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21.魔道具屋
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午前6時、朝一の鐘が鳴り響く時間に俺はパチリと目を開ける。
傍らには夜通し魔法の練習をしていた寝不足の分身。
ここ数日分身を常に出していて疑問に思ったことがある。
固有スキルによって生み出された分身はスキルを使った瞬間の自分の服装を完全にコピーしているが、肉体的コンディションはどうなのかと。
そして試してみた結果、肉体的コンディションも完全にコピーされることがわかった。
ということは、分身はどれだけ夜更かしをしても本体が十分な睡眠をとった後に一度消してもう一度出せば快眠後眠気すっきりの状態になるということだ。
それが分かってから俺は夜も分身を出したままにしてずっと行動させている。
人間が睡眠にあてる時間というのは結構長いものだ。
平均8時間くらいは眠るとしてこの世界でも1日は24時間だ。
実に一日の3分の1を眠って過ごしている計算になる。
俺は今までいったいどれだけの時間を無駄にしてきたのかと過去の自分に対して憤りさえ覚えた。
この世界に来てからはずっと夜眠ったのと同じだけの時間を無駄にしてきたということだからな。
まあ過ぎてしまったものは仕方が無い。
これからの人生は人よりも多くの時間を有意義に使うことができると思えば少しは優越感も感じる。
分身が目覚めていれば本体は自由に睡眠をコントロールすることができるということも副次的に発見したし、本当に名前以外は文句のつけようのない固有スキルだ。
おかげで俺は目覚まし時計が無くてもパッチリ覚醒することができる。
これから冒険者として野営することもあると思うが、そんなときでも見張りはばっちりだ。
「さてと、まずは顔洗ってトレーニングだな」
そして今日は狩りには行かず魔道具屋に行く。
アンチマテリアルライフルの爆音をなんとかしなければ、冒険者ギルドの中でも森で変な爆発音が聞こえると噂になっている。
森では火事になりやすい火属性の魔法を使う奴はあまりいないからな。
森での爆発音は人間が発したものではないと思うのがこの世界では普通だ。
たまに生まれつき魔法スキルと詠唱破棄スキルを持っており、無意識に魔法を使う魔獣というのが現われる。
今回もそれが出たのではないかと少しだけ騒ぎになっていた。
騒ぎを大きくしないためにも、これ以上森で爆音を響かせるわけにはいかない。
魔道具屋に行き、なにか音を消すための魔道具は無いか探すつもりだ。
サプレッサーという銃声を静かにするためのオプションを装備することのできるアンチマテリアルライフルというものもあちらの世界には存在していたが、動画サイトで見た限りでは静かな森で聞こえないレベルの消音は期待できるものではなかった。
風吹き荒ぶ荒野で2000メートル望遠ならば音は気にならないレベルかもしれないが、森では絶対に気付かれる。
気体に干渉することのできる風魔法には、空気の振動を抑えて音を外に逃がさないようにするような魔法もあった。
俺の魔力値では残念ながら銃声を消すレベルの魔法は発動することができなかったが、同じような効果を持った魔道具が存在しているのならばそれを銃に組み込みたい。
物質の三態に干渉したりするような汎用性のあることには原始的な魔法のほうが向いているが、こういった音を消す、火を付けるなどといった単純で用途が限定されているものは魔道具のほうが向いているはずだ。
前に魔道具屋に行ったときはそんなものは見当たらなかった気がするが、店頭にあるだけがすべてとは限らない。
店員に聞いてみるべきだろう。
俺は顔を洗った後分身を消してもう一度出すと、朝の町に駆け出した。
「こんにちは」
「あい、いらっしゃい」
町角の古ぼけたおもちゃ屋のような雰囲気の魔道具屋に入ると、これまた古ぼけたおもちゃ屋の店主みたいな6、70代くらいのおじいちゃん店主が出迎えてくれる。
