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改稿版
4.俺を騙した女
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セミロングの綺麗な黒髪と切れ長の瞳、目元の泣きボクロが特徴的な女性が道を歩いている。
その女性は数ヶ月前までは俺の彼女だった女性。
いや、俺が一方的に彼女だと思っていたに過ぎない女性だ。
今となっては本名だったのか分からないが、名前は杉山碧。
以前は笑顔を絶やさない素敵な女性だと思っていたが、今その顔に浮かんでいるのは凍てつきそうなほどの無表情だ。
これが本性だったというわけか。
たかが笑顔を浮かべただけだというのに、馬鹿な俺はたやすく騙されてしまった。
「くそっ」
ムカムカと胸の内が焼けるような感覚に陥る。
しかしだ。
俺には彼女に対して憤る資格は無い。
俺も自分勝手な理由で人を殺した殺人者だ。
彼女よりもより凶悪かもしれない。
だから、俺にあるのは彼女から金を返してもらう資格だけだと思うんだ。
俺は彼女の背後に短距離転移する。
既存魔法の中にあった魔法で、発動にかかる魔石がリーズナブルなので使いやすい。
俺は彼女の肩に手を置き、一緒に異世界へと転移した。
「は?なにここ……。どうなって……。あんた、矢沢!!」
「久しぶりだな。碧」
「なんか用なの?ていうかここなんなのよ」
「用なんてひとつに決まってる。金を返せ」
「は?お金ってなんのことよ」
「お前が騙し取った俺の金だよ」
「なんのことだか分からないんだけど。もしかしてあんたがあの詐欺師に騙されたお金のこと言ってんの?なんであたしに言うのか分からないんだけど」
「全部だよ。実家の商売が危ういとか言って持っていった金に、結婚指輪、あの詐欺師と組んで騙し取った金」
「は?なんでよ……」
もう面倒だな。
ここはもう日本じゃない。
異世界の人通りの少ない裏通りだ。
防犯カメラも気にする必要もない。
俺は碧の顔を掴んで口を開かせる。
「痛っ、な、なにふんほひょ」
俺は碧の開いた口にマイ胡椒を流し込む。
「んぐっ、がらっ、ごほっ、ごほっ」
「お金返す?」
「ごほっ、ごほっ、か、返さない!」
俺は更に新品の胡椒を取り出し、碧に見せる。
碧の顔は青い。
「お金返す?」
「か、返さないわよ!」
俺は胡椒の封を切り、碧の口に流し込む。
「んんうぅっ、ごほっごほっ、た、助けっ」
「お金返す?」
碧は涙を流しながら首を横に振る。
俺は溜息を吐く。
「はぁ、俺だってこんなことは続けたくないんだ……」
そんなことを口では言いながらも、更に新しい胡椒を取り出す。
碧はいやいやと首を横に振り、逃げようとする。
しかし俺は片手で碧の襟首をがっしりと掴んでいるので逃げられはしない。
「お金、返す?」
「か、返さないわ!!」
俺は容赦なく胡椒を流し込んだ。
今度は吐き出せないように顎を押さえて口を開けられないようにする。
「んんんんぅぅっ、んぐっ、んぐぅぅぅぅ!!」
碧の顔が青から赤、紫に変わっていく。
どうやら俺は首を押さえてしまっていたらしい。
手をぱっと離す。
「げほっげほっ……ひっく、ひっく……」
「なあ、もうやめないか?」
「うるさいわね!こんなことして、犯罪よ!」
「そんなことは俺も分かっている。でも、先に詐欺にかけたのはそっちじゃないか」
「詐欺なんかじゃないわ!証拠が無いもの。あなたから私がお金を騙し取った証拠は無いでしょ?」
「そうだね。だからこうして俺も犯罪行為に手を染めているんだ」
「あんた頭がおかしいの!?」
「今頃気付いたの?もう俺は昔の俺じゃないんだよ。頭のおかしい犯罪者なんだ。これ以上粘ると、もっと酷いことをしなければいけなくなる。普通の生活が送れる身体なうちに、諦めてくれないか?」
