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愛をもらって

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俺は偏差値67の高校をギリ入学できた平凡な高校生である。成績は下から数えた方が早く、運動は可もなく不可もなく出来る。(下手な方)
顔は中の下。(友達曰く)目は三白眼で大きいのだが、よく睨まれているように見えると言われる。アニメや漫画が大好きで、よく家に閉じこもっている。(遊ぶ友達が居ないわけでもないわけでもない。)
食っては寝てアニメを見る習慣があるせいか腹が少し出ている。

それが俺。南雲さらである。

そんな平凡な俺は…

「も~さっちゃん!たまには外に出かけなさいよ~?ったく、そんなだからパートナーが出来ないんだから!ちゃんと20までには体液摂取できる人間探さなきゃ! 国が提供してくれてる精子提供サイト、くっそ高いんだからね!?ママ、流石に心配だわぁ」

サキュバスなのである。


サキュバスとは、人を誘惑し、体液を摂取して生きる下級悪魔である。
え、サキュバスは普通女だろ?って思うだろ?
その通りなのだが、母の遺伝子を色濃く受け継いでしまった俺は平凡な男なのにサキュバスというデメリットを持ってしまったのである。
こんななりじゃそりゃ女にはモテないし、男も好んで俺がいい!って言う奴は変人かよっぽど目がおかしい奴だけだろう。
でも生きていくためには絶対にパートナーが必要なのだ。
一応情けとしてバイトはしているが国が提供している精液はくっそ高いから、雀の涙ほどしか賄えていない。

「ごめん、母さん。俺多分一生パートナー無理。こんな俺好きになる奴なんかいねぇし。まぁ20なったら死んでやるから。今のうちに俺に高い保険金入れといて。」
「はぁ!?もう!いっつもそういう冗談ばっかね!あんたは!まぁ…、ママと似たはいいけど、男に産まれちゃったからね…ママは女だから父さん捕まえれたけど、…あ、これママが悪いのかしら?」

もうこの話やめましょ!夕飯にするわよ~
と、自分に都合の悪いことは無かったことにする母さん。母さんは平凡ながらも女ということを武器にして体液摂取をしていたらしい。しかし母さん。どの道どっちに似たって変わりはないのだ。
父さんも大した顔してない。


「おい、南雲~次体育でバスケだってよ。早くしろよ」

いつも通り高校へ行き、体育の時間になった。
体育…俺の最も嫌いな授業の1つ…

「へ~い」
「はーやーく。……ほんと、お前はスポーツした方がいいぜ」
「は?どこ見て言ってんの」
「お前の腹」

数少ない友人である瀬戸に肘鉄を食らわせてやった。

「あで!おま、体育の時間覚悟してろよ!」
「は!?帰宅部に本気出されても困るンだが!?」

瀬戸は野球部員である。
野球部は球技全般上手いと俺は見ている。だからやめて欲しい。

ピピーーーっ

「よっし、集まったな。今から5人グループ作って試合をするから、決めてくれ」

準備運動を一通り終えた俺たちは今から5対5で試合をすることとなった。
はぁ…嫌だなぁ。どうせ俺はあまりもんだ。瀬戸は野球部でもかなり強い方だからすでに取られてるし。

「あ…南雲くん。1人休んでるから、俺らのとこ入る…?」
「あ、伊藤…!助かるよ。ありがとう」

伊藤はクラスの中でも大人しめであり、漫画やアニメが好きということでたまに話す。
良かった…!

「やばいやばい!神崎止めろ!」
「おい!アイツの方にボール送んなっつったろ!」
「くそ!ゴールの方行け!」

お、もう試合してる。運動出来る奴らはいいなぁ…
わ、やっぱすご。神崎りと。
運動真剣抜群で進学校の中で常に成績1位を取り続けている。親が実業家でとんでもない金持ちなんだとか。また、180くらいある身長にモデル体型、そこにまぁとても綺麗な顔が付いてる。
サラサラツヤツヤの髪が羨ましい。

