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外伝 花精の甘露3
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「花祭りおめでとう!!」
「ぎゃっ!!」
街に入るなり、顔に水を引っかけられてエリファレットは悲鳴を上げた。ラウに言われた通りにフードをかぶっていたので、瞬間飛び出た耳が見られることはなかったが、濡れた顔にふるりと頭を振る。
エリファレットに水を引っかけたのは、まだ少女にもならない子どもで、エリファレットの仕草を見るとケラケラと楽しそうに声をあげて笑った。
「アルセイーの都に来るのは初めて? 今はね、花祭りの季節なのよ! 皆んなに花水をかけて回るの!」
彼女は柄杓とバケツを持ち、驚いて目を瞬くエリファレットの頭からもう一度水を垂らした。するりと水の跡を伝って、色とりどりの花びらがエリファレットにへばり付く。
「……花の匂いがします……」
花びらを摘んで、エリファレットはくんっと鼻を動かす。
彼女の持つバケツの中には、水と花びらが詰まっていた。
「アルセイーの花祭りは、この花水をかけて花の精霊を喜ばせるらしい。フラフラしてると、至るところから水をかけられるぞ」
エリファレットの手を引き、ラウが自身の濡れた髪をかき上げる。
街に入るなり水を引っかけられるのは、この時期もはやお約束である。
ラウとエリファレットは水を引っかけられないように隅を歩きながら、宿屋を探した。
この祭りは、この地に古来から伝わるものをヒトが真似たものだ。花の精霊に感謝を示し、寿ぐ収穫の祭りでもある。エリファレットがこれから参加しようという祭りは、花の精霊そのものを詣るものだ。
花詣でと言われるそれは、百年に一度、アルセイーの花祭りに紛れて行われる。
「エリファレット、行き方は覚えているか?」
宿屋に入って一息つくまもなく、ラウはベッドに腰掛け、エリファレットの両手を引き寄せて問いかける。
花詣ではラウに参加資格がない。エリファレットが一人で花の精霊を詣で、甘露を受け取って来なくてはならないのだ。
心配だし、行かせたくない。はっきりとその目にそう刻むラウに、エリファレットは自信満々で頷いた。
「大丈夫です! 必ず貰ってきます!」
フードを脱いで、好きに耳と尻尾を出したエリファレットは、意気揚々と頷く。ピンと立つ耳と、ふわっさと揺れる尻尾がエリファレットのやる気をよく表している。
「何かあっても俺はすぐに助けにいけない。充分気を付けろ」
銀の狼族は戦闘能力が高い。万が一襲われるようなことがあってもある程度は対処出来るだろう。だがことエリファレットに関しては、少し無防備が過ぎる。
誰かを疑うことを知らない子どもだ。攻撃に対しての防御や反撃はできても、騙し打ちや詐欺に関してはいいカモだ。
エリファレットが無事に帰ってくるまで、ラウはその煩悶を抱えたまま待たなければならない。多少危険でも、自分が行ったほうがマシだと思えるほどだ。
だがエリファレットは嬉しそうに笑う。
「大丈夫ですよ、ラウ。僕もラウのお仕事のお手伝いができるんだと、ちゃんと証明してみせますから」
するりと両手を首に回したエリファレットが、ラウに乗り上げて頭を擦り付ける。耳が垂れて毛束の多い尻尾がゆったりと振られて、ラウの手を掠めていく。
ラウはエリファレットの腰を抱え、肉感ある耳に触れながらそばにあった額に口付ける。
「……早く帰ってこないと、探しに行くからな」
やわやわと耳を揉み込まれ、とろりと瞳を潤ませたエリファレットが吐息で笑う。
「……ダメですよ、ラウ……おとなしく僕を待っていてくださいね……」
「ぎゃっ!!」
街に入るなり、顔に水を引っかけられてエリファレットは悲鳴を上げた。ラウに言われた通りにフードをかぶっていたので、瞬間飛び出た耳が見られることはなかったが、濡れた顔にふるりと頭を振る。
エリファレットに水を引っかけたのは、まだ少女にもならない子どもで、エリファレットの仕草を見るとケラケラと楽しそうに声をあげて笑った。
「アルセイーの都に来るのは初めて? 今はね、花祭りの季節なのよ! 皆んなに花水をかけて回るの!」
彼女は柄杓とバケツを持ち、驚いて目を瞬くエリファレットの頭からもう一度水を垂らした。するりと水の跡を伝って、色とりどりの花びらがエリファレットにへばり付く。
「……花の匂いがします……」
花びらを摘んで、エリファレットはくんっと鼻を動かす。
彼女の持つバケツの中には、水と花びらが詰まっていた。
「アルセイーの花祭りは、この花水をかけて花の精霊を喜ばせるらしい。フラフラしてると、至るところから水をかけられるぞ」
エリファレットの手を引き、ラウが自身の濡れた髪をかき上げる。
街に入るなり水を引っかけられるのは、この時期もはやお約束である。
ラウとエリファレットは水を引っかけられないように隅を歩きながら、宿屋を探した。
この祭りは、この地に古来から伝わるものをヒトが真似たものだ。花の精霊に感謝を示し、寿ぐ収穫の祭りでもある。エリファレットがこれから参加しようという祭りは、花の精霊そのものを詣るものだ。
花詣でと言われるそれは、百年に一度、アルセイーの花祭りに紛れて行われる。
「エリファレット、行き方は覚えているか?」
宿屋に入って一息つくまもなく、ラウはベッドに腰掛け、エリファレットの両手を引き寄せて問いかける。
花詣ではラウに参加資格がない。エリファレットが一人で花の精霊を詣で、甘露を受け取って来なくてはならないのだ。
心配だし、行かせたくない。はっきりとその目にそう刻むラウに、エリファレットは自信満々で頷いた。
「大丈夫です! 必ず貰ってきます!」
フードを脱いで、好きに耳と尻尾を出したエリファレットは、意気揚々と頷く。ピンと立つ耳と、ふわっさと揺れる尻尾がエリファレットのやる気をよく表している。
「何かあっても俺はすぐに助けにいけない。充分気を付けろ」
銀の狼族は戦闘能力が高い。万が一襲われるようなことがあってもある程度は対処出来るだろう。だがことエリファレットに関しては、少し無防備が過ぎる。
誰かを疑うことを知らない子どもだ。攻撃に対しての防御や反撃はできても、騙し打ちや詐欺に関してはいいカモだ。
エリファレットが無事に帰ってくるまで、ラウはその煩悶を抱えたまま待たなければならない。多少危険でも、自分が行ったほうがマシだと思えるほどだ。
だがエリファレットは嬉しそうに笑う。
「大丈夫ですよ、ラウ。僕もラウのお仕事のお手伝いができるんだと、ちゃんと証明してみせますから」
するりと両手を首に回したエリファレットが、ラウに乗り上げて頭を擦り付ける。耳が垂れて毛束の多い尻尾がゆったりと振られて、ラウの手を掠めていく。
ラウはエリファレットの腰を抱え、肉感ある耳に触れながらそばにあった額に口付ける。
「……早く帰ってこないと、探しに行くからな」
やわやわと耳を揉み込まれ、とろりと瞳を潤ませたエリファレットが吐息で笑う。
「……ダメですよ、ラウ……おとなしく僕を待っていてくださいね……」
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