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1.コールドスリープ
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モニターに映し出されるのは知識としては知っていても実際には見たこともないような辺境の星ばかり。
友軍のコロニーがある惑星からはすでに数億光年は離れてしまっているだろうか。
しかし進路を変えるためのスラスターおよびワープするための次元跳躍装置が敵の攻撃によって破壊されてしまった今、船はランダムにワープを繰り返しながら光速に近い速度で宇宙の果てを目指すばかりだ。
こんな速度では船の外に出て資源を回収することもできない。
そして金属資源が無ければ船の修理はできない。
もはや進路軌道上に大き目のデブリや惑星などが無いことを祈ることしかできない。
もっとも、この船の問題はそれだけではないがな。
「腹減ったな……」
もう3日も何も口にしていない。
食料プラントが食料の生産をしなくなったのは10日前だ。
船員が俺以外全滅してスラスターの破壊された船で宇宙を彷徨うというこの上無い状況にまだ絶望する要素があったとは知らなかった。
宇宙戦艦という閉鎖された空間の中では、食べられるものは限られている。
何か月にも渡って続く戦闘の中で、毎日レトルトの料理ばかりが食卓に並ぶのは兵士の士気に関わってくる。
食には妥協するべきではないと指揮官連中が奮発して導入した最新式の食料プラントだった。
しかし戦争に行くのにそんなことを気にした罰だと言わんばかりに最新式の食料プラントはその脆弱性を爆発させた。
それも最悪のタイミングでだ。
もはや俺の生きる気力はゼロに近い。
「メティス、俺が生き残れる可能性はどのくらいある?」
試しにこの船に搭載されている管理AIに未来演算させてみた。
案外この近くに俺の知らない有人惑星が存在して、反重力バリアか何かで船を受け止めてくれる可能性もある。
そうなればあと少し辛抱するだけで助かることになる。
しかし俺のそんな希望的観測はすぐに打ち砕かれることとなった。
『ウィリアム中尉が生き残れる可能性は0.00000000000000000012パーセントです』
「ほとんどゼロじゃないか。ちなみにその僅かな可能性はなんだ?どうなれば俺は助かる?」
『人類が認識していない有人惑星が偶然船の進路軌道上に存在し、かつ亜光速で移動する超弩級戦艦を中の人員を殺さないように受け止めるだけの科学技術を有しており、さらに中尉の命を奪わずにいてくれるだけの親切心を持っていた場合です』
「なるほどわかった。生存は絶望的か」
『食料不足による時間的猶予もありますので、生存確率を少しでも高めるためにはコールドスリープを推奨します』
生きていれば飯が必要になるし、いつかくる絶望を生身で受け止めなければならない。
仮死状態になれば腹も減らないし、死ぬときの苦しみも味わわなくて済むか。
「わかった。これよりすべての権限をメティスに貸与する。あとは頼んだ」
『了解しました。おやすみなさい、中尉』
「ああ、おやすみ」
結局、運が悪いんだよな。
何も持っていないなりに必死になって軍で頑張って貧民の身分から20代のうちに中尉にまでなったっていうのに、こんな終わり方はあんまりだ。
願わくば、次の人生は金持ちの子供に生まれ変わりたい。
そしたら……きっと……。
「ん?」
体温が上がり、意識がはっきりとしてくる。
たしか俺は、壊れた戦艦で宇宙を彷徨っていたはずだ。
食料プラントが故障して飯もまともに食えずにいつまでも宇宙を彷徨うことに耐え切れず、自分から冷凍保存カプセルに入ってコールドスリープした。
あれから船はどうなったんだ?
時間的猶予を伸ばしたとしても、俺が生存できる可能性は限りなくゼロに近かったはずだ。
だが生きてコールドスリープから覚めたということはわずかばかりでも生存の可能性が出てきたということなのではないだろうか。
どちらにしても今の状況をメティスに確認してみることとしよう。
「メティス、状況を教えてくれ」
『艦内省エネモードのためオフライン状態』
「オフライン?電力が足りてないのか?」
艦内の電力は半永久機関であるエーテルナノ発電によって賄っており、予備電源として恒星光発電も備えていたはずだ。
半永久機関は壊れる可能性もあるが、予備電源の恒星光発電が機能していないというのはどういうことなんだ。
恒星光も届かないような場所に不時着しているということか?
