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11.エーテル
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魔道具屋では結局水と火と光を出す魔道具を購入した。
3つしか買っていないのに金貨が必要となった。
これほどの価格では貧乏人は魔道具を普段から使うことなど不可能だろう。
かまどと水瓶で生活しているのも納得だ。
金のある一部の人間は魔道具をふんだんに使った文明的な生活を送り、多くの人間は昔ながらの原始的な生活を送っているのがこの世界の現状なのかもしれない。
そのうち低コストで大量生産できるようになれば魔道具の価格も下がり、多くの人々が手にすることになるだろう。
そのへんの発展に手を加える気はない。
あまりテクノロジーの進歩が早まると、俺の持つ宇宙戦艦の優位性が失われてしまうからな。
人間はブレイクスルーとなる発見をするとすぐに発展してしまう。
そしてそのブレイクスルーの間隔は新たな技術を手に入れるごとに短くなっていく性質を持っている。
更にはこの世界には魔法などという未知の要素が存在している。
うかつに俺の持つ知識をひけらかせば、この星の技術はどうなるかわかったものではない。
一部の人間が知識やテクノロジーを独占している現状は俺にとっても都合がいい。
王侯貴族や豪族がふんぞり返ってテクノロジーの恩恵を享受しているうちにせいぜいこちらはこの世界の技術を吸収させてもらおう。
俺は買ったばかりの3つの魔道具をバックパックに仕舞うと町の外側に向かって歩き始めた。
買い物はこれで済んだ。
最後は町の外に出て、魔物を相手に軽く実戦訓練をして今日の偵察は終了だ。
宇宙での戦闘は基本的に戦闘機や戦艦による撃ち合いなので生身での戦闘というのは久しぶりだ。
この世界での戦いは生身での戦闘のほうが多いだろう。
たまには実戦訓練をして感覚を研ぎ澄ましておかなければならない。
30分ほど歩いたところで外壁に到着する。
外壁には大きな門があり、そこには門番が立っていた。
外から来る人間には身分証のチェックなどを行っていたが、中からは自由に出られるようだ。
「おい、今から外に行くのか?」
外に出るのは自由だと思ったので門を出ようとしたのだが、なぜだか門番は外に出ていく俺のことを不思議そうに見て声をかけてきた。
「外に魔物を討伐に行こうと思うのだが、なにか変なことが?」
「いや、今からってもう夕方だぞ。日が暮れるまで鐘一つくらいだ。明日にしたらどうだ?」
「ああ、時間のことか。今日は慣らし程度だからすぐに戻る」
「そうか。まあそれならいいが。気を付けていけよ」
「ああ、ありがとう。あんたも仕事頑張ってくれ」
なかなかに親切な人だ。
彼に心配をかけないためにも今日は本当にすぐに戻るか。
本当は夜まで狩ってからこっそり外壁を超えて帰るかドローン用に作った入出口から直接船に戻るつもりだったがあまり不自然な行動はとるべきではない。
この門番にはおそらく顔を覚えられてしまっただろうし、出ていった人物が帰ってこなかったら不審に思うかもしれない。
戦闘訓練はVRシュミレーターでもできないことはないし、実戦データを少しだけとって帰るとしよう。
俺は踏み固められただけの道とも呼べない原始的な道を外れ、森へと踏み入る。
「エーテルジェネレーター起動」
音声入力に反応して体内のジェネレーターが起動し、エーテルを生成し始める。
エーテルという物質の発見は、人類文明を次の段階へと前進させるほどの発見だ。
この物質は無限の可能性を秘めていた。
俺は科学者ではないのでエーテルがいったいなんなのか詳しくは知らないが、いわく生者と死者を分かつ物質だという。
それは生命の根源。
なぜ人間というアミノ酸の集合体が動き、息をし、思考するのか。
それを少しだけ解き明かす物質なのだという。
いわば生き物を生き物たらしめるためのエネルギー、それがエーテルなのだ。
それの発見と研究が軍事面ではどのような変化をもたらしたのか。
それが俺の身体に埋め込まれたエーテルジェネレーターだ。
人間の身体の一部を機械に変えるいわゆるサイボーグ化という技術はすでにあった。
だが、それらの機械部を動かすにはどうしても電力を必要としていた。
それは体内に注入するナノマシンにおいても同じだ。
無機物を人体に一体化させ、動かすためには人間を動かしているものとは別種のエネルギーが必要だった。
しかしエーテルの発見により、全く別のアプローチが可能となった。
それがエーテルをエネルギー源とするナノマシンによる肉体の強化だ。
これは生身の肉体と非常に親和性が高かった。
拒絶反応はゼロに近く、デメリットもほとんどない。
そうして長い研究の末に生まれたのが、軍用強化プログラムとその被験者である強化兵士だ。
まあその是非をめぐって宇宙戦争が勃発してしまったのだから俺にとっては便利だけど素直にはありがたがれない複雑な存在だ。
宇宙戦艦のメイン電源もエーテルを使用しているので依存度は高い。
この身体に埋め込まれたエーテルジェネレーターも一度使って戦えばもはやこれなしには不安になるほどに頼りになる存在だ。
「すー、はー」
軽く息を吸い、ゆっくりと吐き出すとそれだけで全身のナノマシンがエーテルを吸って活性化していくのがわかる。
まるで今まで耳や目を手で覆っていたかのように感覚が広がっていく。
遠くで木の葉が地面に落ちる音すら知覚することができそうなほどに研ぎ澄まされた感覚だ。
感覚が強化されただけではなく、身体能力も大幅に強化されている。
強化兵士の100メートル平均タイムは4秒台だ。
生身の人間には決して超えることのできない壁をテクノロジーの力で強制的に超えてしまったのが俺たち強化兵士なのだ。
まあ倫理的にはどうなのかという話だが少なくとも俺自身は望んで強化プログラムを受けたからそれほど気にはしていない。
異世界に来てしまった今となってはこれほど頼りになる身体はないしな。
3つしか買っていないのに金貨が必要となった。
これほどの価格では貧乏人は魔道具を普段から使うことなど不可能だろう。
かまどと水瓶で生活しているのも納得だ。
金のある一部の人間は魔道具をふんだんに使った文明的な生活を送り、多くの人間は昔ながらの原始的な生活を送っているのがこの世界の現状なのかもしれない。
そのうち低コストで大量生産できるようになれば魔道具の価格も下がり、多くの人々が手にすることになるだろう。
そのへんの発展に手を加える気はない。
あまりテクノロジーの進歩が早まると、俺の持つ宇宙戦艦の優位性が失われてしまうからな。
人間はブレイクスルーとなる発見をするとすぐに発展してしまう。
そしてそのブレイクスルーの間隔は新たな技術を手に入れるごとに短くなっていく性質を持っている。
更にはこの世界には魔法などという未知の要素が存在している。
うかつに俺の持つ知識をひけらかせば、この星の技術はどうなるかわかったものではない。
一部の人間が知識やテクノロジーを独占している現状は俺にとっても都合がいい。
王侯貴族や豪族がふんぞり返ってテクノロジーの恩恵を享受しているうちにせいぜいこちらはこの世界の技術を吸収させてもらおう。
俺は買ったばかりの3つの魔道具をバックパックに仕舞うと町の外側に向かって歩き始めた。
買い物はこれで済んだ。
最後は町の外に出て、魔物を相手に軽く実戦訓練をして今日の偵察は終了だ。
宇宙での戦闘は基本的に戦闘機や戦艦による撃ち合いなので生身での戦闘というのは久しぶりだ。
この世界での戦いは生身での戦闘のほうが多いだろう。
たまには実戦訓練をして感覚を研ぎ澄ましておかなければならない。
30分ほど歩いたところで外壁に到着する。
外壁には大きな門があり、そこには門番が立っていた。
