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改稿版
15.胡椒数千円分の命
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サプレッサーで抑えられた銃声が響く。
バシュッバシュッというガスの漏れるような音。
サブソニック弾という音速を超えないようにできている弾を使っているので発砲音は本当に静かだ。
これも店員に勧められて買った。
弾速が遅いので威力がいまいちだが、殺しきれないときはワームホールを使って至近距離から放てばいい。
20メートルくらい先のゴブリンに向かってバシュバシュ撃っていくが、なかなか当たらないものだな。
当たっても急所じゃないと死なないし。
やっぱりワームホールを使わないとダメなようだ。
魔石的には赤字だが、大金持ちとなり小魔石を億単位で持っている今となっては微々たる消費か。
俺はワームホールを使って1匹1発できっちりと仕留めていった。
向こう側に人がいようが気にせず撃てるので、やはり銃とワームホールは相性がいい。
30匹前後いたであろうゴブリンは、あっという間に動かなくなった。
「………………」
「「「………………」」」
馬車に満載にされている奴隷たちは無言のままこちらを怯えたような顔で見つめている。
俺も別になにも言わないからお互いに無言で見つめあうだけだ。
どうしたらいいのだろう。
コミュ力には自信がないんだ。
金の力でなんとかならないものか。
俺はアイテムボックスから取り出した金貨をちらつかせてみる。
「「「!!!」」」
おお、なんらかの反応が得られた。
これは驚嘆しているのだろうか。
俺の財力に。
少し気持ちがいい。
俺はアイテムボックスからさらに金貨を10枚取り出し、見せびらかす。
「「「!!!!!」」」
なんだこれ楽しいぞ。
俺はしばらく金貨を見せびらかせ続けた。
「あの……」
「ん?」
横転した馬車に向かって金貨タワーを披露する俺に話しかける人物。
俺は拳銃を構えて振り返る。
「あの、それは私の馬車でございまして……」
ああ、この馬車の持ち主か。
どこかに隠れて馬車のほうを窺っていたのかもしれない。
その人物はひょろりと高い身長に、少したるみ気味の腹、綺麗に整えられた口ひげが特徴的な男だった。
脂汗でテカる顔に卑屈な笑みを浮かべ、揉み手をしている。
その目は俺の前の金貨タワーにクギづけだ。
俺は身体でさっとタワーを隠すと、アイテムボックスにすべての金貨を収納する。
身体を翻すとそこには金貨タワーの消えた地面だけ。
「なっ!?いったいどうなっているのですかな……」
「秘密です」
「はっ、申し送れました。私奴隷商人をしております、ケイブ・ハワードと申します。以後お見知りおきください」
奴隷商人、人の売り買いを生業とする商人か。
この世界において、奴隷商人は別に後ろ暗い職業ではない。
全うな商売をしていればの話だが。
奴隷たちの姿を見るに、全うな商売をしているかどうかギリギリなところだな。
奴隷たちはボロボロの服を着て、ろくに洗われていないのか薄汚れている。
ガリガリに痩せていることから、食べ物もあまり与えられていないだろう。
だが、そこまではまだギリギリ法には触れていない。
奴隷の扱いは奴隷商に一任されている。
頻繁に死人が出るような奴隷商は問題だが、死なない程度ならば罪に問われるようなことはない。
問題は妙に魔力の強いものが多いということだ。
俺はおじいさんからもらったタトゥを使い続けたせいか、最近は生き物の持つ魔力をなんとなく感じ取れるようになっている。
その感覚に従うならば、この奴隷たちは平民にしては魔力が強すぎる。
この世界で魔法を使えるのは魔法具を持つ者だけだ。
魔力を一生涯使うことの無い平民は魔力が弱く、魔力を頻繁に使う貴族や豪族は魔力が強くなる傾向にある。
きっと貴族などは何代にも渡って魔力の強い血縁同士を結婚させることによって、自分たちの魔力を高めてきたのだろう。
ここにいる奴隷たちは、半数以上から強い魔力を感じる。
1人2人なら偶然魔力の強い平民が混ざっていたのを疑うが、数が多すぎる。
偶然ではありえない。
この奴隷商、表向きはクリーンな商人かもしれないが裏では何をやっているか分かったものじゃないな。
貴族や豪族が奴隷に落とされることも無くはないが、もう少し扱いというものがあるだろう。
育ちのいい奴隷というのは読み書き計算などができる特殊な奴隷だ。
普通は他の奴隷とは扱いを変え、目玉商品として小奇麗にさせておくものだ。
全うな手段で取引された奴隷ではないのかもしれないな。
戦争か、内紛か、はたまた人攫いか。
そういった後ろ暗い手段で取引された奴隷を、闇のマーケットで一山いくらで売るような奴隷商がいると聞いたことがある。
こいつは信用できないな。
「俺は名前を言いたくないので、なんでも適当に呼んでください」
「そ、そうですか。それで、ゴブリンを倒してくださったようなので交渉をしたいのですが……」
「交渉ですか」
「ええ、私の馬車を守っていただいたお礼のお話です」
守っていただいたとはまた図々しい話だ。
