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20.銃の難点
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身分証をもらった後、ギルドについて軽く説明を受けて俺たちは晴れて冒険者となった。
ギルドについての説明も3つくらいのものだった。
1つ目は冒険者ギルドの身分証の使用範囲のこと。
冒険者ギルドは世界中に加盟国がある大きな組織だが、当然加盟していない閉鎖的な国も存在している。
そういった国では冒険者としての身分にはなんの信用もなく、身分証としての効力を持たないとのこと。
冒険者ギルドの身分証は情報を読み取るのにも魔道具が必要な特別なものだから、その読み取り用の魔道具もギルド未加盟国には無い。
身分証がただの指輪になってしまうわけだ。
2つ目は冒険者ランクについて。
冒険者ランクは冒険者の総合的な能力をギルドの基準によって評価した7段階の格付けだ。
最初は皆一様にFから始まり、E、D、C、B、Aと上がり、最終的にSとなる。
評価基準は主に魔力値だが、魔力値は自己申告なので正確ではない。
だからギルドは納品された魔獣の素材の売上高などからも総合的に判断して自己申告の魔力値が正しいのかを判断するそうだ。
なんだかやろうと思えば金の力で強い魔獣を他人に狩らせてランクを上げられそうなシステムだ。
だが冒険者ギルドがそんなにゆるい組織とは思えない。
ちゃんとしていれば誰でも登録できるというFランクの冒険者などに貴重な魔道具や鑑定スキルを持った人間を使うのは不可能だが、高ランクになるまでには一度本当の魔力値を測られるのかもしれない。
そんなことは今から気にすることでもないかもしれないけどな。
3つ目は冒険者を個人的に雇うことのできる依頼というシステムについてだ。
俺は異世界で冒険者ギルドといえば依頼だと思っていたのだが、この世界の冒険者ギルドではそれほど重要なシステムではない。
ただの冒険者の副業みたいなものだ。
ランクの査定にも全く関係はない。
まあそういう副業もあるからよかったら依頼もちらっと見て行ってくらいの話だった。
どうやらこの世界の冒険者は、盗賊退治なども副業でしかやらないような職業らしい。
完全に魔獣ハンターって感じだな。
だからこそただひたすらに魔獣を狩って魔力値を上げることができるのかもしれないが。
俺も銃が完成した今、魔獣を狩るのは楽しみだ。
腹に響く大きな発砲音と共に12.7ミリの弾が音を置き去りにして飛び、衝撃で分身が消えた。
もう一人の分身の覗く望遠鏡には、魔力値70を超える大きなイノシシがゆっくりと倒れる様が映っていた。
すぐに望遠鏡をしまい、走ってイノシシに近づく。
本体だったら完璧に仕留めたか確認してから近づいたところだが、今はとにかく時間がない。
「ちっ、もう来たか」
問題があったのは銃声だ。
魔獣のうろつく森の中で大きな音を出すということは普通の人であれば命取りになる行為だ。
獰猛な肉食動物の少ない日本の森では、多少鉄砲で狩りをしたところで獣の方から集まってくるなんていうことはないだろう。
しかしここの生態系はちょっとぶっ飛んでいる。
大きな音を立てようものなら腹を空かせた肉食の魔獣がすぐさま寄ってきてしまうのだ。
ザザザッと草を蹴る音が聞こえてくる。
分身が消されるまで猶予はわずかだ。
俺はイノシシの生死も確認せずにとりあえずアイテムボックスに放り込む。
アイテムボックスは生き物を入れることはできないから、入ったということは死んでいたのだろう。
なんとか間に合った。
四方八方から飛び掛ってくる肉食魔獣を一瞥し、俺は分身を消した。
「はぁ、危なかったな」
本体は宿のベッドで横になっていただけだというのに、心臓がバクバクいっている。
死なないと分かっていても四方八方から肉食魔獣に飛び掛られるのは恐怖を感じずにはいられない。
よだれを垂らして牙をむき出しにする肉食魔獣の獰猛な面が夜中にフラッシュバックしてしまいそうだ。
まあどいつもこいつも魔力値は70か80くらいで、あの化け物鹿とは比べるまでもない雑魚なんだがな。
おかげでトラウマは更新されずに済んだ。
まだ俺の中ではあの鹿が虎を惨殺するシーンがベストオブトラウマだ。
「あ、イズミさん。おかえりなさい、でいいんですかね」
「ああ、ただいま」
俺はずっとここにいたのだが、分身を使って森に狩りに行って帰ってきたのも間違いではない。
今日は俺が分身を2人とも使っていたのでジルタは個人練習だった。
もう今日は魔力値70のイノシシを狩って銃の検証も済んだし、分身は2人も必要ない。
俺は分身を1人出し、ジルタの稽古を再会する。
こっちはこっちでやることが無いわけでもないので分身を1人出す。
分身の身体では別室で銃の分解整備を行い、本体は今日の検証のひとり反省会をする。
「まずは、音だよな。銃声がうるさすぎる。森の中では使いづらい」
細かい技術的な改善点なども箇条書きにしてどんどん書いていく。
銃の改善点はこのくらいでいいとして、他にもあれがあったらいいとかこれがあったら便利とかのアイディアを書き出していく。
「本当言ったら分身がもう1人欲しいんだけどな。そろそろスキル成長してくれんものか」
アンチマテリアルライフルの飛距離は1000メートルどころのものではない。
森の中で2、300メートルの距離を狙撃するのはもったいない。
だが分身は観測主としての役割も持たせているために、離れすぎると獲物を回収する前に肉食魔獣かなにかに横取りされてしまうのだ。
撃ったらせいぜい1分以内で駆けつけられる範囲で待機していなければならない。
観測主の役割を果たしてから獲物の元に駆けつけるにはこれ以上距離を離せないだろう。
いくら身体能力が上がって短距離走のタイムが縮まったところで、1キロも離れていれば足場の悪い森の中ではすぐに駆けつけることはできないからな。
まあそれほどの距離は射線が通らないということもあるのだが。
しかし水場の近くなどならもう少し距離を離しても狙撃できそうではある。
観測主の役割と獲物の回収の役割を別の分身に分けることができれば一番いいのだがな。
「もう少し常に固有スキルを使うようにしてみるか。本体は寝転がったままで分身で身の回りの世話をするとかな。ダメ人間になりそうだ……」
元々ダメ人間だからこんな名前の固有スキルが発現したんだろうがな。
ギルドについての説明も3つくらいのものだった。
1つ目は冒険者ギルドの身分証の使用範囲のこと。
冒険者ギルドは世界中に加盟国がある大きな組織だが、当然加盟していない閉鎖的な国も存在している。
そういった国では冒険者としての身分にはなんの信用もなく、身分証としての効力を持たないとのこと。
冒険者ギルドの身分証は情報を読み取るのにも魔道具が必要な特別なものだから、その読み取り用の魔道具もギルド未加盟国には無い。
身分証がただの指輪になってしまうわけだ。
2つ目は冒険者ランクについて。
冒険者ランクは冒険者の総合的な能力をギルドの基準によって評価した7段階の格付けだ。
最初は皆一様にFから始まり、E、D、C、B、Aと上がり、最終的にSとなる。
評価基準は主に魔力値だが、魔力値は自己申告なので正確ではない。
だからギルドは納品された魔獣の素材の売上高などからも総合的に判断して自己申告の魔力値が正しいのかを判断するそうだ。
なんだかやろうと思えば金の力で強い魔獣を他人に狩らせてランクを上げられそうなシステムだ。
だが冒険者ギルドがそんなにゆるい組織とは思えない。
ちゃんとしていれば誰でも登録できるというFランクの冒険者などに貴重な魔道具や鑑定スキルを持った人間を使うのは不可能だが、高ランクになるまでには一度本当の魔力値を測られるのかもしれない。
そんなことは今から気にすることでもないかもしれないけどな。
3つ目は冒険者を個人的に雇うことのできる依頼というシステムについてだ。
俺は異世界で冒険者ギルドといえば依頼だと思っていたのだが、この世界の冒険者ギルドではそれほど重要なシステムではない。
ただの冒険者の副業みたいなものだ。
ランクの査定にも全く関係はない。
まあそういう副業もあるからよかったら依頼もちらっと見て行ってくらいの話だった。
どうやらこの世界の冒険者は、盗賊退治なども副業でしかやらないような職業らしい。
完全に魔獣ハンターって感じだな。