「あ、すご。神崎くんゴールした。」
「んね、瀬戸がめっちゃ悔しがってる」
「はは、神崎くん色んな部活から勧誘来てるのに、
どこも入らないんだよね。」
「あぁ、瀬戸いわくバイトしてるかららしい。親が社会経験とか言ってやらされてるらしいよ。あいつも野球部来て欲しいのにっつってたな」
「へぇ~そうなのか、金持ちの気持ちってわかんないな…あ、そういえば南雲くんもバイトしてたよね?」
「あぁ、最近辞めたんだよ。次は家から少し遠いレストランにするんだ。」
「ふふ、やっぱオタ活、のためでしょ?」
「そう…当たり前だろー?」

まぁ精子の為…とは言えないわな…
とはいえ、前のバイト家から近かったのに、すぐに閉店してしまったんだよな。時給も良かったのに…でも次のバイトは交通費支給、高時給だから最高っちゃ最高だ。今日はそのレストランのバイト初日。前のバイトも飲食店だったから。すぐに慣れるはず…

ーーーーーーー

「え」
「あ」

「か、神崎?」
「おっと知り合いかね?丁度良かった。神崎くん。この子に色々教えるのを頼むよ。」
「はい。わかりました。」

びっっくりした。バイト先に神崎がいるとは…
俺の家は高校から結構遠いからここなら知り合いも
流石に居ないだろうと思ったのに…

「南雲くん、よろしくね。俺もここでバイトしてたんだ。」
「知ってる。瀬戸から聞いた。」
「はは、あいつかぁ。て言ってもここ来て半年だから、全然できない方なんだよね。」
「親から社会経験しろって?」
「!、もう瀬戸に話すの辞めるよ…」
「ははっ瀬戸悔しがってたよ、野球部来て欲しいって」
「ん~…俺が部活してると、色々トラブルあったから
極力入りたく無いんだよね…」

ここでドリンクとか入れて…

と神崎に言われたことをメモしながら学校の事を話していく。神崎、ちゃんと話したことが無かったけど、
めちゃめちゃ話しやすいやつなんだなぁ…

「トラブルって?」
「中学の時サッカー部入ってたんだけど、マネージャーが俺の私物取ってたの。笑えるでしょ」
「うへぁ…モテるってすげぇな…」
「さらにそれを売ってた」
「やべぇな…」

そら入りたくないわ。うん。
てかマネージャーでも知らんやつにもの取られて
売られるとか怖いよ、普通に。

「まぁ色々あったんだよ。中学の同級生と離れるために実家から遠いここで一人暮らしして、今本当に気が楽。」
「へ、一人暮らししてんの!?凄いなぁ」

なんか、話聞く度に神崎の株が上がっていく。
一人暮らしして、バイトもして、その上成績も1位。
凄い。とりあえず凄い。尊敬するよ普通に。

「はは、ごめんな。南雲くん凄く話しやすいから、
ついつい俺ばっか話しちゃってた。」
「!、…ううん。神崎のことすんげえ尊敬するよ。」

…クラスが一緒だから分かるけど、神崎は誰からも頼りにされている。部活も勿論、勉強も。さらに先生にまで
「神崎がいたらうちのクラスは安泰」と言われる始末だ。
そりゃ1人の人間に全部背負わされても、、て感じだよな
中学の時もそんなことがあったんだろうな。今の神崎の周りの人達も見て、俺が今神崎と話してて分かる。

すんごく良い奴なんだ。
「ほんと、困ったことあったら何でも言ってくれよ。」




「………………そんなこと、初めて言われた…」


少しの沈黙の末、目を見開いて驚く神崎。え、そんな?大したこと言ってないよな…?

「ありがとう。南雲くん。」

そうやってふわっと軽く笑う神崎は驚くほどに綺麗で、
少し見とれてしまった。

「お、おぅ、別に大したこと言ってないけどな!」
 

そろそろバイトが終わる時間になり。

「南雲くん。ここのバイトどうだったかな?ここの従業員みんないい人達だから。何でも聞いてね。」

店長がそう言って高校生だから早く帰るようにね。
と促された。
うん。ここのバイト好きだ。みーんな優しくて雰囲気が良い。客層も若い人から年寄りまで、凄く人当たりがいい。
初めてのバイトで緊張することなく接客出来た。

「ありがとうございます。頑張ります!」
「うん、今後もよろしく頼むよ。」






「あ、南雲くん。俺と一緒に帰ろーよ」


俺が着替えてる途中、神崎が帰りを誘ってくれた。
俺も誘おうと思ってたから、神崎が誘ってくれて
俺は凄く嬉しくなった。

「俺駅方面なんだよね。」
「あ、そうなんだ?ここから結構遠い感じ?」
「うん。俺も同級生に会うの気まずいから遠いとこにしたんだ」
「そうなんだ。……駅まで着いてくよ」
「やったー神崎も駅方面なんだな。」
「……いや、俺は逆方向だよ。」
「!?だったらめっちゃ悪いよ!もうここら辺でいいよ」
「…………」
「神崎……?どした?」
「……南雲と、話したい……」




!?!?……!?なななな!?破壊力えぐぅ!?
あのいつでもキリッとして姿勢もよく凛とした佇まいのイケメンが子犬のようにぴえん(?)している。

「是非駅まで着いてきてください!!」

そして、俺達はクラスのこととか、たわいも無い話をして
駅に着いた。

「あ、もう着いたよ。ありがとうな。」
「ううん。またシフト被るといいなぁ」
「ほんと!そうだよな。その時はまた頼むよ。」
「うん。気をつけて。」
「おう、神崎もなーまた明日」


「はー、やっぱあれは規格外のイケメンだなありゃ」

神崎と駅前で別れたあと、ボソッと呟いた。
いやどこの角度から見ても不細工という概念がない。
さらに勉強もできるスポーツ人間。
そりゃ皆頼るわな。普通。

……でも、今日話してて神崎も人間なんだなと再確認させられた。中学の時の話をしてる神崎の顔があまりにも
切なそうで、深く話を安易に掘れなかった。
もっと仲良くなったら、過去のこととか胸の内を
沢山話してくれるのかな……

俺はそう思いながら駅の中へと入っていった。


ーーーーーーー


「あ!さら~!ちょっと来いよ!こっち!」
「えー?」

なんだ……?朝、学校に登校すると瀬戸の周りに男共が群らついている。
その反面、女子は訝しげな顔で瀬戸達を見ていた。一体何を見ていると言うんだ。

「なんだよ……」
「ほら!鈴木がめっちゃくちゃえぐいAV見つけたんだよっ!」
「お?」
「ぶは!食いつき早すぎ」

どうやらクラスのエロ担当鈴木が凄いAVを見つけたようだ。凄く美人な女の人に男がスパンキングをされている。
うわ、確かにこれはすごい。今までみたAVに出ている女の人の中で1番美人だ。確かにこれは凄い。
じっと見ていると、男がギブアップする際、チンコを除けて女の人の腹に大量の精子をぶっかけた。







(あ……めちゃめちゃ美味そう)



「おー!これやっべ!……なー、さら……さら!?」

ボタッボタタッ

はー、はー、は、は

「…?南雲?どうしたんだ!?」
「はは、興奮しすぎじゃね??」
「えろすぎだろはらwこんなやつだとは思わなかったぜー!!」
「おい、ヨダレくっそ垂れてるぞ、猿かよ」
「ははははは」


食べたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい

 
はっは、はーっはーっ

グラグラする、お腹すいた。食べたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたいお腹すいたお腹すいたお腹すいた


飲み……たい……


「さ……!さ……ら!ど……した?」

くそ……なんだ?グラグラする。あー……喉が無性に乾いてる……

「南雲……ん!だ…………ぶ?!?」


あ……倒れる。


ーーーーーーー



パチ


あれ、ここ、俺の部屋じゃん……学校は?



