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1.異世界召喚
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田中正宗40歳独身。ついでに童貞。
職業、フリーランスの英語翻訳者。
たまに「へ~じゃあ英語ぺらぺらなんだ?」って聞いてくるヤツいるけれど英語はしゃべれない。
少し読み書きができるだけだ。
俺は人付き合いが苦手で、人と関わることが嫌で、人と同じ空間で仕事をするのも嫌で、家に引きこもってできる仕事を模索した結果、英語翻訳者になったという筋金入りの社会不適合者だ。
まあ、それで困ったことは…あるけど、なんやかんやでなんとかなっているのでこの生活には満足している。
しかし、そんな穏やかな生活がいつまでもは続かないのが世の常である。
異世界召喚はある日突然、誰の身にも起こりうる。
コンビニにエロ本…セクシー写真集を買いに行った帰り、交差点を渡ろうとした俺はいきなり眩い光に包まれたのであった。
のであったとか言ったけれど現在進行形で異世界召喚の真っ最中だ。
「え~皆様、私がこの度の皆様の異世界召喚の担当を勤めさせていただきます、クレイルと申します。若輩者ではありますが、精一杯努めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」
真面目そうな七三めがねの男がどこか間延びする声でそんな場違いな自己紹介をしている。
今はあのとき交差点を渡っていた男女20人ほどが、真っ白な空間に集められてクレイルと名乗った男から説明を受けている最中だ。
交差点を歩いていたら突然こんな白い空間に呼び出されたんだ、当然混乱するし文句も出る。
「異世界召喚だ?ふざけんじゃねえぞ!冗談言ってねえで早く帰しやがれ!!」
短い髪を金髪に染めた、気の短そうな男がクレイルに食って掛かると、その声に賛同するように野次が飛び、場が一時騒然となる。
「お、おい!みんな静かにしろよ。とりあえず話だけでも聞かないとどういう状況なのか分からないだろ」
めがねをかけた一見オタク風の男子学生が、騒いでいる者たちに静かにするように言い聞かせている。
確かに話はちゃんと聞いたほうがいいと思うが、その男子学生は俺のすぐ近くにいるので、小声で「こういうのは下手に出た奴がいいチートをもらえるというのがセオリーだ」などと友達と思われる他の男子学生と話していてげんなりした。
男子学生の打算による呼びかけによって、場の空気が少し静寂を取り戻したのを感じ、クレイルが再び話し始める。
「私はこの世界の管理員の一人。いわゆる神という存在にあたる者です。この度は異世界、『エグルツハイム』という世界で、勇者召喚の儀が行われまして、皆様にはこれからその世界へと旅立っていただく予定となっております。現在エグルツハイムは人間の国などは一応あるものの、基本的には無秩序な弱肉強食の世界となっておりまして、皆様がそのまま召喚されても強く成長するまでに死んでしまうのがほぼ確定しているようなものでございます。そこで私どものほうで、皆様ひとりひとりに適切な祝福のほうを贈与させていただきまして、皆様を最初からある程度自分の身を守ることができる状態で異世界のほうへ送らせていただくというのが昔からの慣例でございます」
私どもってことはあの人はたくさんいる神様の1柱なんだろうか。
なんだか、公務員っぽい雰囲気の神だな。
神だけに天下って管理員になったのかな。
給料制なんだろうか。
「ここまでの話で質問などありましたら受け付けます」
クレイルがそう言うと最初に文句を言った金髪が怒気を孕んだ声でクレイルにたずねる。
「俺達は帰れるのか?」
クレイルは感情の起伏を感じさせない声で金髪の質問に答える。
「帰る方法事体は存在するのですが、なにぶんそのへんの事情は向こうの世界に渡った後で、今回の勇者召喚を行った方々にお聞きください。
また、異世界から元の世界にお帰りいただくことに関しましては、別に担当の者がおりますので、お帰りいただく際にその者からいろいろとお聞きください」
お役所はいつもそうだ、担当部署が違うの一言で煙に巻く。
金髪も目の前の七三めがねが神と名乗ったことや、何を言ってもマニュアルどおりの答えしか返ってこなさそうなことから、それ以上なにかを言うのはあきらめたようだ。
それから、各々細々とした質問をしていった。
自分達がいなくなったら、元の世界ではどういう扱いになっているのかとかそういうどうでもいい質問だ。
家族がいたりする人たちにはどうでもよくは無いのかもしれないが、家族もいなければ友達もいない俺にとってはどうでもいいことだ。
暇なので異世界がどんなところなのか想像してみる。
一番最初に思い浮かぶのはWEB小説などでよく見る剣と魔法の世界だ。
あの公務員っぽい神が言うには弱肉強食の世界らしい。
モンスターとかいるんだろうか。
ドラゴンなんかもいたりしてな。
神は祝福をくれるって言っていたな。
ようはあのオタクっぽい学生の言っていたようにチート能力ってことだろうな。
最初からある程度強いならずっと宿屋とかに引きこもって、たまに強いモンスターなんかを狩って生活とかできないかな。