だからこそただひたすらに魔獣を狩って魔力値を上げることができるのかもしれないが。
俺も銃が完成した今、魔獣を狩るのは楽しみだ。
腹に響く大きな発砲音と共に12.7ミリの弾が音を置き去りにして飛び、衝撃で分身が消えた。
もう一人の分身の覗く望遠鏡には、魔力値70を超える大きなイノシシがゆっくりと倒れる様が映っていた。
すぐに望遠鏡をしまい、走ってイノシシに近づく。
本体だったら完璧に仕留めたか確認してから近づいたところだが、今はとにかく時間がない。
「ちっ、もう来たか」
問題があったのは銃声だ。
魔獣のうろつく森の中で大きな音を出すということは普通の人であれば命取りになる行為だ。
獰猛な肉食動物の少ない日本の森では、多少鉄砲で狩りをしたところで獣の方から集まってくるなんていうことはないだろう。
しかしここの生態系はちょっとぶっ飛んでいる。
大きな音を立てようものなら腹を空かせた肉食の魔獣がすぐさま寄ってきてしまうのだ。
ザザザッと草を蹴る音が聞こえてくる。
分身が消されるまで猶予はわずかだ。
俺はイノシシの生死も確認せずにとりあえずアイテムボックスに放り込む。
アイテムボックスは生き物を入れることはできないから、入ったということは死んでいたのだろう。
なんとか間に合った。
四方八方から飛び掛ってくる肉食魔獣を一瞥し、俺は分身を消した。
「はぁ、危なかったな」
本体は宿のベッドで横になっていただけだというのに、心臓がバクバクいっている。
死なないと分かっていても四方八方から肉食魔獣に飛び掛られるのは恐怖を感じずにはいられない。
よだれを垂らして牙をむき出しにする肉食魔獣の獰猛な面が夜中にフラッシュバックしてしまいそうだ。
まあどいつもこいつも魔力値は70か80くらいで、あの化け物鹿とは比べるまでもない雑魚なんだがな。
おかげでトラウマは更新されずに済んだ。
まだ俺の中ではあの鹿が虎を惨殺するシーンがベストオブトラウマだ。
「あ、イズミさん。おかえりなさい、でいいんですかね」
「ああ、ただいま」
俺はずっとここにいたのだが、分身を使って森に狩りに行って帰ってきたのも間違いではない。
今日は俺が分身を2人とも使っていたのでジルタは個人練習だった。
もう今日は魔力値70のイノシシを狩って銃の検証も済んだし、分身は2人も必要ない。
俺は分身を1人出し、ジルタの稽古を再会する。
こっちはこっちでやることが無いわけでもないので分身を1人出す。
分身の身体では別室で銃の分解整備を行い、本体は今日の検証のひとり反省会をする。
「まずは、音だよな。銃声がうるさすぎる。森の中では使いづらい」
細かい技術的な改善点なども箇条書きにしてどんどん書いていく。
銃の改善点はこのくらいでいいとして、他にもあれがあったらいいとかこれがあったら便利とかのアイディアを書き出していく。
「本当言ったら分身がもう1人欲しいんだけどな。そろそろスキル成長してくれんものか」
アンチマテリアルライフルの飛距離は1000メートルどころのものではない。
森の中で2、300メートルの距離を狙撃するのはもったいない。
だが分身は観測主としての役割も持たせているために、離れすぎると獲物を回収する前に肉食魔獣かなにかに横取りされてしまうのだ。
撃ったらせいぜい1分以内で駆けつけられる範囲で待機していなければならない。
観測主の役割を果たしてから獲物の元に駆けつけるにはこれ以上距離を離せないだろう。
いくら身体能力が上がって短距離走のタイムが縮まったところで、1キロも離れていれば足場の悪い森の中ではすぐに駆けつけることはできないからな。
まあそれほどの距離は射線が通らないということもあるのだが。
しかし水場の近くなどならもう少し距離を離しても狙撃できそうではある。
観測主の役割と獲物の回収の役割を別の分身に分けることができれば一番いいのだがな。
「もう少し常に固有スキルを使うようにしてみるか。本体は寝転がったままで分身で身の回りの世話をするとかな。ダメ人間になりそうだ……」
元々ダメ人間だからこんな名前の固有スキルが発現したんだろうがな。
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