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2.ムッツリもそこまでいくともはやオープン
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「それでは祝福の贈与に入ります」
クレイルはそう言うと、指をパチンと鳴らす。
すると真っ白い空間に、扉だけがすっと現れた。
「個別に面談して贈与する祝福を決めていきますので、ひとりずつこの扉に入ってきてください」
そう言って扉を開けてさっさと入っていってしまった。
残されたほうはというと、とくに順番とかを決められていかなかったので困ってしまった。
オタク学生チームや金髪ヤンキーチームなどは早く祝福が欲しいらしく、扉の前に殺到して争っていたが、他はとりあえず適当に扉の前に1列に並んだ。
結局1番最初は金髪チームがとったみたいだ。
祝福をもらうのに、結構長めの面談をしているようで、列は遅々として進まない。
結局みんな座り込んで列が進むのを待つ。
俺も最後尾に座ってエロ本などを開いてみる。
なるほどな、なるほどなるほど。
まるで難しい論文でも読んでいるかのような顔をしてエロ本を眺めていると、前方からなんだか視線を感じる。
顔を上げてみると、いかにも人妻といった色気漂う風貌の妙齢の女性が蔑むような眼で俺のことを見下ろしていた。
なんだろう、これ、なんか背中がゾクゾクするな。
あれ、俺これ知ってる。
これ快感だ。
ヤバイ、変な扉開いちゃったかも。
かといって目の前の色っぽい人妻にこの劣情をぶちまけるわけにもいかないので俺はエロ本に集中することにした。
人の煩悩は108もあるんだ。
ひとつ隣の煩悩に全力を注ぐことによって別の煩悩を打ち払えるはずだ。
それからどのくらいの時間が経っただろうか。
ふと顔を上げると誰もいない。
しまったな、煩悩にのめりこみすぎてしまったみたいだ。
ポツリと残された扉がガチャリと開いて中から疲れた顔をした、クレイルが出てきた。
「ふー、やっと終わったな。肩凝ったぁ。あれ?まだひとりいましたか。最後のひとりですし、扉はもういいかな」
クレイルが指パッチンすると、扉は最初から無かったかのように消えていた。
クレイルは俺の前に胡坐をかいて座ると、まっすぐに俺のほうを向いて問いかける。
「どんな祝福がいいですか?できる限りで希望を反映し……」
なんだ?クレイルの言葉が急に止まって視線をちらちらとさまよわせている。
挙動不審だ。
俺はその巧妙にカモフラージュされた視線を追ってみる。
2,3度何もない場所を見た後に、必ず同じ場所を見ている。
俺の持っているエロ本だ。
その表紙を飾るおっぱいとその先端まで見えちゃっている女の子の写真に何度も視線が言っている。
10秒に1回くらいは見ている。
「なにか?」
「いえ?別に」
なんだその逆にそちらがなにか?みたいな顔。かなりイラっとくる。
こいつ、嘘がばれそうになると逆に頭が冷静になってくるタイプだな。
やっかいなタイプだ。
「その本は…」
「このエロ本がなにか?」
「いえ、異世界に持ち込まれるとまずいものリストに載っていたような気がしたものですから。少々お待ちください、今確認してまいります」
「え…」
そう言ってクレイルは空中に現れた扉に入っていってしまった。
さっきの指パッチンはどうしたんだよ…。
ていうか異世界に持ち込まれるとまずいものリストってなに?
そんなのあんの?あったとして何でエロ本持ち込むとまずいの?
モラルの低下か?子供の教育に悪いとかか?
クレイルはなにかを確認するには早すぎる時間で帰ってきて、食い気味に言い放った。
「やっぱりそちらの本は異世界に持ち込まれるとまずいものリストに載っておりました」
「待ってくれよ、そんなの本当にあんの?」
「あります。そしてその本はそのリストに載っておりました。ここで置いていってください」
「いやいや、異世界行ったらエロ本なんて手に入らないでしょ、これは俺の最後の楽しみなんだから。それにそのリスト本当にあるなら俺に見せてよ」
「いえ、その、あの、リストは極秘事項ですので、い、一般の方にはお見せすることはできません。でもリストはあります。ありますからその本は異世界に持ち込まれますと困ります」
「いや、困るとか言われても俺も困るんだけど。じゃあこのエロ本異世界に持ち込んだらどうなんの?なにがまずいの?」
「その、あの、えっと、ものすごい大変なことになります」
やばい。ちょっと面白くなってきた。
「ふーん。どう大変なことになるの?」
「そ、それは、その、これは規則でして、そのエロほ…書物は、異世界には持ち込めないことに…」
こんなクレーマーの相手も真面目にする自分はすごく仕事してますみたいな顔してるけど、今エロ本って言いかけたからね。
「わかりました。ではこうしましょう。私の持っているなかでもとっておきの祝福をあなたに差し上げましょう」
「いやあんたもうただエロ本が欲しいだけでしょ!」
まさか祝福まで交渉材料にしてエロ本を欲してくるとは思わなかった。
こいつムッツリを超越してんな。
超越者と呼んでも過言ではないな。
「いえいえ、勘違いしてもらっては困るのですけれども、これは規則とはいえその本をここに置いていかなくてはならないあなたへの損害の補填です。救済措置です」
「まだ俺は置いていくとは言ってないけど、話だけは聞いてみようか。果たしてエロ本とつり合うかなものかな」
「ええ、わかりました。私の持っている祝福のなかでも1,2を争うレア祝福で、ここ1000年ほどは誰にも贈与していないない正真正銘のとっておきです。その名も、【職業:仙人】です!」