碧は青い顔で俺のことを化け物でも見るかのように見つめる。
これ以上碧に酷いことをすれば、俺は本当に化け物になってしまいそうだ。
「わ、わかったわよ……。お金は返すわ」
「ああ、ありがとう。別に全額でなくても構わない。俺も短い間だったけれど、いい夢を見せてもらった。6、7割返してもらえれば文句は言わない」
「ねえ、ところでここどこなの?家に帰してくれるのよね?」
「ん?ああ、帰すよ。帰す」
俺はタブレットを取り出し、魔石の残量を見る。
残る魔石は中魔石が1個、中魔石90/100が1個となっている。
たぶん中魔石90/100っていうのは中魔石のエネルギーを10パーセントだけ使ったという意味だろう。
チンピラの懐に入っていた魔石は全部で中魔石が11個だった。
時間遡及を使って中魔石を3個消費して残り中魔石8個。
そこからさらに減った魔石は中魔石6個と10パーセントで、使った魔法は短距離転移2回と世界間転移2回。
短距離転移の消費魔石は最初に試した1回で判明している。
中魔石1個の5パーセント分だ。
ということは世界間転移の消費魔石は中魔石3個か。
往復で6個。
1回も使えないな。
我ながら危ないことをしてしまった。
向こうの世界では魔石の補充手段が無い。
こちらからの転移分しか持たずに向こうの世界に転移してしまったら、当然もうこちらの世界に来ることはできなくなってしまうだろう。
他の魔法を使うにも魔石は絶対に必要だし、なんとか補充しないとな。
「ごめん、ちょっと待っててくれないか?」
「え、なに、帰れないの?」
「いや、帰れる。帰れるけど、今は帰れないというかなんというか……」
「今日中には帰れるのよね?」
「うーん、まあそうなるように頑張るよ」
魔石ってどこに売ってんのかな。
襲い掛かってきたチンピラが持っていたということは、どこかには売ってるんだろうけど。
俺は魔石の売っている店を探して歩きだした。
裏通りに置いていくわけにもいかないので、碧も一緒にだ。
なんでこうなるのかな。
後先考えないと妙なことになっちゃうんだな。
その女性は数ヶ月前までは俺の彼女だった女性。
いや、俺が一方的に彼女だと思っていたに過ぎない女性だ。
今となっては本名だったのか分からないが、名前は杉山碧。
以前は笑顔を絶やさない素敵な女性だと思っていたが、今その顔に浮かんでいるのは凍てつきそうなほどの無表情だ。
これが本性だったというわけか。
たかが笑顔を浮かべただけだというのに、馬鹿な俺はたやすく騙されてしまった。
「くそっ」
ムカムカと胸の内が焼けるような感覚に陥る。
しかしだ。
俺には彼女に対して憤る資格は無い。
俺も自分勝手な理由で人を殺した殺人者だ。
彼女よりもより凶悪かもしれない。
だから、俺にあるのは彼女から金を返してもらう資格だけだと思うんだ。
俺は彼女の背後に短距離転移する。
既存魔法の中にあった魔法で、発動にかかる魔石がリーズナブルなので使いやすい。
俺は彼女の肩に手を置き、一緒に異世界へと転移した。
「は?なにここ……。どうなって……。あんた、矢沢!!」
「久しぶりだな。碧」
「なんか用なの?ていうかここなんなのよ」
「用なんてひとつに決まってる。金を返せ」
「は?お金ってなんのことよ」
「お前が騙し取った俺の金だよ」
「なんのことだか分からないんだけど。もしかしてあんたがあの詐欺師に騙されたお金のこと言ってんの?なんであたしに言うのか分からないんだけど」
「全部だよ。実家の商売が危ういとか言って持っていった金に、結婚指輪、あの詐欺師と組んで騙し取った金」
「は?なんでよ……」
もう面倒だな。
ここはもう日本じゃない。
異世界の人通りの少ない裏通りだ。
防犯カメラも気にする必要もない。
俺は碧の顔を掴んで口を開かせる。
「痛っ、な、なにふんほひょ」
俺は碧の開いた口にマイ胡椒を流し込む。
「んぐっ、がらっ、ごほっ、ごほっ」