そんな自堕落なことを考えているうちに、どうやら質問タイムは終わったようだ。
職業、フリーランスの英語翻訳者。
たまに「へ~じゃあ英語ぺらぺらなんだ?」って聞いてくるヤツいるけれど英語はしゃべれない。
少し読み書きができるだけだ。
俺は人付き合いが苦手で、人と関わることが嫌で、人と同じ空間で仕事をするのも嫌で、家に引きこもってできる仕事を模索した結果、英語翻訳者になったという筋金入りの社会不適合者だ。
まあ、それで困ったことは…あるけど、なんやかんやでなんとかなっているのでこの生活には満足している。
しかし、そんな穏やかな生活がいつまでもは続かないのが世の常である。
異世界召喚はある日突然、誰の身にも起こりうる。
コンビニにエロ本…セクシー写真集を買いに行った帰り、交差点を渡ろうとした俺はいきなり眩い光に包まれたのであった。
のであったとか言ったけれど現在進行形で異世界召喚の真っ最中だ。
「え~皆様、私がこの度の皆様の異世界召喚の担当を勤めさせていただきます、クレイルと申します。若輩者ではありますが、精一杯努めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」
真面目そうな七三めがねの男がどこか間延びする声でそんな場違いな自己紹介をしている。
今はあのとき交差点を渡っていた男女20人ほどが、真っ白な空間に集められてクレイルと名乗った男から説明を受けている最中だ。
交差点を歩いていたら突然こんな白い空間に呼び出されたんだ、当然混乱するし文句も出る。
「異世界召喚だ?ふざけんじゃねえぞ!冗談言ってねえで早く帰しやがれ!!」
短い髪を金髪に染めた、気の短そうな男がクレイルに食って掛かると、その声に賛同するように野次が飛び、場が一時騒然となる。
「お、おい!みんな静かにしろよ。とりあえず話だけでも聞かないとどういう状況なのか分からないだろ」
めがねをかけた一見オタク風の男子学生が、騒いでいる者たちに静かにするように言い聞かせている。
確かに話はちゃんと聞いたほうがいいと思うが、その男子学生は俺のすぐ近くにいるので、小声で「こういうのは下手に出た奴がいいチートをもらえるというのがセオリーだ」などと友達と思われる他の男子学生と話していてげんなりした。
男子学生の打算による呼びかけによって、場の空気が少し静寂を取り戻したのを感じ、クレイルが再び話し始める。
「私はこの世界の管理員の一人。いわゆる神という存在にあたる者です。この度は異世界、『エグルツハイム』という世界で、勇者召喚の儀が行われまして、皆様にはこれからその世界へと旅立っていただく予定となっております。現在エグルツハイムは人間の国などは一応あるものの、基本的には無秩序な弱肉強食の世界となっておりまして、皆様がそのまま召喚されても強く成長するまでに死んでしまうのがほぼ確定しているようなものでございます。そこで私どものほうで、皆様ひとりひとりに適切な祝福のほうを贈与させていただきまして、皆様を最初からある程度自分の身を守ることができる状態で異世界のほうへ送らせていただくというのが昔からの慣例でございます」
私どもってことはあの人はたくさんいる神様の1柱なんだろうか。
なんだか、公務員っぽい雰囲気の神だな。
神だけに天下って管理員になったのかな。
給料制なんだろうか。
「ここまでの話で質問などありましたら受け付けます」
クレイルがそう言うと最初に文句を言った金髪が怒気を孕んだ声でクレイルにたずねる。
「俺達は帰れるのか?」
クレイルは感情の起伏を感じさせない声で金髪の質問に答える。
「帰る方法事体は存在するのですが、なにぶんそのへんの事情は向こうの世界に渡った後で、今回の勇者召喚を行った方々にお聞きください。
また、異世界から元の世界にお帰りいただくことに関しましては、別に担当の者がおりますので、お帰りいただく際にその者からいろいろとお聞きください」
お役所はいつもそうだ、担当部署が違うの一言で煙に巻く。
金髪も目の前の七三めがねが神と名乗ったことや、何を言ってもマニュアルどおりの答えしか返ってこなさそうなことから、それ以上なにかを言うのはあきらめたようだ。
それから、各々細々とした質問をしていった。
自分達がいなくなったら、元の世界ではどういう扱いになっているのかとかそういうどうでもいい質問だ。
家族がいたりする人たちにはどうでもよくは無いのかもしれないが、家族もいなければ友達もいない俺にとってはどうでもいいことだ。
暇なので異世界がどんなところなのか想像してみる。
一番最初に思い浮かぶのはWEB小説などでよく見る剣と魔法の世界だ。
あの公務員っぽい神が言うには弱肉強食の世界らしい。
モンスターとかいるんだろうか。
ドラゴンなんかもいたりしてな。
神は祝福をくれるって言っていたな。
ようはあのオタクっぽい学生の言っていたようにチート能力ってことだろうな。
最初からある程度強いならずっと宿屋とかに引きこもって、たまに強いモンスターなんかを狩って生活とかできないかな。
そんな自堕落なことを考えているうちに、どうやら質問タイムは終わったようだ。
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