ドヤァとでも言いたそうな顔をしてクレイルはそう言い放ったのだった。
クレイルはそう言うと、指をパチンと鳴らす。
すると真っ白い空間に、扉だけがすっと現れた。
「個別に面談して贈与する祝福を決めていきますので、ひとりずつこの扉に入ってきてください」
そう言って扉を開けてさっさと入っていってしまった。
残されたほうはというと、とくに順番とかを決められていかなかったので困ってしまった。
オタク学生チームや金髪ヤンキーチームなどは早く祝福が欲しいらしく、扉の前に殺到して争っていたが、他はとりあえず適当に扉の前に1列に並んだ。
結局1番最初は金髪チームがとったみたいだ。
祝福をもらうのに、結構長めの面談をしているようで、列は遅々として進まない。
結局みんな座り込んで列が進むのを待つ。
俺も最後尾に座ってエロ本などを開いてみる。
なるほどな、なるほどなるほど。
まるで難しい論文でも読んでいるかのような顔をしてエロ本を眺めていると、前方からなんだか視線を感じる。
顔を上げてみると、いかにも人妻といった色気漂う風貌の妙齢の女性が蔑むような眼で俺のことを見下ろしていた。
なんだろう、これ、なんか背中がゾクゾクするな。
あれ、俺これ知ってる。
これ快感だ。
ヤバイ、変な扉開いちゃったかも。
かといって目の前の色っぽい人妻にこの劣情をぶちまけるわけにもいかないので俺はエロ本に集中することにした。
人の煩悩は108もあるんだ。
ひとつ隣の煩悩に全力を注ぐことによって別の煩悩を打ち払えるはずだ。
それからどのくらいの時間が経っただろうか。
ふと顔を上げると誰もいない。
しまったな、煩悩にのめりこみすぎてしまったみたいだ。
ポツリと残された扉がガチャリと開いて中から疲れた顔をした、クレイルが出てきた。
「ふー、やっと終わったな。肩凝ったぁ。あれ?まだひとりいましたか。最後のひとりですし、扉はもういいかな」
クレイルが指パッチンすると、扉は最初から無かったかのように消えていた。
クレイルは俺の前に胡坐をかいて座ると、まっすぐに俺のほうを向いて問いかける。
「どんな祝福がいいですか?できる限りで希望を反映し……」
なんだ?クレイルの言葉が急に止まって視線をちらちらとさまよわせている。
挙動不審だ。
俺はその巧妙にカモフラージュされた視線を追ってみる。
2,3度何もない場所を見た後に、必ず同じ場所を見ている。
俺の持っているエロ本だ。
その表紙を飾るおっぱいとその先端まで見えちゃっている女の子の写真に何度も視線が言っている。
10秒に1回くらいは見ている。
「なにか?」
「いえ?別に」
なんだその逆にそちらがなにか?みたいな顔。かなりイラっとくる。
こいつ、嘘がばれそうになると逆に頭が冷静になってくるタイプだな。
やっかいなタイプだ。
「その本は…」
「このエロ本がなにか?」
「いえ、異世界に持ち込まれるとまずいものリストに載っていたような気がしたものですから。少々お待ちください、今確認してまいります」
「え…」
そう言ってクレイルは空中に現れた扉に入っていってしまった。
さっきの指パッチンはどうしたんだよ…。
ていうか異世界に持ち込まれるとまずいものリストってなに?
そんなのあんの?あったとして何でエロ本持ち込むとまずいの?
モラルの低下か?子供の教育に悪いとかか?
クレイルはなにかを確認するには早すぎる時間で帰ってきて、食い気味に言い放った。
「やっぱりそちらの本は異世界に持ち込まれるとまずいものリストに載っておりました」
「待ってくれよ、そんなの本当にあんの?」
「あります。そしてその本はそのリストに載っておりました。ここで置いていってください」
「いやいや、異世界行ったらエロ本なんて手に入らないでしょ、これは俺の最後の楽しみなんだから。それにそのリスト本当にあるなら俺に見せてよ」
「いえ、その、あの、リストは極秘事項ですので、い、一般の方にはお見せすることはできません。でもリストはあります。ありますからその本は異世界に持ち込まれますと困ります」
「いや、困るとか言われても俺も困るんだけど。じゃあこのエロ本異世界に持ち込んだらどうなんの?なにがまずいの?」
「その、あの、えっと、ものすごい大変なことになります」
やばい。ちょっと面白くなってきた。
「ふーん。どう大変なことになるの?」
「そ、それは、その、これは規則でして、そのエロほ…書物は、異世界には持ち込めないことに…」
こんなクレーマーの相手も真面目にする自分はすごく仕事してますみたいな顔してるけど、今エロ本って言いかけたからね。
「わかりました。ではこうしましょう。私の持っているなかでもとっておきの祝福をあなたに差し上げましょう」
「いやあんたもうただエロ本が欲しいだけでしょ!」
まさか祝福まで交渉材料にしてエロ本を欲してくるとは思わなかった。
こいつムッツリを超越してんな。
超越者と呼んでも過言ではないな。
「いえいえ、勘違いしてもらっては困るのですけれども、これは規則とはいえその本をここに置いていかなくてはならないあなたへの損害の補填です。救済措置です」
「まだ俺は置いていくとは言ってないけど、話だけは聞いてみようか。果たしてエロ本とつり合うかなものかな」
「ええ、わかりました。私の持っている祝福のなかでも1,2を争うレア祝福で、ここ1000年ほどは誰にも贈与していないない正真正銘のとっておきです。その名も、【職業:仙人】です!」
ドヤァとでも言いたそうな顔をしてクレイルはそう言い放ったのだった。
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