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10.ダンジョンと黄金のドラゴン
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玄関の扉の前に椅子を置き、リラックスできる姿勢で座る。
自室の扉をドアチェーンの分だけ開け、足で押さえて閉まらないようにした。
これで足をどければすぐに扉を閉めることができる。
安全に街を探索するための作戦だ。
俺は脳のリソースを節約するために自分の目を閉じ、身体から力を抜いて完全に本体の感覚を手放す。
そして外を見張る粘魚と、街に向かって飛ばしている粘魚の操作に集中する。
見張りの粘魚はそう難しくない。
扉の外の部屋から通路までの間をうろつかせて、視覚と聴覚で警戒させておけばいい。
慎重にいかなければならないのは街を飛ばせている1匹だ。
街にはモンスターが溢れている。
動きの遅い魚では、攻撃を受けてしまうかもしれない。
まあそうなったら粘魚が攻撃された時どうなるのかの実験になるのでそれはそれでいい。
俺は粘魚を操って街の探索を始めた。
街を見て回るとあちこちにモンスターが歩いている。
植物型のモンスター、それを食べる牛型や羊型のモンスターの群れ、更にそれを狩る狼型のモンスターの群れ、あちこちに街の廃材で砦を築く人型のモンスター。
そこにはもはや新たな生態系とも呼べるようなものが出来上がっていた。
よくよく考えるとダンジョンとかモンスターとか、スキルとかってのは本当にわけのわからん存在だ。
真面目に考えると頭がおかしくなりそうなので俺は考えるのをやめた。
モンスターたちの観察もそこそこに、街の中心地にある巨大な塔に目を向ける。
あれがダンジョンか。
天高く聳え立つその塔は、雲の上まで伸びていてどのくらいの高さがあるのかわからない。
東京タワーやスカイツリーよりも確実に高いな。
俺は少し塔に近づいてみる。
塔に近づくごとに、空を飛ぶモンスターが増えていく。
鳥型のモンスターや、鳥と人間が混ざったようなハーピーというモンスターが多い。
案外モンスターは粘魚に興味を引かれないようで、俺が操る魚はモンスターが飛び交う空を悠々と泳いでいった。
塔まで1キロくらいの位置まで近づくと、そこには不思議なものが並んでいた。
石像だ。
塔の周囲を囲むようにして、3、4メートルはありそうな大きな石像が数百体くらいずらりと並んでいる。
まるでストーンサークルだ。
石像の意匠は捩じくれた角とヤギのような顔、背中に翼を持つ悪魔のような姿だ。
めちゃくちゃ怪しい石像だな。
昔ゲームでこんな感じの奴と戦ったことがある。
ガーゴイルっていったっけな。
近づくと動き出すパターンの敵じゃねえかよ。
どう考えてもそのへんの雑魚敵じゃねえな。
こういうのはゲームだったら重要アイテムが手に入る部屋の扉の前とかで出てくるんだよ。
その門番キャラがダンジョンをぐるりと囲むように数百体も陣取ってるとか、確実にこいつらを倒さないとダンジョンには近づけないというパターンだ。
俺は試しにガーゴイルに近づいてみた。
粘魚が攻撃を受けるとどうなるのかはわからないが、最悪消えても俺が死ぬわけじゃない。
5メートルくらいまで近づくとガーゴイルはその鋭い眼光で睨みつけてきたが、それだけだった。
歯牙にもかけないとはこのことだ。
ガーゴイルに挑むには生身の身体でなければならないのかもしれない。
あんなおっかない悪魔の石像と生身で戦うなんて絶対嫌だな。
襲ってこないならこないで素通りできるからいいのだが。
俺はガーゴイルの横を素通りして塔へと近づいた。
ガーゴイルの内側の街並みはかなり破壊され尽くされていて、鉄筋コンクリートが剥きだしになってしまっている建物ばかりだ。
高層マンションの上には大きな鳥だかなんだかわからないモンスターが巣を作っている。
鳥なのに4足歩行の奴だ。
頭から翼くらいまでは猛禽類のような姿だが、後ろ足から尻尾にかけては猫科の動物のようなしなやかさを感じる。
先っちょだけフサフサの毛が生えたあの尻尾はライオンだよな。
上半身は猛禽で、下半身が獅子、そんな幻獣がいたっけな。
グリフォンとかいうやつだ。
ここいら一帯はグリフォンの巣があるエリアのようだな。
ガーゴイルを倒したと思ったらグリフォンが待ち構えているとか鬼畜すぎる。
もうさすがに何も待ち構えてないよな。
グリフォンも当然小さな魚のことなど見向きもしないので俺はグリフォンの巣だらけの廃墟群を呑気に泳いで塔へと更に近づいた。
もう塔までは数十メートルしかない。
そこまで来るとよくわかる。
こいつらが最後の関門か。
「ドラゴン……」
塔の外壁にはたくさんの突起のようなものが生えており、そこには巨大なドラゴンたちが待ち構えていたのだ。
空からこの塔に近づくのは絶対に不可能だろうな。
塔の周囲を守るように配置されたモンスターはすべて飛行能力を持っている。
下から上っていくダンジョンを、空から攻略するなんていうズルができないようになっているのだろう。
しかしドラゴンも粘魚には全く反応しないし、俺ならば直接塔の頂上付近まで行けるのではないだろうか。
俺は高度を上げ、塔の頂上を目指した。
雲を追い越してもまだ塔の先端が見えない。
どれだけ高い塔なんだよ。
1時間ほど飛ぶと、ようやく終わりが見えてくる。
塔の屋上には何かキラキラ光る山のようなものが見えた。
光を反射して眩いばかりに輝いているのは、1匹のドラゴンだった。
黄金のドラゴン、それがこの塔の頂上に君臨するボスらしい。
めちゃんこ強そうだな。
よく見ればドラゴンの背中の後ろには、山と積まれた本物の黄金もある。
あいつを倒せばあの黄金も手に入るということか。
これぞダンジョンって感じだな。
黄金のドラゴンは例に漏れず粘魚には興味無しって顔してぼへっとしているが、俺ならあのドラゴンを倒さなくても黄金だけ手に入れられるんじゃないのか?
俺は粘魚を黄金の山に突撃させた。
しかしダンジョンから1メートルくらいのところまで近づくと、動きが止まる。
何か見えないバリアのようなものに阻まれてこれ以上近づくことができないのだ。
さすがにこんなズルは許してくれないか。
よく考えたら黄金なんて手に入れて何になるんだ。
今は食べ物の方が価値がある。
俺は後ろ髪を引かれながらも、街の探索に戻った。
自室の扉をドアチェーンの分だけ開け、足で押さえて閉まらないようにした。
これで足をどければすぐに扉を閉めることができる。
安全に街を探索するための作戦だ。
俺は脳のリソースを節約するために自分の目を閉じ、身体から力を抜いて完全に本体の感覚を手放す。
そして外を見張る粘魚と、街に向かって飛ばしている粘魚の操作に集中する。
見張りの粘魚はそう難しくない。
扉の外の部屋から通路までの間をうろつかせて、視覚と聴覚で警戒させておけばいい。
慎重にいかなければならないのは街を飛ばせている1匹だ。
街にはモンスターが溢れている。
動きの遅い魚では、攻撃を受けてしまうかもしれない。
まあそうなったら粘魚が攻撃された時どうなるのかの実験になるのでそれはそれでいい。
俺は粘魚を操って街の探索を始めた。
街を見て回るとあちこちにモンスターが歩いている。
植物型のモンスター、それを食べる牛型や羊型のモンスターの群れ、更にそれを狩る狼型のモンスターの群れ、あちこちに街の廃材で砦を築く人型のモンスター。
そこにはもはや新たな生態系とも呼べるようなものが出来上がっていた。
よくよく考えるとダンジョンとかモンスターとか、スキルとかってのは本当にわけのわからん存在だ。
真面目に考えると頭がおかしくなりそうなので俺は考えるのをやめた。
モンスターたちの観察もそこそこに、街の中心地にある巨大な塔に目を向ける。
あれがダンジョンか。
天高く聳え立つその塔は、雲の上まで伸びていてどのくらいの高さがあるのかわからない。
東京タワーやスカイツリーよりも確実に高いな。
俺は少し塔に近づいてみる。
塔に近づくごとに、空を飛ぶモンスターが増えていく。
鳥型のモンスターや、鳥と人間が混ざったようなハーピーというモンスターが多い。
案外モンスターは粘魚に興味を引かれないようで、俺が操る魚はモンスターが飛び交う空を悠々と泳いでいった。
塔まで1キロくらいの位置まで近づくと、そこには不思議なものが並んでいた。
