出したところで信じてもらえるとは思えない。
「まあわかったわ。じゃあ私は少し出かけてくるけど、素っ裸なんだからこの部屋から出ないでね」
「わかっている」
誰が全裸でうろつくものか。
それはただの変態だ。
僕は毛布をかぶり、出ていくアイファを見送った。
バタバタと廊下を駆けていく騒がしい音がわずかに聞こえる。
どうしたものか、暇だ。
「そういえば、なんで精霊術が強くなってるんだろうな」
あのときは腹が減っていてそれどころではなかった。
その後も腹を壊したり街を見つけたりと忙しくて考えている暇がなかった。
考えて分かる問題かどうかも分からないが。
普通に考えて、王宮を出たこと以外に理由は考えられないよな。
王宮の外が僕にとってとてもいい環境だったのか、逆に王宮の中が僕にとって劣悪な環境だったのか。
どちらかといえば後者だろうか。
王宮の中は精霊が少ない環境だったように思える。
それになんだかいつも身体がだるかった。
あの王なら僕に日常的に遅効性の毒を盛るくらいは普通にしてそうだ。
王宮なんかやっぱり人が暮らす場所じゃないな。
誰も彼も陰謀に忙しそうにしている、そんな場所だった気がする。
なんにせよ精霊術が強くなったのはいいことだ。
もう王軍が全軍でかかってきても負ける気がしない。
いつか必ず、あの副将軍に復讐してやろう。
「暇だし、空間を超える練習でもするか」
空間を司る精霊というものも、この世には存在している。
しかし今まで僕はこの精霊に接する機会が全くなかった。
空間を司る精霊は、次元のこちら側にいては接することのできないものなのだ。
ひょんなことから先日、僕は空間を超えるという経験をした。
そのときに僕は空間を司る精霊の存在を知ったのだ。
僕が精霊の存在を知ったというよりも、精霊が僕の存在を知ったというべきか。
僕は異なる空間同士をつなぐ穴を開け、そっと手を入れる。
目の前の穴に突き入れた僕の手が、天井付近から生えてきた。
なるほどこれが空間の精霊が司る力というわけか。
もう少し手や足で試してみよう。
いきなり全身を転移させるようなことしない。
手足の1本や2本、次元の狭間で行方不明になったところで精霊が新しいのを生やしてくれるだろう。
しかし全身を転移させようとして失敗すれば僕は次元の狭間を一生彷徨うことになってしまう。
さすがの僕でも気が狂ってしまうだろう。
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