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逸文 比翼連理 三十一
しおりを挟むりくは、すでに惑乱のなかにあったが、熱くなった頭の片隅で、これは意外だ、という気持ちがあった。
蠣崎新三郎は、もっとひたむきに、不器用に、つまりは、無我夢中で女の躰に武者ぶりついてくるものと、どこかで想像していた。いかにも余裕なく、貪ってくるのだろう、と。そんな若旦那の未熟な可愛さを想像すらしていた。
だが、いま、りくが懸命に受け止めている新三郎の愛撫は、齢のわりには小面憎いほど巧妙ではないのか。若者らしい自己本位の性急さや乱暴さはなく、ひどく丹念に、女の躰を可愛がってくる。自分の欲を抑えて、女の躰を燃やすことに集中しているようだった。
いまのりくは、胸の先が脳と繋がったようになっている。新三郎の唇と指に、そうされてしまった。重く充血した乳首を、男は甘く噛み、女を震えさせた。りくは固く目をつぶった。いや、いや、と首を振ったけれど、新三郎の手は隆起に張り付き、揉み上げたかと思うと、敏感な突端を押し込み、立ち上がった片方を吸った。りくは、哭くしかない。頸が自然に上がり、はげしくのけぞった。
(なにも考えられぬ!)
心の中で悲鳴をあげた。いま、眼を開けても、淡い光が差すだけで、一瞬は何も見えなかった。男の顔が、顎のすぐ下にある、そしてまた、張りつめ続けている胸に刺激が襲った。
(……!)
自分は何を言ったのだろう。わけのわからぬ呻き、悲鳴に過ぎなかったのではないか。しかし、新三郎はなにかを伝えられたらしい。頷くようにして、しかし唇はりくの立ち上がった乳首を加えたまま、撫でる手を激しく上下する女の腹の下に伸ばしていく。
りくは小さな悲鳴をあげた。また、いや、という声が漏れる。新三郎は動じないのか、やさしく撫でるような手の動きを、りくの下腹部の、ややこわく、黒い繁みまで降ろした。
「はずかしいっ。いや、いや!」
「……厭か、りく?」
(あ。)
りくは慌てて首を振った。
「厭じゃございませぬ!」そして、そんなことはわかっていたという風の、少し汗の浮いた新三郎の笑顔を目にして、激しい羞恥が湧く。「……じゃが、恥じかわしい!」
新三郎は、その声に猛ったようだった。りくの泉を撫でていた指を、突き入れた。
「あ?」
りくの全身が、反り返った。新三郎の指は、鉤のように中で曲がった。豊かに潤った箇所の、奥へと入っていく。りくは濃い息を吐きながら、身をよじるしかない。
一定の間隔で指を動かしながらも、新三郎の唇は休まない。熱くなり、汗を噴き出した肌のあちこちを舐めた。唇をまた吸った。りくは新三郎に、すがりつくようになった。息が苦しくなるまで、唇と舌を貪った。背中にまわした白い腕が、男の躰を離さない。新三郎は不自然な姿勢のままで、震え、わななき続ける躰の奥を掻きまわしつづけ、やがて中に埋め込む指の数を増やした。りくは息も絶え絶えになる。
「いけない……もう、いけませぬ。お願い、若旦那、やめて……。やめにして。」
新三郎はもちろん、言うことを聞いてやらない。経験が、こういうきわの女の制止を、聞いてやってはならないのだと教えていた。
無言のまま、重くそそりたって色を濃く変えた乳首を甘噛みした。同時に、折り曲げた二本の指で、女の内部を衝いた。
りくは一瞬で大量の汗をかいて、新三郎の肩の下で力を喪った首をおとした。瞬時、快感の電撃に打たれている。
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