「あら、丁度起きたのね~。さっちゃん。ったくもぉ、ほんっとにばかねぇあなたは。……で、どれくらい飲んでないの?」
「あ……2、3日?」
「……だとしてもこうなるのは早いわねぇ……
何かあったの?」
「友達のAV見てた……そしたら無性にお腹空いて…」
「あらそう。ふふふふふふ」
「??、なんだよ……気持ち悪いぞ」
「いやぁお友達って♡あのすぅごくカッコいい子??」
「は?」
「ほんっとにカッコよくてママうっかり浮気しそうだったあわ♡」
「は、え?」
「あんたが倒れて!学校から連絡来たから迎えに来たら、神崎くん?だったかしら!もぉーすんごくかっこいいの!あんたのこと、ほんとに心配してて何この紳士♡って感じぃ」
「そーですか……」
「あ、あとママこの後友達と飲み会だから。
あとあと、明日は学校休みなさい。体液提供…届くの明日らしいから…ごめんね?」
「いや、大丈夫。早く行きなよ…」
良かった、やっと母さん遊びに行くんだ。
「……ねぇ、今ほんとにしんどいわよね?もういっそネットとかで体液提供してくれるパートナー探す?」

……は?

「…いいよ、俺20で死んでやるから」
「……やめてよ、私今日さっちゃんが倒れたって聞いて
ほんとに焦ったんだから。」
「…………」
「大好きなんだから。頑張って自分の為にバイト欠かさず行って、ママとパパが負担にならないようにって、そんな優しいさっちゃんが大好き。……パートナーのこと、真剣に考えておいてね。」
プチッ
「うるさい!!俺の事こんな体に産んだくせに!お陰で
今日から俺は笑われ物だよ!AVみてヨダレ垂らして興奮しすぎて倒れましたっ……て!……」



……やばい……い、言いすぎた。






「……ごめんね。

今日パパ夜中に帰ってくるって。
私もお酒飲むから、遅くなるかも。精の出るご飯たくさん作り置きしといたから。ちゃんと食べてね」


パタン、

扉が、静かに閉められた。

ありゃ、泣いてるな。だって、声が凄く震えてた。
どうするんだよ…この後の飲み会

「はー……なんで母さんの遺伝子貰っちゃったかな…」
そしたら体液飲まなくて済むのに。
そしたらお金かからないのに。
今後のことも……悩まなくて済むのに。



ピーンポーン


……時計を見ると今は昼の2時。勧誘かなんかだろうな。


ピーンポーン


ピーンポーン

ピーンポーン

「だぁ!うるせぇ!」

イライライライラ

インターホンを覗いてみる。

「は?神崎!?」

ガチャッ

「わ!あ、南雲!大丈夫か?」
「うん!大丈夫、だけど…お前学校は?」
「……さぼり?」
「さぼりって……っは!」

あの優等生の神崎がさぼり!

「すげぇな、ありがとう。母さんから聞いたけど
俺の事保健室で見てくれてたって?…あ!家ん中入りなよ!」
「うん。ほんとに急に倒れたから。びっくりしたよ。ありがとう。お邪魔します。」
「ごめんなぁ、まじ興奮しちゃって」
「……でも過呼吸気味になってたし…保健室連れていく時異様にお腹すいたって言ってたよ?
もしかして、、何かのびょ」
「あ、あぁー!なんか茶出すよ!あ、牛乳もあるぞ!飲むか?」
「……お茶お願いします」

神崎は少し切なそうにフッと笑った。
俺が話題に出したくないのバレたか……
神崎は本当に優しい奴だ。俺の感情を直ぐに読み取って
汲み取ってくれる。帰りの時もそうだったけど、
俺の事を気遣いながらも、話題に取り入ってくれる。
きっと優しいから出来ることなんだろうな。

「あづ!!」

暖かいお茶を出そうと湯を沸かしたが、思いのほか凄く暑かった。少し人差し指が赤くなってる。

「南雲くん!大丈夫?すぐ冷やして」

ばっと神崎は俺の手をとり、水道水の水に付けてくれた。

ち、近い…
手と手が触れて、俺達は凄く密着していた。

「、ちょ!神崎!近いっ……て……」

あ…神崎の顔。二重の切れ長で、目は黒茶の中に少し青が混ざってる。毛穴ひとつない綺麗な肌。唇は薄く、
そのパーツ一つ一つが神崎の小さくシャープな顔に収まっている。

神崎の……唇…


ド    ク    ン


舐 め た い








ちゅ







「へ、」


舐めたい


ちゅ、ちゅぅ


「ん、んん!? な、南雲く」


舐めたい、俺がそう思ってるのに神崎は受け入れてくれない。

「ちょ、南雲くん!一旦待って。」

ガシッと強く神崎に肩を掴まれ、俺は神崎を舐めようとしても出来なくなってしまった。

「一旦、落ち着こう。ほら、息吸って?吐いて。」


?、何を言ってるんだ?…でも神崎の真剣に俺を見る姿を見てたら、体が自然と言うことを聞く。

すぅー……はぁー……


ドクン……ドクン……ドク、ドク、ドク


「良かった。……落ち着いた?またあの症状出てたよ、、」

「あ、え……待って、俺。何、を?」

「もう、ここまで見てしまったんだから。本当のこと話してよ。俺、本当に君の事が大切だから。助けになりたい。」
「……そ、んな…聞いたたら絶対引くよ?…」
「そんな事は絶対にない。俺は南雲くんが何者でも引かない自信がある。」
「俺が悪魔でも…?」
「うん」
「殺人者でも?」
「うん」

真剣な目に、俺は少し狼狽えてしまう。
なんで神崎をこの家に入れてしまったのだろう。
家に入れずに帰らせれば俺のサキュバスの本能が
出ずに済んだのに。
なのに……神崎にキスしてしまった……
神崎は幸い気にしてないようだ。
本当に悪いことをしてしまった。
でも、悪いことと言っても俺にとっては仕方の無いこと。
俺の本当の正体を話して、神崎に謝ろう。

「実は俺……


サキュバスなんだ。」






「え……?」
神崎の目が点になった。
「っぁー……なんだ、下級悪魔のサキュバスって知ってるか?そのー……人の体液吸って生きるんだけど。」
「え、でも、それって架空の生物とかじゃ…」
「いや、全然そんな事ない。なんなら吸血鬼も小規模だけど世界中にいるし、カメラで取られたUMAとかもあれは本当に存在している。」
「サキュバスって…体液取らなかったらどうなるの?南雲くんはどうしてるの……?もしかして、恋人とか……」
……?なんか空気が重くなった。つか恋人とかいねえし!
いなかったらこんな事なんないし……
「んな!恋人はいた事ないよ…
体液を取らなかったら体が弱って、どうしても人の体液を舐めたいという欲が止まらない。俺は精子提供サイトから精子を貰って生きてる。」
「なるほど」
なぜか急にニコニコしだした神崎。どうしたんだ?
「そういうこと。だからさっきのは事故だと思ってくれ。俺の本能が先に動いてしまったんだ。
……本当にごめんな?」
「全然いいよ。あと
その精子提供の話なんだけど、俺じゃダメ?」
「っは!?」

は!え?何事??神崎から精子提供パートナーになってくれるって……これ、夢か。夢じゃないよな?
いや、めちゃくちゃ嬉しいけども……

「なんなら毎日提供出来るし!優良物件だよ、俺。」
「あー……それも凄く嬉しいけど…」
「南雲くんは体液どう摂取してるの?」
「サキュバスだから上からも下からも摂取出来る。
俺は大体上からだな。下からだと腹の張りが良くなるって聞いたことあるけど……」
「じゃあ今から提供するよ。」
「はぇ!?いや、物事には順序というものが……!」
「じゃあ、俺と付き合ってください。南雲くん。」


はぁぁぁぁっ何!今日なんかあるのか!?なんかおかしい、何かがおかしい!
試しに頬をつねってみる。痛い。これは俺がおかしいのか?

「南雲くんは…俺じゃ不満……?」

いや……こっちのセリフだよ、神崎。

「いや……神崎の方が…俺でいいの?俺取り柄ないし……
なんならデメリットしかないし……」
「……南雲くんは常に人の事考えてて、いつも人を助けてるよね。」
「え」
「この前クラスの大人しい子が何故か先生に体の半分くらいあるノート頼まれたとき、誰も助けに行かなかったけど南雲くんがすぐに半分持つよって助けてあげてた。」
「へ、え?」
そんなことあったー……あ、あったかも
「先日、瀬戸が体育で怪我したときもすぐに救急箱もって大丈夫だ、ってずっと勇気づける言葉かけてた。」
……瀬戸は野球部ガチ勢だから、怪我したら大会も出れなくなる。怪我した時の瀬戸が涙を流したから、そうしただけで……
「それは誰だってすることじゃないか?」
「じゃあなんで南雲くんしかしてないの?」
「それ…は」
「ずっと、ずっと俺が気づいた時には南雲くんがいるんだよ。困ってる人の傍に。」
「……」


