転生した異世界と日本が繋がってしまった

兎屋亀吉

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4.召喚魔法

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 次の日。
 いつものように朝早くに目が覚める。
 今日は神様に鎮座されることもなく爽やかに起きられたな。
 洗面所に向かうと日野がすでに起きて昨日渡したナイフで髭を沿っていた。
 さすがは自衛官だ。

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 俺も顔を洗ったら髭でも剃るかな。
 今日は人がたくさんいる町に向かうからな。
 髭もじゃ狩人スタイルじゃあ女にモテないかもしれない。
 やはり男はいくつになっても女からかっこいいと思われたい生き物だ。
 俺は歯を磨いて顔を洗うと、髭をかっこよく整えていく。
 鏡に映った顔は赤みがかった茶髪に白い肌の白人種っぽい顔立ち。
 歳は20代後半くらいには見えるだろうか。
 狩人になってここで暮らし始めてかれこれ10年くらい。
 その間若返りの秘薬を使っていないので少しは大人の貫禄も出てきているな。
 髭をアゴだけに残して少し実業家っぽい感じを出してみるか。

「髭かっこいいですね。自衛官はアゴ髭だめなんですよね。防護マスクをかぶったときに外の空気がアゴから漏れてきちゃうんで」

「へぇ、アゴ髭以外はいいのか」

「ええ、鼻の下だけだったら生やしている人もいますよ。そのへんは部隊によっても緩い厳しいは分かれるんじゃないですかね」

 てっきり自衛官といえば髭は全部だめなのかと思っていたが、案外自由なんだな。
 よく考えたら俺は元日本国民のくせに自衛隊のことをあまり知らないな。

「自衛官って普段どんな生活をしてるんだ?」

「基本は寮生活ですね。朝6時に起きて点呼と健康チェックして、部屋の掃除をしてから朝ごはんです。日中は訓練してます。訓練が終わるとご飯を食べてお風呂に入って23時までには寝るって生活ですよ」

「やっぱり忙しいのか。休みとかはどうなってる」

「公務員なんで普通の自衛官は8時間弱勤務の土日休みですよ。お盆とお正月には纏まった休みも取れますし」

 自衛隊っていうのは激務のイメージだったから意外だな。
 まあ日々の訓練はきついだろうし、週に2日くらいは休みが無ければやっていけないか。

「僕も質問していいですか?」

「ああ、なんでも聞いてくれ」

「やっぱりエルフってめちゃくちゃ美人なんですか?」

「そりゃあもう目が潰れるくらいに」

「うわぁ、楽しみだなぁ。今日はこれからエルフがいっぱいいるところに向かうんですよね。僕、楽しみで昨日は眠れなくて」

 やけに早起きだったのは自衛官だからってわけじゃなかったのかよ。





 身支度を整え、軽く朝飯を腹に収めた俺たちは家を出て玄関に鍵をかける。
 家には金目のものは置いていないが、妙な輩が住み着いたら嫌だからな。
 念入りにセキュリティーをかけておかなければ。

「それにしても、昨日の鳥なんでしたっけ。ピポル?めちゃくちゃ美味しかったですよ。さすが異世界ですね」

「あんなのは異世界でもなかなか食えない。家が建つほどとはいわないが、一切れの肉を食べるために1年分の家賃くらいの金額がかかるんだよ」

「そうなんですね。それが偶然昨日に限って獲れたと。なんか運命神のいたずら心を感じますね」

「そうだな」

 確かにあの人は結構そういうところがある。
 今日は運がいいなと思わせておいて大どんでん返しとか好きだからな。
 因果律をいじられたのかもしれない。

「僕も運命神の導きで美人のエルフと出会いたいなあ」

「エルフなんてみんな美人だから安心しろ。ここはエルフ領だって昨日言っただろ。これからそのエルフ領の中心である首都に向かう。たくさんエルフはいるが、ねんごろになれるかどうかは自分の頑張り次第だな」

「わかりました、頑張ります!でも、歩きで行くんですか?」

「歩きじゃあ7日以内には帰ってこられない。だからこいつを使う」

 俺はアイテムボックスから一つの古い契約書を取り出す。
 こいつはただの契約書ではない。
 魂と魂で交わす魔法の契約書だ。
 いわゆる召喚魔法というやつに使う。

「羊皮紙ですか?魔法の絨毯みたいにそれに乗れるとか?」

「惜しいな。乗れるものを呼び出す」

「もしかして召喚術ですか?わぁ、すごいな!」

「まあ似たようなものだよ。ちょっと離れてな」

「はい!」

 俺はスクロールを開き、描かれた精巧な魔法陣に魔力を流す。
 今でもしっかりと魂の繋がりを感じる。
 生きているな。
 この世界の食物連鎖は苛烈だ。
 俺は何匹かの魔物と契約しているが、放っておいたら死んでいたやつも少なくない。
 召喚生物はペットとは少し違うが、やはり一度は魂の契約を結んで心を通わせたやつが死んでしまうのは悲しいものだ。
 契約書から相手の感情が伝わってくる。
 伝わってきたのは懐かしいという感情と親愛の情。
 俺もだ。

「来い」

 召喚魔法は俺の部屋のクローゼットにある世界を繋ぐ次元の扉に似ている。
 契約書がお互いの魂の位置情報を伝え、その間に次元の穴を開いてくれる。
 ジャンボジェットが通れそうな大きな次元の穴が開き、巨大な竜が飛び出してきた。
 正確には亜竜の一種、ワイバーンだ。
 ドラゴンライダーに憧れて竜と契約したかったのだが、竜っていうのはどいつもこいつも気性が荒くて気に食わないやつばかりだった。
 そんなときに出会ったのがこのワイバーンだ。
 名前はノブナガ。
 前世で飼っていた猫と同じ名前だ。

「ノブナガ、久しぶりだな」

「グルルルッ」

 ノブナガはそのトカゲ面を俺に擦りつけて親愛の情を現してくる。
 相変わらず可愛いやつだ。
 分からずやの高位竜共に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
 ノブナガの首には俺が身を守るためにつけてやった防御用の魔道具がボロボロになってぶら下がっていた。
 これが今日までノブナガを守ってくれたのかもな。
 新しいのに変えてやるか。

「よし、今新しい魔道具を首につけてやるからな」

「グルルゥ♪」

「そうか、うれしいか」

 ノブナガのすべすべとした鱗肌を撫でてやる。
 冷たくて気持ちがいい。

「あの、リノスさん。そろそろ近づいても大丈夫でしょうか」

「あ、ああ。すまん忘れていた。こいつに乗って首都に行くんだったな。近づいても大丈夫だ。こっちに来て撫でてやってくれ」

「は、はい。失礼します」

 日野は恐る恐る近づき、ノブナガの鼻面にそっと触れた。
 冷やっこくて気持ちがよかろう。

「沖縄でアミメニシキヘビに触ったときみたいな感触です」

「へぇ、俺はあっちで大きな爬虫類に触ったことはないけどこういう感触なのか」

 蛇を首に巻いて愛でる人の気持ちも少しくらいは理解できた。
 そろそろ行くか。

「じゃあ乗るか。立ちっぱなしはきついだろ。鞍を取り付けるから手伝ってくれ」

「わかりました」

 久しぶりに空の旅だ。
 鞍の取り付け方がうろ覚えだが、まあなんとかなるだろ。



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