異世界の無人島で暮らすことになりました

兎屋亀吉

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14.人間の戦い

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 客観的に考えて、キャラメル食って涙が出るっていうのは相当精神的に追い詰められているよな。
 モッチャモッチャとキャラメルを食べながらオイオイ泣いた俺は、冷静になった頭でそんなことを考えた。
 30近い大の男がキャラメル食って泣くのはやばい。
 俺は孤独耐性が高いほうだが、やはり3か月以上も無人島で一人きりというのは思った以上に堪えているようだ。
 孤独を癒すためにも早く人のいる場所に向かいたいところだが、この3か月で船らしきものを1隻たりとも見かけていないんだよな。
 こんな何の情報もない状況で、気軽に海に出られるはずもない。
 行って戻ってくるどころか陸地にたどり着くことすらできそうもない。
 せめてここからどの方角にどのくらい向かえば陸にたどり着くことができるのかという情報だけでも調べなければ海に出ることなんかできはしないだろう。
 調べる方法は思いつく限りで2つ。
 高いところに登ってひたすら遠くを眺めるか、船が通りすがるのを待つか。
 通販スキルのレベルをもう少し上げれば望遠鏡なども購入することができるかもしれないし、島の中央にある山に登って遠くを見てみれば何か見えるかもしれない。
 船が通りがかるのを待つほうは、のろしをなるべく絶やさないようにしていればこの島に人がいることに気付いた船が寄ってくれるかもしれない。
 とりあえず今は森に入って山に登るのは危険すぎるので、後者の方法をとることにしよう。
 俺は焚火に生木をくべて煙を発生させた。
 俺が死ぬ前には船が気づいてくれるといいがな。

「はぁ、釣りでもするか……」

 女神クエストの残りの魔石を奉納するというものはとりあえず保留だ。
 この3か月少々の間でこの島には何種類かのモンスターが生息しているということがわかってはいるものの、まだ自分から狩るという気にはなれない。
 俺には決着を付けなければいけないモンスターがいるのだ。
 あの豚畜生を倒すまでは、他のモンスターに現を抜かすわけにはいかない。
 あいつを倒す算段はすでについている。
 今は待ちの構えなのだ。
 俺は石工スキルで階段状に加工した崖を下り、釣り場に向かった。
 俺が拠点としているこの岩場もこの3か月で大分人の住める形になってきた。
 火サスに出てきそうだった岩場は均され平らになり、自然のままだった崖は貝の採取や釣りがしやすいように観光地のような階段状になった。
 このような大規模な工事が独力でできるのだから石工スキルはチートすぎる。
 現在は岩場の真ん中に自分の家を建設中だ。
 すぐに回復するとはいえ魔力も無限ではないので毎日コツコツ作業を進めている。
 いずれは港町のようにしていけたらいいなと思っている。
 まだまだ自分の住環境すら整っていない現状ではそんなことは夢のまた夢なんだけどな。
 せいぜい将来の名物になるような美味い魚を釣るとしよう。
 名物がアジでは旅行客だって来てくれそうにない。
 揚げ物という調理法がまだ浸透していなければアジフライでいけそうな気がしないでもないが、調理法なんか結局すぐに真似されてしまうに決まっている。
 やはり素材の味で勝負できる魚が必要だ。
 アジはアジでもシマアジなら高級魚なんだけどな。
 シマアジは太平洋側の比較的海水温の高い海でとれることが多いと聞いたことがある。
 この島周辺の温かい海でなら釣れる可能性はあるのではないだろうか。
 シマアジなんか人生で一度も食べたことがないので、いつか食べてみたいものだ。
 





 日没から2時間ほど経った頃、ドーム型の寝床でうつろうつろしていた俺はものすごい物音で目を覚ました。
 どうやら奴が来たようだ。
 すぐに寝床から出て櫓に登る。
 石壁の高さは現在3メートルほどだが、四隅に6メートルほどの高さの物見やぐらを作ってあるのだ。
 そこに登れば石壁の外で何が起きているのかはすぐにわかるし、敵襲ならば上からスキルや投石で攻撃することもできる。
 まあ予想どおりならば敵襲だろう。
 俺は今日、眠る前に壁の外に罠を仕掛けておいたのだ。
 罠は単純な落とし穴だが、巨大イノシシの巨体でも数メートルは落下するような深さのものだ。
 穴の底には鋭く尖った石杭が突き出ており、イノシシ自身の体重で刺し貫かれるようになっている。
 どう考えたって人間はあんな化け物にフィジカルで勝つことなんかできないんだ。
 人間の強みである頭脳を使うしかないだろう。
 俺だって正面から戦って勝てる見込みがあるならそうしたかったが、いくらスキルのレベルを上げたってそんなことは不可能だ。
 これが人間の戦いだよ。
 殺し合いに卑怯もなにもない。
 狼が群れで狩りをするのも、隼がはるか上空からもの凄い速さで落下してくるのも、考えてみれば卑怯だろ。
 だから人間が自分の武器である頭脳を使うことは卑怯でもなんでもない。
 櫓のてっぺんまで登り、罠の場所を見下ろす。
 そこには、多少の傷は負っているもののまだぴんぴんしているイノシシがフゴフゴと穴を登っている姿が。

「卑怯だぞ!!」

 タフすぎるだろ。
 野生を超越している。
 俺は巨大イノシシに向かって火弾スキルを連射した。
 
「プギィィィッ!!」

「オラオラオラオラ!」

 イノシシと人間の戦いは続く。


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