俺のコールドスリープが解けたのも電力不足が原因なのだろうか。
「とりあえずブリッジに向かってみるか……」
この分では管理AIであるメティスもスリープモードになっている可能性が高いが、緊急用水素発電機が生きていればシステムを起動することができるはずだ。
俺は冷凍保存カプセルの開閉ボタンを押し、身体を起こした。
カプセルに入る前に衣服を脱ぎ去っていたために少し肌寒い。
カプセルの隣のテーブルに綺麗に畳まれた軍服が置いてあったのでそれを着こむ。
おそらく俺が脱ぎ捨てた軍服をメティスが作業用ドローンを使って回収して、綺麗にクリーニングしておいてくれたものだろう。
俺が眠った直後は電力が足りていたことは間違いないな。
軍服の横にはホルスターに入ったレーザーガンとプラズマブレードが置かれていたのでそれも身につける。
いったい何が起こったのか全く分からない以上は、いつでも戦える準備はしておいたほうがいいだろう。
俺は冷凍保存ルームを出てブリッジを目指した。
友軍のコロニーがある惑星からはすでに数億光年は離れてしまっているだろうか。
しかし進路を変えるためのスラスターおよびワープするための次元跳躍装置が敵の攻撃によって破壊されてしまった今、船はランダムにワープを繰り返しながら光速に近い速度で宇宙の果てを目指すばかりだ。
こんな速度では船の外に出て資源を回収することもできない。
そして金属資源が無ければ船の修理はできない。
もはや進路軌道上に大き目のデブリや惑星などが無いことを祈ることしかできない。
もっとも、この船の問題はそれだけではないがな。
「腹減ったな……」
もう3日も何も口にしていない。
食料プラントが食料の生産をしなくなったのは10日前だ。
船員が俺以外全滅してスラスターの破壊された船で宇宙を彷徨うというこの上無い状況にまだ絶望する要素があったとは知らなかった。
宇宙戦艦という閉鎖された空間の中では、食べられるものは限られている。
何か月にも渡って続く戦闘の中で、毎日レトルトの料理ばかりが食卓に並ぶのは兵士の士気に関わってくる。
食には妥協するべきではないと指揮官連中が奮発して導入した最新式の食料プラントだった。
しかし戦争に行くのにそんなことを気にした罰だと言わんばかりに最新式の食料プラントはその脆弱性を爆発させた。
それも最悪のタイミングでだ。
もはや俺の生きる気力はゼロに近い。
「メティス、俺が生き残れる可能性はどのくらいある?」
試しにこの船に搭載されている管理AIに未来演算させてみた。
案外この近くに俺の知らない有人惑星が存在して、反重力バリアか何かで船を受け止めてくれる可能性もある。
そうなればあと少し辛抱するだけで助かることになる。
しかし俺のそんな希望的観測はすぐに打ち砕かれることとなった。
『ウィリアム中尉が生き残れる可能性は0.00000000000000000012パーセントです』
「ほとんどゼロじゃないか。ちなみにその僅かな可能性はなんだ?どうなれば俺は助かる?」
『人類が認識していない有人惑星が偶然船の進路軌道上に存在し、かつ亜光速で移動する超弩級戦艦を中の人員を殺さないように受け止めるだけの科学技術を有しており、さらに中尉の命を奪わずにいてくれるだけの親切心を持っていた場合です』
「なるほどわかった。生存は絶望的か」
『食料不足による時間的猶予もありますので、生存確率を少しでも高めるためにはコールドスリープを推奨します』
生きていれば飯が必要になるし、いつかくる絶望を生身で受け止めなければならない。
仮死状態になれば腹も減らないし、死ぬときの苦しみも味わわなくて済むか。
「わかった。これよりすべての権限をメティスに貸与する。あとは頼んだ」
『了解しました。おやすみなさい、中尉』
「ああ、おやすみ」
結局、運が悪いんだよな。
何も持っていないなりに必死になって軍で頑張って貧民の身分から20代のうちに中尉にまでなったっていうのに、こんな終わり方はあんまりだ。
願わくば、次の人生は金持ちの子供に生まれ変わりたい。
そしたら……きっと……。
「ん?」
体温が上がり、意識がはっきりとしてくる。
たしか俺は、壊れた戦艦で宇宙を彷徨っていたはずだ。
食料プラントが故障して飯もまともに食えずにいつまでも宇宙を彷徨うことに耐え切れず、自分から冷凍保存カプセルに入ってコールドスリープした。
あれから船はどうなったんだ?
時間的猶予を伸ばしたとしても、俺が生存できる可能性は限りなくゼロに近かったはずだ。
だが生きてコールドスリープから覚めたということはわずかばかりでも生存の可能性が出てきたということなのではないだろうか。
どちらにしても今の状況をメティスに確認してみることとしよう。
「メティス、状況を教えてくれ」
『艦内省エネモードのためオフライン状態』
「オフライン?電力が足りてないのか?」
艦内の電力は半永久機関であるエーテルナノ発電によって賄っており、予備電源として恒星光発電も備えていたはずだ。
半永久機関は壊れる可能性もあるが、予備電源の恒星光発電が機能していないというのはどういうことなんだ。
恒星光も届かないような場所に不時着しているということか?
俺のコールドスリープが解けたのも電力不足が原因なのだろうか。
「とりあえずブリッジに向かってみるか……」
この分では管理AIであるメティスもスリープモードになっている可能性が高いが、緊急用水素発電機が生きていればシステムを起動することができるはずだ。
俺は冷凍保存カプセルの開閉ボタンを押し、身体を起こした。
カプセルに入る前に衣服を脱ぎ去っていたために少し肌寒い。
カプセルの隣のテーブルに綺麗に畳まれた軍服が置いてあったのでそれを着こむ。
おそらく俺が脱ぎ捨てた軍服をメティスが作業用ドローンを使って回収して、綺麗にクリーニングしておいてくれたものだろう。
俺が眠った直後は電力が足りていたことは間違いないな。
軍服の横にはホルスターに入ったレーザーガンとプラズマブレードが置かれていたのでそれも身につける。
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