2 / 14
2.手動発電
しおりを挟む
艦内の電力は危険水域に達しているようで、ほとんど灯りも付いていない。
薄暗い中をレーザーガンのライトで照らしながら進む。
これだけ電力残量が少ないとなると、すでに艦は動いていないだろう。
艦内に何者かが侵入している可能性すらある。
「しかしまあ、今のところ誰か侵入している気配も特に無いな」
艦内は荒らされた様子もないし、物の配置も俺がコールドスリープに入る前と変わりない。
適度に力を抜き、適度に警戒しながらブリッジ目指して歩いていく。
この船は超弩級の戦艦だ。
艦の全長は1000メートルを優に超え、人工知能のサポートなしには動かせない。
元々の船員は200名ほど。
俺以外は全員戦闘機に乗って撃墜もしくはCICごと爆散したが、その人数でも十分にこの船を動かすことができていた。
少人数でも動かせる代わりに艦の機能のほとんどを管理AIに依存しているのが現代の宇宙戦艦なのだ。
つまり電力が底をついている現在、この艦はただの鉄くずと化している可能性が高い。
「ちっ、隔壁も開かないのか」
お目当てのブリッジに到着したのだが、この部屋はセキュリティの関係上電子ロックのかかった隔壁が存在している。
船にはもはや隔壁の電子ロックを外して開閉するだけの電力も残っていないようで、認識タグをコンソールに近づけても全く反応しない。
本来ならば首から下げたドッグタグの中のICチップに反応してパスワード認証が出るはずなのだが、コンソールはバックライトすらつかない。
これはダメだな。
確か手動で開けるためには、隔壁の横のパネルを開いてなんかするんだったな。
「といっても工具なんて持ってないからな」
壁のパネルはコインか何かで簡単に外せるようなネジ止めしかされていないのだが、そのコインすらも持っていない。
代わりになりそうなものもない。
仕方がないので俺はプラズマブレードを抜き、パネルを焼き切ることにした。
プラズマブレードはダガーナイフのような諸刃の刃物の形をしているが、その刀身には刃が全く付いていない。
電力供給が無い状態では切っ先で突き刺すくらいしか使えない武器だが、電力が供給されれば高温高密度のプラズマが発生してなんでも焼き切ることができる頼りになる装備だ。
幸いにもレーザーガンとプラズマブレードだけは発電設備が生きているときにフル充電されていたようで問題なく使うことができる。
俺はナックルガードに付いているトリガーを引き、高性能ナトリウムイオンバッテリーから電力を供給した。
刃の付いていない刀身の周りに光の刃が生み出され、空気を揺らす。
上昇気流を生み出すほどの熱がその15センチほどの刀身から発せられているのだ。
バッテリーがもったいないのでさっさと作業を終わらせてしまおう。
光の刃をそっと壁のパネルに触れさせるとジュっと薄いパネルが焼き切れ、切れ込みが入る。
ネジ止めがされている四隅に切れ込みを入れると、パネルが外れて床に転がった。
「よし、あとはどうするんだったかな」
戦闘訓練は好きだったが、正直こういった緊急時の艦内行動の訓練は退屈だったから適当に流していたんだよな。
こんなことになるならもっと真面目に訓練しておくんだったな。
「なんか発電機っぽいハンドルがあるな」
パネルを外した壁の中には手回し式のハンドルだけが存在していた。
今時珍しい手動の発電機だろうか。
これで発電して隔壁の電力を回復させろってか。
記憶をたどってもなんとなく正解っぽいので俺はハンドルを握る。
「ひたすら回すしかないのか……」
AIが宇宙戦艦を動かす時代に、手動発電機をシュコシュコするはめになるとはな。
俺は無言でハンドルを回す。
ジーコジーコとダイナモモーターが回る音だけがこだまする。
いつまで回せばいいのかと思って隔壁のコンソールを見れば充電中の電池マークが3割くらいまで溜まってきていた。
どうやらあれが満タンになれば隔壁を開け閉めするだけの電力が賄えるらしい。
俺はひたすらにシュコシュコとハンドルを回した。
15分くらい回しただろうか。
ついに電池マークが満タンになり、ピーという音がしてコンソールが起動する。
俺は急いでコンソールに認識タグを押し付け、16桁のパスワードを入力した。
「はぁ、やっと開いたか」
ウィンと小気味良い音を立てて開いた隔壁を通り抜け、ようやくブリッジに到着することができた。
「とりあえず、水素燃料の残量をチェックだな」
ブリッジのモニターも電力不足でほとんど起動していなかったが、非常用モニターで艦内のチェックをすることはなんとかまだできるようだ。
この非常用モニターの下にも隔壁のようなネジ止めされたパネルがあったのでこれが映らなかったらまたシュコシュコしなければならないところだった。
肝心の水素燃料は丸々残っていたのでひとまず安心する。
発電効率の上がった現代の技術を用いてもさすがに艦内の電力すべてを人力で作り出すことなんてできないからな。
いったいどれだけの間シュコシュコしなければならないのか分かったものじゃない。
電力が溜まる前に俺が餓死してしまう。
『緊急用水素発電機を作動』
1分ほどでブリッジのモニターがすべて起動する。
送電設備にも問題はないようだな。
これでメティスを起動することができる。
いったいこの艦に何があったのか、今どんな状況なのか。
メティスを起動すればなにかしらの情報を得ることができるだろう。
薄暗い中をレーザーガンのライトで照らしながら進む。
