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9.洗礼
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俺に声をかけてきたのは5人組の男たち。
全員が鍛えられた肉体をしており、貧民街のチンピラとはわけが違いそうだ。
別に銀貨の1枚や2枚は惜しくないが、ここで下手に出ればこういう輩はひっきりなしに出てくるだろう。
たとえ争いになったとしても、ここは毅然とした態度で断るべきだ。
「必要ない」
「おいおい、こっちは親切で言ってるっていうのにそういう態度はないんじゃねえのか」
「気に障ったのなら悪かった。だけど親切にしては謝礼が多すぎるだろう。誰でも断る」
「俺たちが冒険者のいろはを叩きこんでやろうって言っているんだ。銀貨1枚なら安いもんだぜ」
「たとえそれが適正な価格であったとしても、俺は断ると言っているんだ。それで話は終わりだろう。それ以上食い下がるのならばただの金目当ての恐喝とみなす」
「くそがっ、目上の人間に対する態度ってやつがなってねえ新入りだ」
「俺たちが教育してやるぜ」
教育とは笑わせてくれる。
軍に入ったばかりの頃を思い出すな。
軍属となり、強化プログラムを終了するとそれまでとは一線を画す力を個人が手にすることになる。
中には力を振るう快感に飲まれ、どんどん粗暴になっていく兵士というものもいるものだ。
そんな兵士の成れの果てがこの目の前にいるやつらのような目をした先輩兵士たちだった。
同じ強化プログラムを受けた兵士同士ならば、当然先に訓練を始めた先輩兵士のほうが個人の武力は優れている場合が多い。
軍に入りたての新兵のような自分より弱い人間をいたぶって従わせるのが何よりも楽しいという腐った目だ。
反吐が出る。
右手がついホルスターの銃に延びかけたが、さすがに殺すのはまずそうだ。
だいたいどこの星でも意思疎通のできる知的生命体を殺めるのは禁止されている。
この国はずいぶんと前時代的な統治体制をしているが、さすがに殺しはなんらかの罪に問われるだろう。
「ビビッて声も出ないか?」
「今なら一人につき銀貨5枚で許してやる。さっさと出せ」
兵士にはどんなときにも冷静さが求められるが、俺はもはや兵士ではない。
「誰が金なんて出すかバーカ。さっさと家帰れゴミ虫どもが」
「なんだとてめぇ!!」
「もう許しちゃおけねえぜ!!」
「殺す!!」
ここまで挑発しなければ手を出してこないとは、見かけ倒しの腰抜けどもが。
男たちは腰にぶら下げた剣やナイフを引き抜く。
どうやらさっきの一言で相当頭に血が上ったようだ。
こちらを殺す気の相手には正当防衛が成立すると思うのだが、この国の法律についてはまだ調査が足りていないために細かいところは分からない。
一応殺さないように気を付けるか。
男たちの身のこなしは手加減しても問題はなさそうな力量しか伝わってこない。
身体はずいぶんと鍛えているようだが、こいつらは基本的に魔物を相手にする専門家だ。
対人戦は素人に毛が2、3本生えた程度だと推察できる。
5人もいるのにただ俺の周りを取り囲むだけで立ち回りがいまいち上手くないのもマイナスポイントだ。
これでは魔物を相手にした戦いもそれほど上手くはいかないだろう。
冒険者の中でも、こいつらの実力はそれほど高くないのかもしれない。
さもなければこんなところで新人を相手に小銭をせびってないしな。
「てめぇ、絶対殺すからな!!」
「殺す殺すうるさいんだよ。さっさと殺してみろよ」
「この野郎!!!」
男たちはほとんど同時に距離をつめてきた。
5本の刃物が同時に迫る。
全員が全員大振り。
タイミングも馬鹿正直に同時。
これでは避けてくださいお願いしますと言っているようなものだ。
俺は正面の長剣を振り下ろす男の懐に入り込み、みぞおちに重いボディブローを入れてやる。
いい手ごたえだ。
これは悶絶する。
「ぐはっ」
「サッチ!てめえ、やりやがったな」
「先にやってきたのはお前たちだろうが。俺は拳、お前たちは刃物。どっちがやりやがってだよ」
「うるせぇ!!」
また性懲りもなく囲んで同時攻撃が来る。
ボディブローが入ったサッチってやつはまだ悶絶しているから今度は4人だ。
俺はまたひとり、狙いを定めてボディブローを叩きこむ。
「ぐぁっ」
「ボブ!!くそがっ、てめえ絶対許さね…ぶはっ」
絶対に許さないと言おうとしたやつの鼻面に右ストレート。
「殺してや…ぶへっ」
殺してやると言おうとしたやつの顔面にも右ストレート。
「お、俺たちが悪か…ごほっ」
謝ろうとしたやつにも鳩尾ブロー。
瞬く間に男たちは全員床で転がってうめき声をあげるだけになった。
一応全員に馬乗りになって3発ずつ顔面パンチを追加しておく。
「ま、まっで…ぎゃっ」
「やめ…ぶへっ」
「た、たすけ…べはっ」
「ごめ…んぎゃっ」
「おかあさ…ばへっ」
痛みからか衝撃からか全員が白目を剥いて気絶する。
これだけやっておけば逆恨みすることもないだろう。
痛みの記憶をプライドが上回ったときに逆恨みというのが起きる。
こういうときはプライドもなにもあったものではないほどに痛めつけておかねばならないのだ。
実際先輩兵士もそうしたらおとなしくなった。
同じような人種であるこいつらももう俺に絡もうとは思わないだろう。
問題は俺の行動がギルドの規則的にはどうなのかというところだな。
ここはギルドの中なだけあって、目撃者も多い。
一度伺いを立てるべきだろう。
俺は今さっき俺の登録を担当した受付嬢のもとへ向かう。
「今のを見ていただろうか。俺の行動は何かギルドの規則に違反するところはなかったかな」
「え、あ、はい。大丈夫です。ギルド員同士の問題にはギルドはあまり介入しないんですよ。ですが、ギルド員以外とのトラブルは場合によってはペナルティがあることもあるのでお気をつけください」
「わかった。ありがとう」
どうやらギルドは登録者同士ならば喧嘩は勝手にやってくれというスタンスをとっているらしい。
俺は少し安心して当初の目的であった依頼をざっと眺めて携帯端末を使って写真を撮り、冒険者ギルドを出た。
全員が鍛えられた肉体をしており、貧民街のチンピラとはわけが違いそうだ。
別に銀貨の1枚や2枚は惜しくないが、ここで下手に出ればこういう輩はひっきりなしに出てくるだろう。
たとえ争いになったとしても、ここは毅然とした態度で断るべきだ。
「必要ない」
「おいおい、こっちは親切で言ってるっていうのにそういう態度はないんじゃねえのか」
「気に障ったのなら悪かった。だけど親切にしては謝礼が多すぎるだろう。誰でも断る」
「俺たちが冒険者のいろはを叩きこんでやろうって言っているんだ。銀貨1枚なら安いもんだぜ」
「たとえそれが適正な価格であったとしても、俺は断ると言っているんだ。それで話は終わりだろう。それ以上食い下がるのならばただの金目当ての恐喝とみなす」
「くそがっ、目上の人間に対する態度ってやつがなってねえ新入りだ」
「俺たちが教育してやるぜ」
教育とは笑わせてくれる。
軍に入ったばかりの頃を思い出すな。
軍属となり、強化プログラムを終了するとそれまでとは一線を画す力を個人が手にすることになる。
中には力を振るう快感に飲まれ、どんどん粗暴になっていく兵士というものもいるものだ。
そんな兵士の成れの果てがこの目の前にいるやつらのような目をした先輩兵士たちだった。
同じ強化プログラムを受けた兵士同士ならば、当然先に訓練を始めた先輩兵士のほうが個人の武力は優れている場合が多い。
軍に入りたての新兵のような自分より弱い人間をいたぶって従わせるのが何よりも楽しいという腐った目だ。
反吐が出る。
右手がついホルスターの銃に延びかけたが、さすがに殺すのはまずそうだ。
だいたいどこの星でも意思疎通のできる知的生命体を殺めるのは禁止されている。
この国はずいぶんと前時代的な統治体制をしているが、さすがに殺しはなんらかの罪に問われるだろう。
「ビビッて声も出ないか?」
