宇宙戦艦でコールドスリープしたけど目が覚めたら異世界だった

兎屋亀吉

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10.魔道具

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 冒険者ギルドの次は買い物だな。
 この世界の技術を調査するには、ここで作られた品物を実際に買ってみるのが一番だ。
 ドローンの調査ではなかなかに気になるワードが出ていたな。
 この世界には魔道具というものがあるようだ。
 魔というのはおそらく魔法のことだろう。
 どういう理屈かはわからないが、手からエネルギーボールを放ったり身体能力を一時的に強化したりする不思議な力がこの世界には存在している。
 それらの技術を盛り込んだ道具なのだとしたら手に入れて帰りたい。
 持ち帰ってメティスに分析してもらえば、原理が解明できるかもしれないし同じようなものが作れる可能性もある。
 古いファンタジー小説などで読んだようなアイテムが作れるのだとしたら楽しみだ。
 魔道具屋があるのは冒険者ギルドからさらに町の中心に向かって20分ほど歩いた場所だ。
 どうやら魔道具というのは大量生産できるようなものではなく、1個1個職人が手作りしているらしい。
 それゆえ誰でも使えるように安価なものではなく、一部の金持ちが使うような高価な品物だ。
 それを売る店も町の中心に近い一等地にある。
 調査で分かっていることだが、この町は中心部に近づけば近づくほど住んでいる人間が裕福になっていく。
 町の一番外側には貧民街をはじめとした貧困層の住むエリアが広がり、中心には領主の館がある。
 まあ貧乏人と金持ちが近くにいてもいいことなんて起きるわけがないから当然だ。
 これから行くのはそんな富のピラミッドの頂点付近に存在している人間たちが出入りする店だ。
 今もみすぼらしい恰好をしているつもりはないが、おそらくノーネクタイでは入れないと思うので一応ネクタイくらいは絞めておくか。
 この世界のフォーマルな恰好をドローンに調査させておいたのだが、貴族や商人などの正装では男はアスコットタイのような少し華美なネクタイだかスカーフだかで首元を飾るのがポピュラーなようだ。
 俺はドレスコードがある店に入るとき用に用意してあったワインレッドのアスコットタイを取り出し、店の前で絞めた。
 シャツやジャケットはそれほど上質な生地は使っていないが、このネクタイだけは上質なシルクが使われている。
 最低限店で買い物をするだけの資格は満たしているはずだ。
 バックパックは少し場違いなので手に持ち、俺は店の中に入った。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

 入ってすぐ出迎えたのはおそらく店主であろう頭の禿げあがった中年の男だった。
 決して情けない禿げ方ではなく、残った髪を短く刈り上げ髭を生やしたなかなかのナイスミドルだ。
 落ち着いた店内とピシッとしたスーツ姿がよく似合っている。
 店内の雰囲気を見た感じでは、ネクタイを絞めたのは正解だったようだな。
 
「お荷物をお預かりします」

「ああ」

 下働きなのか、年若い男が俺の手に持ったバックパックを受け取る。
 武器類が入った荷物は手放したくはなかったが、拒否するのも変に思われるだろう。
 幸いにも荷物を持った下働きはそれをどこにも置かず、俺のあとを付いてくるようなのでそれほど問題はない。
 
「とりあえず、どんな魔道具があるのかリストのようなものはないだろうか」

「それでしたらこちらに目録がございます。どうぞご覧ください」

「ああ」

 俺は男が差し出した商品目録に目を通す。
 目録は3ページ、商品数は200を超えていた。

「ずいぶんと種類が多い」

「ええ、うちは品ぞろえでは王国一を謳っております」

 本当かどうかは怪しいが、まあ品ぞろえには自信があるということだろう。
 とりあえず、全部画像に残しておくか。
 俺はリストを携帯端末のカメラで写真に収める。

「これ、実物はどこにある?」

「ここからここまでの品に関しましては店頭にございます。それ以外は倉庫に保管してあります」

「じゃあこれとこれ、これを出してくれ」

「かしこまりました」

 俺は水を出すという魔道具と火を出すという魔道具、灯りを灯すという魔道具の実物を出してくれるように頼む。
 ナイスミドルの店主がバックヤードに実物を取りに行っている間に、俺は店頭の商品を見ているふりをして写真に収めていく。
 画像データは多ければ多いほどいい。
 メティスのようなAIは学習するデータが多ければ多いほど正確な演算データを算出することができる。
 この世界の情報を少しでも多く集めるのがメティスの性能アップにつながるのだ。

「お待たせしました」

 画像データを取り終わり、本当に商品を眺めているとナイスミドルが商品を持って帰ってきた。
 その手に抱えているのは俺が注文した3つの魔道具。
 どれもそれほど複雑な構造をしているわけではなさそうだ。
 一つは円筒状のものに金属塗料のようなもので独特の模様が描かれたもの。
 もう一つは丸いディスク状のものに同じような模様が描かれたもの。
 最後の一つは丸いガラス玉の中に同様の模様が封じ込められたもの。
 なかなかにデザイン性があっておしゃれな印象だ。

「一つずつご説明いたします。こちらが水を生み出す魔道具、こちらが火を生み出す魔道具、こちらが光を生み出す魔道具にございます。すべて魔石で動くようになっておりまして、この窪みに小魔石を成型したものをはめ込んでいただきますと、このように作動します」

 円筒形が水を出す魔道具、ディスク型が火を出す魔道具、ガラス玉が灯りの魔道具らしい。
 店主が丸く形成された魔石と呼ばれるエネルギーストーンを灯りの魔道具のくぼみにはめ込むと、ガラス玉が光りだした。
 なるほど、これが魔道具か。
 電気も使わずに光を生み出すとはな。
 科学の未熟な世界と思って侮っていると痛い目にあいそうだ。


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