これだけ電力残量が少ないとなると、すでに艦は動いていないだろう。
艦内に何者かが侵入している可能性すらある。
「しかしまあ、今のところ誰か侵入している気配も特に無いな」
艦内は荒らされた様子もないし、物の配置も俺がコールドスリープに入る前と変わりない。
適度に力を抜き、適度に警戒しながらブリッジ目指して歩いていく。
この船は超弩級の戦艦だ。
艦の全長は1000メートルを優に超え、人工知能のサポートなしには動かせない。
元々の船員は200名ほど。
俺以外は全員戦闘機に乗って撃墜もしくはCICごと爆散したが、その人数でも十分にこの船を動かすことができていた。
少人数でも動かせる代わりに艦の機能のほとんどを管理AIに依存しているのが現代の宇宙戦艦なのだ。
つまり電力が底をついている現在、この艦はただの鉄くずと化している可能性が高い。
「ちっ、隔壁も開かないのか」
お目当てのブリッジに到着したのだが、この部屋はセキュリティの関係上電子ロックのかかった隔壁が存在している。
船にはもはや隔壁の電子ロックを外して開閉するだけの電力も残っていないようで、認識タグをコンソールに近づけても全く反応しない。
本来ならば首から下げたドッグタグの中のICチップに反応してパスワード認証が出るはずなのだが、コンソールはバックライトすらつかない。
これはダメだな。
確か手動で開けるためには、隔壁の横のパネルを開いてなんかするんだったな。
「といっても工具なんて持ってないからな」
壁のパネルはコインか何かで簡単に外せるようなネジ止めしかされていないのだが、そのコインすらも持っていない。
代わりになりそうなものもない。
仕方がないので俺はプラズマブレードを抜き、パネルを焼き切ることにした。
プラズマブレードはダガーナイフのような諸刃の刃物の形をしているが、その刀身には刃が全く付いていない。
電力供給が無い状態では切っ先で突き刺すくらいしか使えない武器だが、電力が供給されれば高温高密度のプラズマが発生してなんでも焼き切ることができる頼りになる装備だ。
幸いにもレーザーガンとプラズマブレードだけは発電設備が生きているときにフル充電されていたようで問題なく使うことができる。
俺はナックルガードに付いているトリガーを引き、高性能ナトリウムイオンバッテリーから電力を供給した。
刃の付いていない刀身の周りに光の刃が生み出され、空気を揺らす。
上昇気流を生み出すほどの熱がその15センチほどの刀身から発せられているのだ。
バッテリーがもったいないのでさっさと作業を終わらせてしまおう。
光の刃をそっと壁のパネルに触れさせるとジュっと薄いパネルが焼き切れ、切れ込みが入る。
ネジ止めがされている四隅に切れ込みを入れると、パネルが外れて床に転がった。
「よし、あとはどうするんだったかな」
戦闘訓練は好きだったが、正直こういった緊急時の艦内行動の訓練は退屈だったから適当に流していたんだよな。
こんなことになるならもっと真面目に訓練しておくんだったな。
「なんか発電機っぽいハンドルがあるな」
パネルを外した壁の中には手回し式のハンドルだけが存在していた。
今時珍しい手動の発電機だろうか。
これで発電して隔壁の電力を回復させろってか。
記憶をたどってもなんとなく正解っぽいので俺はハンドルを握る。
「ひたすら回すしかないのか……」
AIが宇宙戦艦を動かす時代に、手動発電機をシュコシュコするはめになるとはな。
俺は無言でハンドルを回す。
ジーコジーコとダイナモモーターが回る音だけがこだまする。
いつまで回せばいいのかと思って隔壁のコンソールを見れば充電中の電池マークが3割くらいまで溜まってきていた。
どうやらあれが満タンになれば隔壁を開け閉めするだけの電力が賄えるらしい。
俺はひたすらにシュコシュコとハンドルを回した。
15分くらい回しただろうか。
ついに電池マークが満タンになり、ピーという音がしてコンソールが起動する。
俺は急いでコンソールに認識タグを押し付け、16桁のパスワードを入力した。
「はぁ、やっと開いたか」
ウィンと小気味良い音を立てて開いた隔壁を通り抜け、ようやくブリッジに到着することができた。
「とりあえず、水素燃料の残量をチェックだな」
ブリッジのモニターも電力不足でほとんど起動していなかったが、非常用モニターで艦内のチェックをすることはなんとかまだできるようだ。
この非常用モニターの下にも隔壁のようなネジ止めされたパネルがあったのでこれが映らなかったらまたシュコシュコしなければならないところだった。
肝心の水素燃料は丸々残っていたのでひとまず安心する。
発電効率の上がった現代の技術を用いてもさすがに艦内の電力すべてを人力で作り出すことなんてできないからな。
いったいどれだけの間シュコシュコしなければならないのか分かったものじゃない。
電力が溜まる前に俺が餓死してしまう。
『緊急用水素発電機を作動』
1分ほどでブリッジのモニターがすべて起動する。
送電設備にも問題はないようだな。
これでメティスを起動することができる。
いったいこの艦に何があったのか、今どんな状況なのか。
メティスを起動すればなにかしらの情報を得ることができるだろう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
153
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる