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外伝 花精の甘露6
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道はいつの間にか暗い中を真っ直ぐに歩くだけになっていた。上り坂であるのか、蕾の明かりが列をなして連なっている。
(この道、いつまで続くんだろう……?)
果てがないように長く明かりが続いている。すでにエリファレットに、どれほど歩いたのかと言う感覚はない。長く歩いたような気もするし、ラウと別れて幾許も経っていないような気もする。
(ラウは、心配しているかな……)
最後まで、エリファレットがこの仕事を受けることに難色を示していた。それでも強く否定するしなかったのは、エリファレットの意思を尊重してくれたからだ。
世界中を見て回りたいと言ったエリファレットの願いを、ラウはきちんと叶えようとしてくれている。
エリファレットはそれが嬉しい。だがエリファレットの望みを叶えるために、ラウが意見を押し殺して我慢をすることは本意ではない。心配をさせるような言動を、エリファレットはしてはならないのだ。
(帰ったら謝らないと……)
ラウはきっと、仕方なさそうに笑って抱きしめてくれるだろう。あの腕の中にいる時が、一番安心できる。世界に自分がちゃんと存在しているのだと、存在していいのだと実感できる。
思い出してしまったら、すぐにでもラウの腕の中に飛び込んでしまいたくて、エリファレットはむむっと眉を寄せた。
そのためには、早く花精の甘露を貰わなければならない。
「あのっ……!?」
この道はどこまで続くのか、まだまだかかるのか、尋ねようと顔を向けて、エリファレットは目を見張った。
隣を歩いていたはずの竜人がいない。たまたま出会って道なり歩いていただけだ。目的地が一緒でも連れ立って行く必要はない。だがついさっきまでいたはずの竜人は、前後左右どこにも見当たらない。
おかしいな、と思った次の瞬間、エリファレットの視界が変わった。
「ふぇ……?」
夜道を淡い明かりに照らされながら、滔々と続く坂道を歩いていたはずだった。だが今はエリファレットの眼前には、篝火がいくつもの焚かれ、見上げるほどに大きな木の幹があった。
パチパチと爆ぜる火が、エリファレットの足を無意識に止めさせる。
「ここは……どこ……?」
はぇーと上を見上げ、延々と幹しか見えない巨木に目を凝らす。
夜を纏う巨木は暗く先が見えない。だが篝火とエリファレットの持つ蕾とで、周囲はくっきりと明るい。
エリファレットは目を瞬き、きょろきょろと周囲を見渡す。ピンと両耳が立ち、ピクピクと前後に動いて警戒をする。
その耳に届いた微かな物音に、エリファレットはふわっと尻尾を立てた。
明かりが届かない暗がりから、何かがやってくる気配がする。
警戒したままじっと目を凝らすと、茎と葉っぱでできた奇妙な生き物が躍り出た。両手両足は青々としたまあるい葉っぱで、蔦が絡まるように体の形をなしている。
細長い体に大きな顔がついて、ひどくバランスが悪そうだ。薄ピンク色の髪をひらひらとなびかせて、小器用にまあるい足を動かして歩いてくる。
エリファレットの膝丈ほどしかないそれは、エリファレットのそばまでくると何かを差し出した。
悪意も害意も感じないそれに警戒を解いたエリファレットはしゃがみ込み、差し出されたものを受け取る。
一片の花びらだった。肉厚で弓形になり、出来た窪みに何かが入っている。
マジマジと見つめていると、奇妙な生き物が葉っぱの両手を揃えて口元に持っていく仕草を繰り返す。
「……飲め、って、こと……?」
尋ねると、それがしっかりと頷いた気がした。
エリファレットは躊躇わずにそれを煽った。
こっくりと甘い芳香が鼻を抜けて、喉を通っていく。冷たく甘いそれは、どんなものよりも芳醇な味がした。
くらりと眩暈がして、蕾を持っていない手で体を支える。座っているのに、地面の柔らかさで体が安定しない。
(あれ……?)
ふわふわと頭が揺れて、意識が呑まれる。
その頭に、何かが触れた。大きな葉のような、花びらのような感触だった。
『……稀なる存在になりし銀の狼族の仔よ……寿ぎを……其方の行く道に幸多からんことを……』
(この道、いつまで続くんだろう……?)
果てがないように長く明かりが続いている。すでにエリファレットに、どれほど歩いたのかと言う感覚はない。長く歩いたような気もするし、ラウと別れて幾許も経っていないような気もする。
(ラウは、心配しているかな……)
最後まで、エリファレットがこの仕事を受けることに難色を示していた。それでも強く否定するしなかったのは、エリファレットの意思を尊重してくれたからだ。
世界中を見て回りたいと言ったエリファレットの願いを、ラウはきちんと叶えようとしてくれている。
エリファレットはそれが嬉しい。だがエリファレットの望みを叶えるために、ラウが意見を押し殺して我慢をすることは本意ではない。心配をさせるような言動を、エリファレットはしてはならないのだ。
(帰ったら謝らないと……)
ラウはきっと、仕方なさそうに笑って抱きしめてくれるだろう。あの腕の中にいる時が、一番安心できる。世界に自分がちゃんと存在しているのだと、存在していいのだと実感できる。
思い出してしまったら、すぐにでもラウの腕の中に飛び込んでしまいたくて、エリファレットはむむっと眉を寄せた。
そのためには、早く花精の甘露を貰わなければならない。
「あのっ……!?」
この道はどこまで続くのか、まだまだかかるのか、尋ねようと顔を向けて、エリファレットは目を見張った。
隣を歩いていたはずの竜人がいない。たまたま出会って道なり歩いていただけだ。目的地が一緒でも連れ立って行く必要はない。だがついさっきまでいたはずの竜人は、前後左右どこにも見当たらない。
おかしいな、と思った次の瞬間、エリファレットの視界が変わった。
「ふぇ……?」
夜道を淡い明かりに照らされながら、滔々と続く坂道を歩いていたはずだった。だが今はエリファレットの眼前には、篝火がいくつもの焚かれ、見上げるほどに大きな木の幹があった。
パチパチと爆ぜる火が、エリファレットの足を無意識に止めさせる。
「ここは……どこ……?」
はぇーと上を見上げ、延々と幹しか見えない巨木に目を凝らす。
夜を纏う巨木は暗く先が見えない。だが篝火とエリファレットの持つ蕾とで、周囲はくっきりと明るい。
エリファレットは目を瞬き、きょろきょろと周囲を見渡す。ピンと両耳が立ち、ピクピクと前後に動いて警戒をする。
その耳に届いた微かな物音に、エリファレットはふわっと尻尾を立てた。
明かりが届かない暗がりから、何かがやってくる気配がする。
警戒したままじっと目を凝らすと、茎と葉っぱでできた奇妙な生き物が躍り出た。両手両足は青々としたまあるい葉っぱで、蔦が絡まるように体の形をなしている。
細長い体に大きな顔がついて、ひどくバランスが悪そうだ。薄ピンク色の髪をひらひらとなびかせて、小器用にまあるい足を動かして歩いてくる。
エリファレットの膝丈ほどしかないそれは、エリファレットのそばまでくると何かを差し出した。
悪意も害意も感じないそれに警戒を解いたエリファレットはしゃがみ込み、差し出されたものを受け取る。
一片の花びらだった。肉厚で弓形になり、出来た窪みに何かが入っている。
マジマジと見つめていると、奇妙な生き物が葉っぱの両手を揃えて口元に持っていく仕草を繰り返す。
「……飲め、って、こと……?」
尋ねると、それがしっかりと頷いた気がした。
エリファレットは躊躇わずにそれを煽った。
こっくりと甘い芳香が鼻を抜けて、喉を通っていく。冷たく甘いそれは、どんなものよりも芳醇な味がした。
くらりと眩暈がして、蕾を持っていない手で体を支える。座っているのに、地面の柔らかさで体が安定しない。
(あれ……?)
ふわふわと頭が揺れて、意識が呑まれる。
その頭に、何かが触れた。大きな葉のような、花びらのような感触だった。
『……稀なる存在になりし銀の狼族の仔よ……寿ぎを……其方の行く道に幸多からんことを……』
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