迷宮の魔王物語

兎屋亀吉

文字の大きさ
9 / 13

9.人妻の手料理とか……好き。

しおりを挟む
 俺がDPで出した電磁調理器を使って、バルロイ族の女達が炊き出しをしている。
 ちなみに電力は船の屋根に設置したソーラーパネルから延長コードで引いている。
 DPに余裕ができたらソーラーパネルをあちこちに設置したい。 
 
「いやー、悪いね。俺までご馳走になっちゃって」
 
「いえいえ、600人分作るのも601人分作るのも変わりませんから。それに、もとよりこの食料はヒナタ様にいただいたものです。みんな感謝しています」

「いやいや、感謝だなんて、でれへっへへ。お、お互い様だよ」

 やばいよ、女の子と話すのなんて久しぶりだから挙動不審でなんかやばいヤツみたいになっちゃってるよ。
 いや、でも女の子はやっぱりいいね。
 見てるだけで癒される。
 ああ、女の子とおしくらまんじゅうしたかった。
 女の子と合法的におしくらまんじゅうする機会なんてもうないじゃん。
 なにしてくれてんのおっさん&じいさんズ。
 おしくらまんじゅうしたいよー。
 人妻おしくらまんじゅうしたいよー。
 ふたつのお饅頭で圧迫されたいよー。
 
「ヒナタ殿、これからどうするつもりだ?」

 なんだよじいさん邪魔するなよ。
 今、じいさんの娘の人妻を眺めて叶わぬ夢を見ていたというのに。
 しかし、これからか。
 これからどうしようか。
 
「とりあえずDPを溜めてスキルを取得したいから、しばらくはこのままのんびり暮らすかな」
 
 何をするにも相応の強さというものが必要になるだろう。
 生物の少ない北の地ではレベル上げは難しいけれど、スキルだけは取って練習しておきたい。

「ふむ、我らとしてはこの地でヒナタ殿と共に暮らすのも悪くはないのだが、何もせずに飯が食えるというのも少し居心地が悪い。そのうち集落を取り戻したいところだな」 

「そうだな。みんなの故郷だもんな。でもどうやって取り返すんだ?」

「あのダンジョンは単純に数の暴力に頼ったダンジョンだ。準備があればどうとでもなる。それこそヒナタ殿の水魔法を鍛えて水没させるという手もある」

「おお、俺が強くなれば集落を取り戻す一助になれるということか」

「まあそこまで手伝ってもらうのも気が引けるが、あれだけの数の魔物だ、ヒナタ殿のダンジョンに吸収させれば相当なDPになるだろう」

 なるほど、俺にもしっかりと利があるというわけだ。

「そいじゃあその方向で」

「相分かった。戦士達も腕を鈍らせないよう訓練しておく」

 そっちの方向で話が纏まったタイミングで、人妻さんから料理ができたと伝えられた。

「たくさんあるのでおかわりして食べてくださいね」

「は~い」

 交易で手に入れたらしいどこだかの伝統工芸の器に盛り付けられた料理が皆に配られている。
 綺麗に削られて磨かれた木の器はつやつやしていて、日本のろくろ細工みたいだ。
 料理は炊き出しらしくスープと五目御飯だ。
 スープのほうはバルロイ族の家庭料理らしい。
 五目御飯は俺が教えたものだ。
 皆一口目はなじみのスープを飲んでほっと息をつき、二口目は五目御飯を食べて驚いている。
 このあたりは穀物が育たない気候なので穀物は貴重だ。
 特に米は温暖な気候じゃないと育たないので食べるのが初めての者が大半だろう。
 あれやこれやと議論しながら食べている。
 俺にとっては食べなれた味なのでバクバク食べる。
 くぅ、うまいよう。
 久しぶりにまともな料理だ。
 バルロイ族の家庭料理のスープも飲む。
 おお、食べたことのない味だ。
 塩だけではなく、何かで出汁をとっているような深みのある味わいだ。
 残念ながらそこまで味の違いの分かる舌ではないので何がなんだかよくわからんが、うまいことだけはわかる。
 柔らかく煮えた肉や野菜の旨みが、え~となんて言うんだろう、渾然一体?テレビの食レポでよく聞く表現だけど、そんな感じだ。
 う~ん、宝石箱、宝石箱やね。
 ああ、あったまるな、人妻の作った料理は。
 これは間接的に人妻に暖められていると思ってもいいのではないだろうか。
 間接添い寝と言ってしまっても過言ではないな。
 ありがとう人妻。
 美味しくいただくよ人妻。
 


 さあ、人妻に暖めてもらった後はスキルの取得だ。
 先ほどからDPがたくさん入ってくる。
 これは多くの人のトイレ使用によるものだろう。
 食事の後トイレに行きたくなる人は結構多いからね。
 ありがたやありがたや。
 人妻が便器に座っている姿を想像して、祈りを捧げながら使わせていただこう。
 リストにずらっと並ぶスキル。
 俺がまず取得したいのはパッシブスキルだ。
 常時発動し、能力値や耐性を高めてくれるスキルを取得して、地力を高める計画だ。
 パッシブスキルにはスキルレベルがない。
 その代わり、効果が強いスキルほどDPが高い。
 魔王の強さの秘訣の一端は、このパッシブスキルだと俺は思っている。
 魔王であってもスキルレベルは地道に上げるしかない。
 なのに世間一般の魔王共は皆一様に強いという。
 それはおかしい。
 スキルを取得したばかりでスキルレベル1の魔王が強いはずはない。
 それを覆せるスキルが3種類ほど思い浮かぶ。
 1つ目はスキル習熟速度上昇系スキル。
 これはスキルの習熟を早め、スキルレベルの上昇を促すスキルだ。
 これはDPが高いのでまだ俺には早い。
 2つ目は経験値上昇系スキル。
 これは敵を倒したときの経験値が増加し、レベルの上昇を促すスキルだ。
 これもDPが高いし、倒す生物もいないので却下だ。
 そして3つ目がパッシブスキルだ。
 これはATKならATK系の、HPならHP系の系統別のパッシブスキルが各五段階になっていて、段階が上のスキルほど上昇する能力値は大きくなり、取得するためのDPも高くなる。
 段階が下の方のスキルなら、今の俺のDPでも1つくらいは取得できそうなので、俺はこのパッシブスキルを取得しようと思ったのだ。
 ただ、悩むのがこのパッシブスキル、取得できる個数に限りがあるのだ。
 各パラメータ別の五段階のほかに、各種耐性、各種無効化、各パラメータ系スキルの上位に存在する複合系統スキル、クセの強そうな特殊系スキル、そして気になる魔王専用スキル。
 合計すると300以上あるパッシブスキルの中から、取得できるのは半分ほどの150個。
 パッシブスキル全部とって最強魔王だ、みたいなことができないようになっている。
 器用貧乏を取っても全部取得するのは無理みたいだ。
 なかなかにパワーバランスが考えられている。
 しかし、だからこそ悩む。
 おそらくステータスを満遍なく伸ばすと中途半端になるだろう。
 いや、でもそれはそれでレベルを上げまくれば強いような気がする。

 うーん、悩む。

 スキル強奪系とかのスキルは俺のリストには見当たらないけど………。
 ないよね?
 この世界には無いと信じたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...