ぽろ


「あ!……ごめ、俺。こんなはずじゃ……」

勝手に涙が零れてくる。くそ、止まれ止まれ。
すると神崎がすっと俺の零れてくる涙を拭いながら
誰もが見惚れるような笑顔で言った。

「嫌で入った委員会も、なんだかんだ1番真剣に仕事してるし、ゴミ出しも率先して、真面目で、多分だけど、考えすぎて溜め込んじゃうのかな…?ダメだよ。抱えてちゃ。そんな南雲くんが大好きだけど。」

ぼろぼろぼろ

「ごめ、ほんとに……俺……20で死のうって思っでで……だってこんな体で……こんな顔面してるから……
精子提供してくれるパートナーも絶対いないし……
しかも……精子たっけぇんだよ!母さんも父さんも自分の金使わずにそれに費やしてて……中々、遊びに行かないんだ……!罪悪感いっぱいで!おでもパートナーを探さなきゃって……探せって……!嫌だよ……今後のこと考えたらどうせ見捨てられるに決まってる……!男で、こんな顔で……!」
「はい、もう終わり。」

ごしごし、神崎が袖で俺の鼻水やら涙やらを拭いてくれている。袖はもうびしょびしょだ。

「じゃあ、こうしよう。南雲くん、俺と付き合おう。
そしたら、南雲くんのそのクソみたいな考え方。
俺が治してあげる。」
「ゔぇ」

今、クソみたいって言った~~!?

「し、仕方ないだろ!?俺みたいなの……」
「はい、またそれ。俺みたいなの?さっきの俺の話聞いてた?……はぁ……俺がたくさん南雲くんを愛したら、その俺みたいなのって、なくなるかな?」
「へ……」
「南雲くん。今から俺ん家いこ?」
「え、あ、でも……」
「息抜きに外出て、俺ん家でいーっぱい愛してあげる。」

そう言って、神崎は最大級の笑顔を俺に向けた。





 


「ぁっ……はっぁ」

ぬぽ、ぬこ、ぬこ、ぬちゅっ

神崎が俺の穴に指をはめて、ピストンをしている。
何回も何回もやられていくうちに、
何とも言えない感覚から気持ちよくなっていく。

こりゅっ

「はぅ゛っ」

ビクビクッ

!?な、んだ!?

「……ここかぁ…」

こりゅこりゅこりゅこりゅ

「やっぁ゛!やべっ!はゔぅ~~~…………」

びゅくびゅく……

あ……やば、俺前触らずにいっちゃった……?
汗やば……

「そろそろ……いいかな……」

神崎が俺をハグする形でピッタリくっついていたのを、
正常位に直して向き合った。

うわ……神崎のデカ……俺の2倍はある……
クソ、サキュバスなのに…ちんこも負けるのか……

「てか、南雲くんってお腹にタトゥー入れてたんだね……」
「……や、それ淫紋……」
「え?」
「性行為する時だけでるんだ。オナニーする時とか……ほら、この中ほんの少し白くなってるだろ……?この白いのが体液で満タンになったら舐めたくなる欲求がなくなるんだ……」
「なに、そのエロいの……」
「……エロいって、俺たちには普通にあるものだから……」
「ん、入れるね……?」

神崎はさっきから余裕が無さそうだ……
いつも汗ひとつかかず、穏やかな顔をしているイケメンが、俺には余裕がなさそうにしている。
…そんな顔をされたら、受け入れちゃうに決まってるだろ…

「うん……」

ずぷ……ぬぷぷ……

「ふ……う……」
う、やばい……思いのほか、いや想像以上に苦しい。

ぬぷ……

「はぁっ……」
くそ、まだ入るの……!?