「今なら一人につき銀貨5枚で許してやる。さっさと出せ」
兵士にはどんなときにも冷静さが求められるが、俺はもはや兵士ではない。
「誰が金なんて出すかバーカ。さっさと家帰れゴミ虫どもが」
「なんだとてめぇ!!」
「もう許しちゃおけねえぜ!!」
「殺す!!」
ここまで挑発しなければ手を出してこないとは、見かけ倒しの腰抜けどもが。
男たちは腰にぶら下げた剣やナイフを引き抜く。
どうやらさっきの一言で相当頭に血が上ったようだ。
こちらを殺す気の相手には正当防衛が成立すると思うのだが、この国の法律についてはまだ調査が足りていないために細かいところは分からない。
一応殺さないように気を付けるか。
男たちの身のこなしは手加減しても問題はなさそうな力量しか伝わってこない。
身体はずいぶんと鍛えているようだが、こいつらは基本的に魔物を相手にする専門家だ。
対人戦は素人に毛が2、3本生えた程度だと推察できる。
5人もいるのにただ俺の周りを取り囲むだけで立ち回りがいまいち上手くないのもマイナスポイントだ。
これでは魔物を相手にした戦いもそれほど上手くはいかないだろう。
冒険者の中でも、こいつらの実力はそれほど高くないのかもしれない。
さもなければこんなところで新人を相手に小銭をせびってないしな。
「てめぇ、絶対殺すからな!!」
「殺す殺すうるさいんだよ。さっさと殺してみろよ」
「この野郎!!!」
男たちはほとんど同時に距離をつめてきた。
5本の刃物が同時に迫る。
全員が全員大振り。
タイミングも馬鹿正直に同時。
これでは避けてくださいお願いしますと言っているようなものだ。
俺は正面の長剣を振り下ろす男の懐に入り込み、みぞおちに重いボディブローを入れてやる。
いい手ごたえだ。
これは悶絶する。
「ぐはっ」
「サッチ!てめえ、やりやがったな」
「先にやってきたのはお前たちだろうが。俺は拳、お前たちは刃物。どっちがやりやがってだよ」
「うるせぇ!!」
また性懲りもなく囲んで同時攻撃が来る。
ボディブローが入ったサッチってやつはまだ悶絶しているから今度は4人だ。
俺はまたひとり、狙いを定めてボディブローを叩きこむ。
「ぐぁっ」
「ボブ!!くそがっ、てめえ絶対許さね…ぶはっ」
絶対に許さないと言おうとしたやつの鼻面に右ストレート。
「殺してや…ぶへっ」
殺してやると言おうとしたやつの顔面にも右ストレート。
「お、俺たちが悪か…ごほっ」
謝ろうとしたやつにも鳩尾ブロー。
瞬く間に男たちは全員床で転がってうめき声をあげるだけになった。
一応全員に馬乗りになって3発ずつ顔面パンチを追加しておく。
「ま、まっで…ぎゃっ」
「やめ…ぶへっ」
「た、たすけ…べはっ」
「ごめ…んぎゃっ」
「おかあさ…ばへっ」
痛みからか衝撃からか全員が白目を剥いて気絶する。
これだけやっておけば逆恨みすることもないだろう。
痛みの記憶をプライドが上回ったときに逆恨みというのが起きる。
こういうときはプライドもなにもあったものではないほどに痛めつけておかねばならないのだ。
実際先輩兵士もそうしたらおとなしくなった。
同じような人種であるこいつらももう俺に絡もうとは思わないだろう。
問題は俺の行動がギルドの規則的にはどうなのかというところだな。
ここはギルドの中なだけあって、目撃者も多い。
一度伺いを立てるべきだろう。
俺は今さっき俺の登録を担当した受付嬢のもとへ向かう。
「今のを見ていただろうか。俺の行動は何かギルドの規則に違反するところはなかったかな」
「え、あ、はい。大丈夫です。ギルド員同士の問題にはギルドはあまり介入しないんですよ。ですが、ギルド員以外とのトラブルは場合によってはペナルティがあることもあるのでお気をつけください」
「わかった。ありがとう」
どうやらギルドは登録者同士ならば喧嘩は勝手にやってくれというスタンスをとっているらしい。
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