自分は護衛がやられたらすぐに逃げたくせに、まだこの馬車が自分の物だと主張するとは。
一度放棄した馬車を他人が手に入れたのならば、それはすでに手に入れたものの持ち物となるのが常識なのにな。
「あなたは勘違いをしているようです。私はたまたま馬車を拾っただけですよ。この馬車があなたの物である証拠はありますか?あなたはこの馬車から離れて何をしていたのですか?」
「わ、私の馬車は私の馬車ですよ。証拠は商品です。私の商品が私の所有物である証明をしてくれるはずです。そうだろ、お前たち!!」
「「「………………」」」
「証明してくれているんですかね?これ」
「お、お前たち何か言え!!私が主だろうが!!そ、そうだ、私は少々用を足しにいっていただけなんです。私はこの馬車を放棄したつもりはないんです」
はぁ、なんだかめんどくさくなってきた。
俺は財力で解決することにした。
しかしこんなやつに金貨をくれてやるのも惜しいな……。
「いくら欲しいんですか?もうめんどくさいんで俺がこの馬車を買います、商品ごと」
「そうですか!いやぁ、あなたは話の分かる御仁だ。では金貨1000、いや金貨800枚でいいですよ。それくらいは出していただかないと。実際金貨1000枚くらいで売る予定だったのですよ。まけにまけて金貨800枚です。馬車もついてこの価格はお得だと思いますよ」
高いのか安いのかわからないが、なんとなく高いような気もする。
根拠はこいつが俺の金貨タワーを見ていることと、目がニヤついていること。
まあいい。
高かろうがなんだろうが、関係ないなからな。
俺はアイテムボックスから胡椒を取り出す。
俺にとっては低価値でも、この世界では高価な代物。
こいつで払えば俺の腹はそれほど痛まない。
「そ、それは!」
「胡椒です。見たことくらいはあるでしょう?」
「ええ、もちろんでございます。最近ではそこそこ出回るようになりましたからな。口にしたこともございます。それはそれは刺激的な味で……」
「ああ、はいはい。この胡椒で支払いたいのですが。いいですよね?うまくさばければ金貨1000枚にもなる量と質ですよ?」
「少々拝見いたします」
商人は胡椒の入った袋から胡椒を取り出してルーペのようなもので見はじめた。
袋の中をよく確かめ、嵩益しに他のものが入っていないかなどを念入りに見る。
「確かに、上質の胡椒ですね。この量でしたら金貨1000枚くらいはあるでしょう。わかりました。この奴隷たちをお譲りいたします。良い商いをありがとうございます」
数千円分の胡椒で人の命が買えてしまうのだから、異世界というのは世知辛いね。
商人はほくほくとした顔をしている。
まあせいぜい、胡椒払いで納得してくれる護衛でも雇って町まで行くといい。
こんなところにそんな奴がいるとは思えんけどね。
運がよければ生きて町までたどり着けるだろう。
胡椒なんてそんないっぱい持ってて、盗賊に間違われなければいいね。
バシュッバシュッというガスの漏れるような音。
サブソニック弾という音速を超えないようにできている弾を使っているので発砲音は本当に静かだ。
これも店員に勧められて買った。
弾速が遅いので威力がいまいちだが、殺しきれないときはワームホールを使って至近距離から放てばいい。
20メートルくらい先のゴブリンに向かってバシュバシュ撃っていくが、なかなか当たらないものだな。
当たっても急所じゃないと死なないし。
やっぱりワームホールを使わないとダメなようだ。
魔石的には赤字だが、大金持ちとなり小魔石を億単位で持っている今となっては微々たる消費か。
俺はワームホールを使って1匹1発できっちりと仕留めていった。
向こう側に人がいようが気にせず撃てるので、やはり銃とワームホールは相性がいい。
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「………………」
「「「………………」」」
馬車に満載にされている奴隷たちは無言のままこちらを怯えたような顔で見つめている。
俺も別になにも言わないからお互いに無言で見つめあうだけだ。
どうしたらいいのだろう。
コミュ力には自信がないんだ。
金の力でなんとかならないものか。
俺はアイテムボックスから取り出した金貨をちらつかせてみる。
「「「!!!」」」
おお、なんらかの反応が得られた。
これは驚嘆しているのだろうか。
俺の財力に。
少し気持ちがいい。
俺はアイテムボックスからさらに金貨を10枚取り出し、見せびらかす。
「「「!!!!!」」」
なんだこれ楽しいぞ。
俺はしばらく金貨を見せびらかせ続けた。
「あの……」
「ん?」
横転した馬車に向かって金貨タワーを披露する俺に話しかける人物。
俺は拳銃を構えて振り返る。
「あの、それは私の馬車でございまして……」
ああ、この馬車の持ち主か。
どこかに隠れて馬車のほうを窺っていたのかもしれない。
その人物はひょろりと高い身長に、少したるみ気味の腹、綺麗に整えられた口ひげが特徴的な男だった。
脂汗でテカる顔に卑屈な笑みを浮かべ、揉み手をしている。
その目は俺の前の金貨タワーにクギづけだ。
