異世界の無人島で暮らすことになりました

兎屋亀吉

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6.拠点と料理

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 なんとなく予感はしていたが、前方に見覚えのある砂浜が見えてきた。
 突き立てた棒は風で倒れていたが、ここが数日前俺が降り立った砂浜であることは疑いようがない。
 一周してしまったことで、ここが海に囲まれた島だということが確定してしまった。
 歩いた時間は体感で100時間くらいだろうか。
 俺は文字通り朝から晩まで歩いた。
 途中何度も休憩を挟んだものの、1日に10時間くらいは歩いただろう。
 毎日毎日歩き続け、10日でここにたどり着いた。
 1時間に1キロ歩いたと仮定すれば、この島の外周は100キロくらいということになる。
 大体小豆島と同じくらいの大きさだ。
 外周100キロってことは円の面積は、えっとなんだっけ。
 まあ面積なんかどうでもいいか。
 ある程度の広さはあるということだ。
 真ん中には大きな山があり、海岸線の地質などから察するにあの山が噴火してこの広い島ができたのだと思われる。
 JK神様が噴火させたのかもしれないし、噴火して島が生まれてJK神様も生まれたのかもしれない。
 そのへんは夜にでも妄想するとして、まずは拠点候補地だ。
 正直最初の日にキャンプした岩場一択なんだよな。
 俺は石工スキルを持っているので、素材となる石はなるべくたくさんあったほうがいい。
 そして近くに水源がある場所となると、もうあそこしかない。
 なんのために島を1周したのかわからなくなってくるが、俺は拠点を1日目のキャンプ地だった岩場に決めた。
 明日は引っ越しだ。






「はぁはぁはぁ。相変わらず重い」

 登山に持って行くような大型ザックを2つに海外旅行に持って行くような大型キャリーバッグ2つ。
 中には米や小麦粉、塩や砂糖などの重い物もたくさん入っている。
 包丁や手斧、ノコギリやフライパンなどの鉄製品も買った覚えがある。
 総重量は100キロを軽く超えているのではないだろうか。
 この世界に来る前はろくに運動なんかしない人間だった俺だが、10日もこんな重さの荷物を持って歩き続ければ少しは体力や筋肉が付く。
 日が暮れる前にはキャンプ地に到着した。
 凝りに凝って、水平器まで使って綺麗に均した岩場はこの無人島にあって異様な光景だ。
 俺は荷物を置き、テントを設営した。
 まだ本格的な拠点は作るつもりはないが、しばらくはここでゆっくりできるだろう。
 明日からは近場で食料調達をするつもりだから、これまでのように重い荷物を背負って1日中歩き回るようなことはない。
 腹も減ったことだし、そろそろ火を使った本格的な料理でも作るかな。
 今までは料理をするような気力も残っていなかったこともありカ〇リーメイトとコーラの炭酸で無理やり腹を膨らせていたが、そんなまやかしの満腹感は長続きはしない。
 ゲップ一つですぐに空腹だ。
 ここいらでガツンと腹に溜まるものでも食したいところ。
 しかし、俺は料理は得意じゃない。
 これも、まず知識を仕入れるところから始めないといけないようだ。
 俺はスーツケースの中から料理関連の書籍を取り出す。

「料理の写真は目に毒だな」

 完成図の写真が俺の空腹感を煽る。
 腹減った。
 俺は簡単レシピ50選という本をパラパラめくっていくが、本格的な料理を作るには圧倒的に食材が足らないことを思い知らされる。
 主食と調味料だけじゃあ料理って作れないんだな。
 まあ当然か。
 肉や魚、野菜に卵、牛乳、何もかもが足りない。
 これは凝った料理は無理そうだな。

「お、これポテチを使うのか」

 面白そうなレシピを見つけた。
 それはポテチをお湯で戻したマッシュポテトのレシピだ。
 作り方もポテチとお湯を混ぜて調味料で味を調えるだけと簡単で、俺でも作ることができそうだった。

「よし、これにしようかな」

 俺は通販スキルのウィンドウを開き、ポテチを購入する。
 ポテチは今のところ、味がうすしおしか存在していない。
 せめて味が選べたら少しは飽きずに食べられるかもしれないのにな。
 それに値段が1袋170円と少々高めだ。
 スナック菓子の袋は大量に買えば非常に嵩張る。
 そのため今まではまとめ買いができず手を出せなかった。
 しかし拠点を決めた今、備蓄食料として大量購入もできる。
 そろそろ手を出してもいい頃だろう。
 通販スキルに入金されたお金の残高は295万円ちょっと。
 あちらの世界で貯金の残りをチャージしたお金だが、明日明後日底をつくという額ではない。
 いつかはこちらの世界の街とかにも行って、こちらの世界のお金をチャージすることになるだろう。
 それまでこのお金が保ってくれればいいのだが。
 ポテチはともかく、この暑い島でキンキンのコーラ無しの生活は辛い。
 俺は残金であとどれだけコーラを飲むことができるのかを計算しながら割高なポテチをポチった。
 バサバサと空中にポテチの袋が降る。
 送料がもったいないから当然大量購入だ。
 送料はポテチも一律で1000円。
 20袋同時購入で1袋あたりの送料は50円まで落ちたが、それでも1袋220円の高いポテチになってしまった。
 幸いだったのはポテチの袋が昔のサイズだったことか。
 そうだな、俺の子供の頃はポテチはこのサイズだった。
 きっとJK神様も最近のポテチの内容量にはお怒りだったに違いない。
 しかしこのサイズでも220円は高いな。
 この値段ならばパーティサイズの袋でもいいくらいだ。
 だがこれ以上の文句はJK神様への失礼になってしまうのでやめておこう。
 大事に食べます。
 俺はポテチの山をテントの中に運び、積み上げた。
 今日はポテチに埋もれて眠ることになりそうだ。
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