「お金返す?」
「ごほっ、ごほっ、か、返さない!」
俺は更に新品の胡椒を取り出し、碧に見せる。
碧の顔は青い。
「お金返す?」
「か、返さないわよ!」
俺は胡椒の封を切り、碧の口に流し込む。
「んんうぅっ、ごほっごほっ、た、助けっ」
「お金返す?」
碧は涙を流しながら首を横に振る。
俺は溜息を吐く。
「はぁ、俺だってこんなことは続けたくないんだ……」
そんなことを口では言いながらも、更に新しい胡椒を取り出す。
碧はいやいやと首を横に振り、逃げようとする。
しかし俺は片手で碧の襟首をがっしりと掴んでいるので逃げられはしない。
「お金、返す?」
「か、返さないわ!!」
俺は容赦なく胡椒を流し込んだ。
今度は吐き出せないように顎を押さえて口を開けられないようにする。
「んんんんぅぅっ、んぐっ、んぐぅぅぅぅ!!」
碧の顔が青から赤、紫に変わっていく。
どうやら俺は首を押さえてしまっていたらしい。
手をぱっと離す。
「げほっげほっ……ひっく、ひっく……」
「なあ、もうやめないか?」
「うるさいわね!こんなことして、犯罪よ!」
「そんなことは俺も分かっている。でも、先に詐欺にかけたのはそっちじゃないか」
「詐欺なんかじゃないわ!証拠が無いもの。あなたから私がお金を騙し取った証拠は無いでしょ?」
「そうだね。だからこうして俺も犯罪行為に手を染めているんだ」
「あんた頭がおかしいの!?」
「今頃気付いたの?もう俺は昔の俺じゃないんだよ。頭のおかしい犯罪者なんだ。これ以上粘ると、もっと酷いことをしなければいけなくなる。普通の生活が送れる身体なうちに、諦めてくれないか?」
碧は青い顔で俺のことを化け物でも見るかのように見つめる。
これ以上碧に酷いことをすれば、俺は本当に化け物になってしまいそうだ。
「わ、わかったわよ……。お金は返すわ」
「ああ、ありがとう。別に全額でなくても構わない。俺も短い間だったけれど、いい夢を見せてもらった。6、7割返してもらえれば文句は言わない」
「ねえ、ところでここどこなの?家に帰してくれるのよね?」
「ん?ああ、帰すよ。帰す」
俺はタブレットを取り出し、魔石の残量を見る。
残る魔石は中魔石が1個、中魔石90/100が1個となっている。
たぶん中魔石90/100っていうのは中魔石のエネルギーを10パーセントだけ使ったという意味だろう。
チンピラの懐に入っていた魔石は全部で中魔石が11個だった。
時間遡及を使って中魔石を3個消費して残り中魔石8個。
そこからさらに減った魔石は中魔石6個と10パーセントで、使った魔法は短距離転移2回と世界間転移2回。
短距離転移の消費魔石は最初に試した1回で判明している。
中魔石1個の5パーセント分だ。
ということは世界間転移の消費魔石は中魔石3個か。
往復で6個。
1回も使えないな。
我ながら危ないことをしてしまった。
向こうの世界では魔石の補充手段が無い。
こちらからの転移分しか持たずに向こうの世界に転移してしまったら、当然もうこちらの世界に来ることはできなくなってしまうだろう。
他の魔法を使うにも魔石は絶対に必要だし、なんとか補充しないとな。
「ごめん、ちょっと待っててくれないか?」
「え、なに、帰れないの?」
「いや、帰れる。帰れるけど、今は帰れないというかなんというか……」
「今日中には帰れるのよね?」
「うーん、まあそうなるように頑張るよ」
魔石ってどこに売ってんのかな。
襲い掛かってきたチンピラが持っていたということは、どこかには売ってるんだろうけど。
俺は魔石の売っている店を探して歩きだした。
裏通りに置いていくわけにもいかないので、碧も一緒にだ。
なんでこうなるのかな。
後先考えないと妙なことになっちゃうんだな。
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