俺は身体でさっとタワーを隠すと、アイテムボックスにすべての金貨を収納する。
身体を翻すとそこには金貨タワーの消えた地面だけ。
「なっ!?いったいどうなっているのですかな……」
「秘密です」
「はっ、申し送れました。私奴隷商人をしております、ケイブ・ハワードと申します。以後お見知りおきください」
奴隷商人、人の売り買いを生業とする商人か。
この世界において、奴隷商人は別に後ろ暗い職業ではない。
全うな商売をしていればの話だが。
奴隷たちの姿を見るに、全うな商売をしているかどうかギリギリなところだな。
奴隷たちはボロボロの服を着て、ろくに洗われていないのか薄汚れている。
ガリガリに痩せていることから、食べ物もあまり与えられていないだろう。
だが、そこまではまだギリギリ法には触れていない。
奴隷の扱いは奴隷商に一任されている。
頻繁に死人が出るような奴隷商は問題だが、死なない程度ならば罪に問われるようなことはない。
問題は妙に魔力の強いものが多いということだ。
俺はおじいさんからもらったタトゥを使い続けたせいか、最近は生き物の持つ魔力をなんとなく感じ取れるようになっている。
その感覚に従うならば、この奴隷たちは平民にしては魔力が強すぎる。
この世界で魔法を使えるのは魔法具を持つ者だけだ。
魔力を一生涯使うことの無い平民は魔力が弱く、魔力を頻繁に使う貴族や豪族は魔力が強くなる傾向にある。
きっと貴族などは何代にも渡って魔力の強い血縁同士を結婚させることによって、自分たちの魔力を高めてきたのだろう。
ここにいる奴隷たちは、半数以上から強い魔力を感じる。
1人2人なら偶然魔力の強い平民が混ざっていたのを疑うが、数が多すぎる。
偶然ではありえない。
この奴隷商、表向きはクリーンな商人かもしれないが裏では何をやっているか分かったものじゃないな。
貴族や豪族が奴隷に落とされることも無くはないが、もう少し扱いというものがあるだろう。
育ちのいい奴隷というのは読み書き計算などができる特殊な奴隷だ。
普通は他の奴隷とは扱いを変え、目玉商品として小奇麗にさせておくものだ。
全うな手段で取引された奴隷ではないのかもしれないな。
戦争か、内紛か、はたまた人攫いか。
そういった後ろ暗い手段で取引された奴隷を、闇のマーケットで一山いくらで売るような奴隷商がいると聞いたことがある。
こいつは信用できないな。
「俺は名前を言いたくないので、なんでも適当に呼んでください」
「そ、そうですか。それで、ゴブリンを倒してくださったようなので交渉をしたいのですが……」
「交渉ですか」
「ええ、私の馬車を守っていただいたお礼のお話です」
守っていただいたとはまた図々しい話だ。
自分は護衛がやられたらすぐに逃げたくせに、まだこの馬車が自分の物だと主張するとは。
一度放棄した馬車を他人が手に入れたのならば、それはすでに手に入れたものの持ち物となるのが常識なのにな。
「あなたは勘違いをしているようです。私はたまたま馬車を拾っただけですよ。この馬車があなたの物である証拠はありますか?あなたはこの馬車から離れて何をしていたのですか?」
「わ、私の馬車は私の馬車ですよ。証拠は商品です。私の商品が私の所有物である証明をしてくれるはずです。そうだろ、お前たち!!」
「「「………………」」」
「証明してくれているんですかね?これ」
「お、お前たち何か言え!!私が主だろうが!!そ、そうだ、私は少々用を足しにいっていただけなんです。私はこの馬車を放棄したつもりはないんです」
はぁ、なんだかめんどくさくなってきた。
俺は財力で解決することにした。
しかしこんなやつに金貨をくれてやるのも惜しいな……。
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「そうですか!いやぁ、あなたは話の分かる御仁だ。では金貨1000、いや金貨800枚でいいですよ。それくらいは出していただかないと。実際金貨1000枚くらいで売る予定だったのですよ。まけにまけて金貨800枚です。馬車もついてこの価格はお得だと思いますよ」
高いのか安いのかわからないが、なんとなく高いような気もする。
根拠はこいつが俺の金貨タワーを見ていることと、目がニヤついていること。
まあいい。
高かろうがなんだろうが、関係ないなからな。
俺はアイテムボックスから胡椒を取り出す。
俺にとっては低価値でも、この世界では高価な代物。
こいつで払えば俺の腹はそれほど痛まない。
「そ、それは!」
「胡椒です。見たことくらいはあるでしょう?」
「ええ、もちろんでございます。最近ではそこそこ出回るようになりましたからな。口にしたこともございます。それはそれは刺激的な味で……」
「ああ、はいはい。この胡椒で支払いたいのですが。いいですよね?うまくさばければ金貨1000枚にもなる量と質ですよ?」
「少々拝見いたします」
商人は胡椒の入った袋から胡椒を取り出してルーペのようなもので見はじめた。
袋の中をよく確かめ、嵩益しに他のものが入っていないかなどを念入りに見る。
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