外から来る人間には身分証のチェックなどを行っていたが、中からは自由に出られるようだ。
「おい、今から外に行くのか?」
外に出るのは自由だと思ったので門を出ようとしたのだが、なぜだか門番は外に出ていく俺のことを不思議そうに見て声をかけてきた。
「外に魔物を討伐に行こうと思うのだが、なにか変なことが?」
「いや、今からってもう夕方だぞ。日が暮れるまで鐘一つくらいだ。明日にしたらどうだ?」
「ああ、時間のことか。今日は慣らし程度だからすぐに戻る」
「そうか。まあそれならいいが。気を付けていけよ」
「ああ、ありがとう。あんたも仕事頑張ってくれ」
なかなかに親切な人だ。
彼に心配をかけないためにも今日は本当にすぐに戻るか。
本当は夜まで狩ってからこっそり外壁を超えて帰るかドローン用に作った入出口から直接船に戻るつもりだったがあまり不自然な行動はとるべきではない。
この門番にはおそらく顔を覚えられてしまっただろうし、出ていった人物が帰ってこなかったら不審に思うかもしれない。
戦闘訓練はVRシュミレーターでもできないことはないし、実戦データを少しだけとって帰るとしよう。
俺は踏み固められただけの道とも呼べない原始的な道を外れ、森へと踏み入る。
「エーテルジェネレーター起動」
音声入力に反応して体内のジェネレーターが起動し、エーテルを生成し始める。
エーテルという物質の発見は、人類文明を次の段階へと前進させるほどの発見だ。
この物質は無限の可能性を秘めていた。
俺は科学者ではないのでエーテルがいったいなんなのか詳しくは知らないが、いわく生者と死者を分かつ物質だという。
それは生命の根源。
なぜ人間というアミノ酸の集合体が動き、息をし、思考するのか。
それを少しだけ解き明かす物質なのだという。
いわば生き物を生き物たらしめるためのエネルギー、それがエーテルなのだ。
それの発見と研究が軍事面ではどのような変化をもたらしたのか。
それが俺の身体に埋め込まれたエーテルジェネレーターだ。
人間の身体の一部を機械に変えるいわゆるサイボーグ化という技術はすでにあった。
だが、それらの機械部を動かすにはどうしても電力を必要としていた。
それは体内に注入するナノマシンにおいても同じだ。
無機物を人体に一体化させ、動かすためには人間を動かしているものとは別種のエネルギーが必要だった。
しかしエーテルの発見により、全く別のアプローチが可能となった。
それがエーテルをエネルギー源とするナノマシンによる肉体の強化だ。
これは生身の肉体と非常に親和性が高かった。
拒絶反応はゼロに近く、デメリットもほとんどない。
そうして長い研究の末に生まれたのが、軍用強化プログラムとその被験者である強化兵士だ。
まあその是非をめぐって宇宙戦争が勃発してしまったのだから俺にとっては便利だけど素直にはありがたがれない複雑な存在だ。
宇宙戦艦のメイン電源もエーテルを使用しているので依存度は高い。
この身体に埋め込まれたエーテルジェネレーターも一度使って戦えばもはやこれなしには不安になるほどに頼りになる存在だ。
「すー、はー」
軽く息を吸い、ゆっくりと吐き出すとそれだけで全身のナノマシンがエーテルを吸って活性化していくのがわかる。
まるで今まで耳や目を手で覆っていたかのように感覚が広がっていく。
遠くで木の葉が地面に落ちる音すら知覚することができそうなほどに研ぎ澄まされた感覚だ。
感覚が強化されただけではなく、身体能力も大幅に強化されている。
強化兵士の100メートル平均タイムは4秒台だ。
生身の人間には決して超えることのできない壁をテクノロジーの力で強制的に超えてしまったのが俺たち強化兵士なのだ。
まあ倫理的にはどうなのかという話だが少なくとも俺自身は望んで強化プログラムを受けたからそれほど気にはしていない。
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