石像だ。
塔の周囲を囲むようにして、3、4メートルはありそうな大きな石像が数百体くらいずらりと並んでいる。
まるでストーンサークルだ。
石像の意匠は捩じくれた角とヤギのような顔、背中に翼を持つ悪魔のような姿だ。
めちゃくちゃ怪しい石像だな。
昔ゲームでこんな感じの奴と戦ったことがある。
ガーゴイルっていったっけな。
近づくと動き出すパターンの敵じゃねえかよ。
どう考えてもそのへんの雑魚敵じゃねえな。
こういうのはゲームだったら重要アイテムが手に入る部屋の扉の前とかで出てくるんだよ。
その門番キャラがダンジョンをぐるりと囲むように数百体も陣取ってるとか、確実にこいつらを倒さないとダンジョンには近づけないというパターンだ。
俺は試しにガーゴイルに近づいてみた。
粘魚が攻撃を受けるとどうなるのかはわからないが、最悪消えても俺が死ぬわけじゃない。
5メートルくらいまで近づくとガーゴイルはその鋭い眼光で睨みつけてきたが、それだけだった。
歯牙にもかけないとはこのことだ。
ガーゴイルに挑むには生身の身体でなければならないのかもしれない。
あんなおっかない悪魔の石像と生身で戦うなんて絶対嫌だな。
襲ってこないならこないで素通りできるからいいのだが。
俺はガーゴイルの横を素通りして塔へと近づいた。
ガーゴイルの内側の街並みはかなり破壊され尽くされていて、鉄筋コンクリートが剥きだしになってしまっている建物ばかりだ。
高層マンションの上には大きな鳥だかなんだかわからないモンスターが巣を作っている。
鳥なのに4足歩行の奴だ。
頭から翼くらいまでは猛禽類のような姿だが、後ろ足から尻尾にかけては猫科の動物のようなしなやかさを感じる。
先っちょだけフサフサの毛が生えたあの尻尾はライオンだよな。
上半身は猛禽で、下半身が獅子、そんな幻獣がいたっけな。
グリフォンとかいうやつだ。
ここいら一帯はグリフォンの巣があるエリアのようだな。
ガーゴイルを倒したと思ったらグリフォンが待ち構えているとか鬼畜すぎる。
もうさすがに何も待ち構えてないよな。
グリフォンも当然小さな魚のことなど見向きもしないので俺はグリフォンの巣だらけの廃墟群を呑気に泳いで塔へと更に近づいた。
もう塔までは数十メートルしかない。
そこまで来るとよくわかる。
こいつらが最後の関門か。
「ドラゴン……」
塔の外壁にはたくさんの突起のようなものが生えており、そこには巨大なドラゴンたちが待ち構えていたのだ。
空からこの塔に近づくのは絶対に不可能だろうな。
塔の周囲を守るように配置されたモンスターはすべて飛行能力を持っている。
下から上っていくダンジョンを、空から攻略するなんていうズルができないようになっているのだろう。
しかしドラゴンも粘魚には全く反応しないし、俺ならば直接塔の頂上付近まで行けるのではないだろうか。
俺は高度を上げ、塔の頂上を目指した。
雲を追い越してもまだ塔の先端が見えない。
どれだけ高い塔なんだよ。
1時間ほど飛ぶと、ようやく終わりが見えてくる。
塔の屋上には何かキラキラ光る山のようなものが見えた。
光を反射して眩いばかりに輝いているのは、1匹のドラゴンだった。
黄金のドラゴン、それがこの塔の頂上に君臨するボスらしい。
めちゃんこ強そうだな。
よく見ればドラゴンの背中の後ろには、山と積まれた本物の黄金もある。
あいつを倒せばあの黄金も手に入るということか。
これぞダンジョンって感じだな。
黄金のドラゴンは例に漏れず粘魚には興味無しって顔してぼへっとしているが、俺ならあのドラゴンを倒さなくても黄金だけ手に入れられるんじゃないのか?
俺は粘魚を黄金の山に突撃させた。
しかしダンジョンから1メートルくらいのところまで近づくと、動きが止まる。
何か見えないバリアのようなものに阻まれてこれ以上近づくことができないのだ。
さすがにこんなズルは許してくれないか。
よく考えたら黄金なんて手に入れて何になるんだ。
今は食べ物の方が価値がある。
俺は後ろ髪を引かれながらも、街の探索に戻った。
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