この世界の人間は長命なので見た目が老人ってことは実際はもっと信じられないくらいジジイなのだろうが。
俺はおじいちゃん店主との会話もそこそこに、それほど広くない店内を歩き回り音に関する魔道具を探す。
音を出したり記録したりする魔道具はあったが、やはり音を消す魔道具というのは置いてないようだ。
だが魔法でできることが魔道具にできない道理はない。
魔道具は魔法という力を進歩させた技術なのだから。
問題は作られているがこの店には置いてないだけなのか、ニーズが無くて魔道具化されていないのかだ。
後者だったら特注で作ってもらうか自分で作ることになる。
俺はできればこの店の店舗裏在庫あたりに不人気商品として置いてあることを祈って店主に話しかけた。
「すみません、音を消すような魔道具ってありませんか?」
「音ですか。そういうのは貴族向けの店なら売ってるかもしれませんね。うちには無いです」
貴族向けの店か。
おそらく密談用に部屋の音を外に逃さないような魔道具のことだろう。
ニーズ的にそうなってしまうか。
大は小を兼ねるというが、これに関してはそうはいかないな。
中からの音を逃さないということは外からの音も聞こえないということになる。
森でその状況はちょっと怖い。
俺は自分の耳には音が入ってきて、手元の音だけ消してくれるようなもっと小規模のものが欲しい。
やはり特注で作ってもらうか自分で作るしかないか。
魔道具の作りが電子工学のような複雑なものだったらお手上げだな。
とりあえず貴族用の魔道具というのを見てみたいが、貴族向けの店なんてこんな汚い格好じゃあ入れてもらえないだろうな。
「すみません、魔道具の製造元って分かりますか?できればその音を消す魔道具を扱っているところがいいのですが」
「お客さん、工房に直接買いに行くつもりかい?小口の客は相手にされないと思うがね」
「オーダーメイドでもだめですかね」
「おお、それならそういう専門の工房があるから紹介してあげるよ」
「ありがとうございます」
「いいっていいって、うちにもいくらか仲介料が入る契約になってるんだからさ」
ウィンウィンウィンの関係だな。
なぜだろうか、ウィンが一つ増えるだけで少しエロくなった。
傍らには夜通し魔法の練習をしていた寝不足の分身。
ここ数日分身を常に出していて疑問に思ったことがある。
固有スキルによって生み出された分身はスキルを使った瞬間の自分の服装を完全にコピーしているが、肉体的コンディションはどうなのかと。
そして試してみた結果、肉体的コンディションも完全にコピーされることがわかった。
ということは、分身はどれだけ夜更かしをしても本体が十分な睡眠をとった後に一度消してもう一度出せば快眠後眠気すっきりの状態になるということだ。
それが分かってから俺は夜も分身を出したままにしてずっと行動させている。
人間が睡眠にあてる時間というのは結構長いものだ。
平均8時間くらいは眠るとしてこの世界でも1日は24時間だ。
実に一日の3分の1を眠って過ごしている計算になる。
俺は今までいったいどれだけの時間を無駄にしてきたのかと過去の自分に対して憤りさえ覚えた。
この世界に来てからはずっと夜眠ったのと同じだけの時間を無駄にしてきたということだからな。
まあ過ぎてしまったものは仕方が無い。
これからの人生は人よりも多くの時間を有意義に使うことができると思えば少しは優越感も感じる。
分身が目覚めていれば本体は自由に睡眠をコントロールすることができるということも副次的に発見したし、本当に名前以外は文句のつけようのない固有スキルだ。
おかげで俺は目覚まし時計が無くてもパッチリ覚醒することができる。
これから冒険者として野営することもあると思うが、そんなときでも見張りはばっちりだ。
「さてと、まずは顔洗ってトレーニングだな」
そして今日は狩りには行かず魔道具屋に行く。
アンチマテリアルライフルの爆音をなんとかしなければ、冒険者ギルドの中でも森で変な爆発音が聞こえると噂になっている。
