異世界の無人島で暮らすことになりました

兎屋亀吉

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13.ミルクキャラメル

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「よし、これでクエスト2つめクリアっと」

 JK神様の石像を覆うように石造りの社を建て、2つめの女神クエストをクリアした。
 いただいたSPはまたも10ポイント。
 またどれかひとつスキルのレベルを1アップすることができるポイント数だ。
 火弾に関してはレベルが上がり、次のレベルに上がるまでに必要な熟練度が20に上がってしまったので上げることはできない。
 なので次はチートの代名詞と言っても過言ではない2つのスキルのうち、どちらかを上げることにする。
 どちらを上げるべきか。
 アイテムボックスを上げればキンキンなまま入れておけるコーラの本数が増える。
 現在コーラは4本ずつ購入して1本を飲み、3本をアイテムボックスに保管している。
 ゆえに送料は1本あたり250円。
 合計して1本あたり410円というべらぼうな値段になってしまっている。
 富士山の山頂にある自販機のような値段だが、ここが異世界であることを考えれば安いのかもしれない。
 しかしお金が有限である以上は節約できるものはしていきたい。
 10本や20本ずつ買っていたこともあるのだが、温んだコーラなどは気温の高い昼間は全く飲む気にならないためになかなかストックが減らずやめた。
 これがアイテムボックスの容量が増え、多くのコーラをキンキンのまま保管できるようになれば大量購入することができるようになり、1本あたりの値段は劇的に安くなることだろう。
 また、アイテムボックスは本来コーラを保管しておくための冷蔵庫ではない。
 容量が増えれば荷物や武器を常に携帯したり、熱々の料理を大量に作って保管しておくことで毎日料理するという手間を省くこともできるだろう。
 大きな岩を入れておいて高いところから落とす落石攻撃だってできるかもしれない。
 さすがの巨大イノシシだって、高いところから落ちてきた自分より重たい岩に潰されれば無事では済まないだろう。
 そう考えると、アイテムボックスをレベルアップさせるべきか。
 しかし通販をレベルアップさせるメリットもなくはない。
 なぜならば、食料がそろそろ底をつくからだ。
 なるべく通販で買えるポテチやカラス貝などの現地食材を使って料理を作ってきたが、そろそろ限界だ。
 すでにカップラーメンやカ〇リーメイトなどは食べ尽くしてしまい、残るは米と小麦粉、パスタが少々。
 これが尽きれば俺は本格的にポテチを主食とせねばならなくなる。
 料理方法次第ではポテチもそれほど悪くはないのだが、主食がそれしかないというのも気が狂いそうになるだろう。
 森から持ってきた腐葉土で岩場内に小さな畑を作り、芋類や根菜類、葉物野菜などを育ててはいるものの素人農業なので半分くらいを枯らしてしまい予想収穫量はあまり多くない。
 米や小麦などの穀物の種もみはキロ単位で買うものなのか、24時間スーパーにもドンキにも売っていなかった。
 そもそも売っていたとしても穀物を農業本読んだだけの素人が育てられるとは思えない。
 やはり俺の中では米や小麦粉なんかは店で買うものという認識が強い。
 レベル2ではさすがに主食の類は買えるようにはならないかもしれないが、通販スキルのレベルを上げることによって購入することができる品目が増える可能性は高い。
 どれだけレベルを上げてもコーラとポテチ以外を買うことができないというのはクソスキルすぎるだろう。
 たとえコーラやポテチが1円で大量購入できるようになったとしても、そんなことにはなって欲しくない。
 通販(微)のスキルレベルを一つ上げてみるというのは、その片鱗を伺い見るという意味もある。
 アイテムボックスは容量が増える以外のパワーアップが考えられないということもあり、俺の中の天秤は通販(微)スキルに傾いた。

「よし、通販(微)スキルをレベルアップだ」

 ステータスのSP欄をタップし、通販(微)スキルの熟練度をアップさせる。
 SPを2ポイント残した段階で通販スキルはレベルアップした。
 さっそく通販スキルを使用し、商品のラインナップを見る。

「お、増えてる」

 やはり、通販スキルのレベルアップにより購入できる商品が増えていた。
 新規商品はそれほど多くはないものの、飲み物が数種類、お菓子類が数種類だ。
 異世界でバカ売れしそうなチョコレート菓子も1種類入っている。
 これは俺の時代が来たかもしれないな。
 まだ島から出る算段も付いていないが、人のいる場所にたどり着くことさえできれば商売繁盛間違いなしだ。
 それになにより、この何もない島で甘いお菓子を食べることができるという事実になんとなく感動した。
 小麦粉と砂糖でパンケーキのようなものを作ってみたことはあるが、さほど美味くはないのだよ。
 今まで自分で作った甘味の中では、砂糖をお湯に溶かしただけのシロップが一番美味かった。
 そんな状況だ、この商品の拡充は画期的変化といえるだろう。
 俺は早速ミルクキャラメルを購入した。
 キャラメルなんか食べるのはいつ以来だろうか。
 まだ両親が生きていた頃だから10年以上前かもしれない。
 送料節約のために20箱積み重なったキャラメルを、ひと箱開封する。
 四角い箱に四角いキャラメルが規則だたしく納まっているのを見るとなぜだか心がほっこりする。
 一つ包み紙を開け、口に放り込んだ。
 
「甘い……」

 懐かしい味に涙が零れた。


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