ぬぷぷ、……こちゅ……

「はっはっぁ…はぁっ苦しい……」
「ごめんね、段々と慣れてくるから。ほら深呼吸して?
合わせるから。」
「うっん……ふぅー……はぁー……」

ぬちゅ~~→
←ずりゅぅ~~

「はぁ……あっ」

段々とゆっくり繰り返して行くうちに、気持ちよくなってきた……

「さら……キスしよ。」
「うみゅ、ちゅ、ちゅぅ」

ぬぽっぬぽっぬごっぬちゅっ

「んぐ!?ん゛っん゛っん゛んっ」

ちゅ、ぢゅる、ちゅう~~~~

苦し!?苦しい~!!
ゔ、いくっ……
俺はどんどんと密着している神崎の体を叩いた。

びゅくびゅく~~っ
きゅぅっきゅぅ

ぬぽ……ぬぽ……

「ん、ふぅ……ちゅ、ちゅる」

う、さっきいったのに……優しくはなったが、やめてくれる素振りはない……

ぬぽ……ぬこ、ぬちゅ……

「ゔぅ~~……」

ちゅ、っちゅる

「はっ…」
あ、辞めてくれた。俺はやっとこさ息を吸った。

「はあっふぅぅはぁっ」
「はは、ごめん、苦しかった?」
「んっね、も、ゔ!辞めて……なんかっ変な……感じ、する……」
「ん、大丈夫、あともうちょっとだよ。」

何があともうちょっと!?

ぬちゅっじゅちゅっ……ぬぼっ

「ゔ~~~」

ちゅるっちゅっ

「ぁっやめ、乳首はっはぁっん、」

やば、やばい!?ほんとになんかっ!

ぬちゅっぬこっ

「っっ~~~ーーーーー!?」

プシップシュッしょわぁぁ……

きゅぅぅぅぅ

「っ!?くそ、締まる……」

びゅ~!びゅるびゅる!!びゆ~~

あ……中にいっぱいきたぁ…………♡


ビクビクッ


「はぁ……お腹、いっぱい……」


あれ、なんかねむ……


「へ、南雲くん……?……寝たのか?」


すー……すー……


俺は久しぶりに素晴らしい夢を見た。
億万長者になって好きなことをする夢だ。
その隣には……











「おはよう。南雲くん。」

朝目覚めると、神崎に抱きしめられていた。
もう俺には空腹感がなく、代わりに幸福感が
満たされているのを感じる。
神崎の笑顔を見て、心臓がきゅうぅってなって、
どうしようもなく感じて、
俺は神崎の厚い胸板に顔を寄せた。



「神崎、俺、お前に愛されて凄く幸せだよ。」

神崎は抱きよった俺をぎゅっと抱きしめ、
頭を撫でながら

「まだまだ序の口だよ」

と笑いながら言った。






もっと、もっと、俺の愛を受け止めてね。








※※※※数年後




「まぁ、本当にさっちゃんのことを……?」
「はい。」
「や、いやぁ、、君みたいな子がぁ…さらを…
感動だなぁ……」
「父さん失礼だよ」

成人してから俺たちは、結婚をすることにした。
20になって、俺は結局死ななかった。
生涯を通ずるパートナーになったからだ。

「あ、さっちゃん。契約はもうしたの?」
「契約、、?」
「あぁ、まだ見たいね。それなら良かった。
契約したら子供出来ちゃうから、上からは口で摂取して、下ならちゃんとゴムしてねって言うの忘れてたわ。」
「はぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「いやん!ぱぱぁさっちゃんが怖いわぁ」
「こら!さら!ママを怖がらすんじゃない!」
「え、ど、どういうこと、ですか?」
「だってだってだってぇ!さっちゃん今日までパートナー報告無かったから言う必要ないと思ってぇ!!」
「契約したら妊娠出来るってどういう体してんだよ!
サキュバスって!」
「男性のサキュバスはそうできてるのよ~、
サキュバスとかインキュバスって、本っ当に人口が少なくなっちゃった時があるらしくて、その時進化したみたいなのよ~!!その名残がさっちゃん♡」
「なるほど……その契約というのはどうやって?」
「ちょ、りとぉ!?」



家族が増えるまであと少し……

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