森では火事になりやすい火属性の魔法を使う奴はあまりいないからな。
森での爆発音は人間が発したものではないと思うのがこの世界では普通だ。
たまに生まれつき魔法スキルと詠唱破棄スキルを持っており、無意識に魔法を使う魔獣というのが現われる。
今回もそれが出たのではないかと少しだけ騒ぎになっていた。
騒ぎを大きくしないためにも、これ以上森で爆音を響かせるわけにはいかない。
魔道具屋に行き、なにか音を消すための魔道具は無いか探すつもりだ。
サプレッサーという銃声を静かにするためのオプションを装備することのできるアンチマテリアルライフルというものもあちらの世界には存在していたが、動画サイトで見た限りでは静かな森で聞こえないレベルの消音は期待できるものではなかった。
風吹き荒ぶ荒野で2000メートル望遠ならば音は気にならないレベルかもしれないが、森では絶対に気付かれる。
気体に干渉することのできる風魔法には、空気の振動を抑えて音を外に逃がさないようにするような魔法もあった。
俺の魔力値では残念ながら銃声を消すレベルの魔法は発動することができなかったが、同じような効果を持った魔道具が存在しているのならばそれを銃に組み込みたい。
物質の三態に干渉したりするような汎用性のあることには原始的な魔法のほうが向いているが、こういった音を消す、火を付けるなどといった単純で用途が限定されているものは魔道具のほうが向いているはずだ。
前に魔道具屋に行ったときはそんなものは見当たらなかった気がするが、店頭にあるだけがすべてとは限らない。
店員に聞いてみるべきだろう。
俺は顔を洗った後分身を消してもう一度出すと、朝の町に駆け出した。
「こんにちは」
「あい、いらっしゃい」
町角の古ぼけたおもちゃ屋のような雰囲気の魔道具屋に入ると、これまた古ぼけたおもちゃ屋の店主みたいな6、70代くらいのおじいちゃん店主が出迎えてくれる。
この世界の人間は長命なので見た目が老人ってことは実際はもっと信じられないくらいジジイなのだろうが。
俺はおじいちゃん店主との会話もそこそこに、それほど広くない店内を歩き回り音に関する魔道具を探す。
音を出したり記録したりする魔道具はあったが、やはり音を消す魔道具というのは置いてないようだ。
だが魔法でできることが魔道具にできない道理はない。
魔道具は魔法という力を進歩させた技術なのだから。
問題は作られているがこの店には置いてないだけなのか、ニーズが無くて魔道具化されていないのかだ。
後者だったら特注で作ってもらうか自分で作ることになる。
俺はできればこの店の店舗裏在庫あたりに不人気商品として置いてあることを祈って店主に話しかけた。
「すみません、音を消すような魔道具ってありませんか?」
「音ですか。そういうのは貴族向けの店なら売ってるかもしれませんね。うちには無いです」
貴族向けの店か。
おそらく密談用に部屋の音を外に逃さないような魔道具のことだろう。
ニーズ的にそうなってしまうか。
大は小を兼ねるというが、これに関してはそうはいかないな。
中からの音を逃さないということは外からの音も聞こえないということになる。
森でその状況はちょっと怖い。
俺は自分の耳には音が入ってきて、手元の音だけ消してくれるようなもっと小規模のものが欲しい。
やはり特注で作ってもらうか自分で作るしかないか。
魔道具の作りが電子工学のような複雑なものだったらお手上げだな。
とりあえず貴族用の魔道具というのを見てみたいが、貴族向けの店なんてこんな汚い格好じゃあ入れてもらえないだろうな。
「すみません、魔道具の製造元って分かりますか?できればその音を消す魔道具を扱っているところがいいのですが」
「お客さん、工房に直接買いに行くつもりかい?小口の客は相手にされないと思うがね」
「オーダーメイドでもだめですかね」
「おお、それならそういう専門の工房があるから紹介してあげるよ」
「ありがとうございます」
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