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プロローグ
しおりを挟む110番は警察に直通の番号である。事件や事故などの際にすぐに駆け付けられるよう
に緊急のダイヤルとして、公衆電話からでも無料でかけることができる。
その110番を110回鳴らした母親がいる。
母親は非常に若い印象を受けるが、話してみるとしっかりとしたイメージを持つ。年齢以
上に「大人」な対応がまた好印象を与える母親であった。
小学校低学年くらいの男の子の色白の肌に切れ長の目は一見すると少女のような可愛ら
しい顔立ちである。母親にべったりとくっついて甘えてくる息子を
見る母親の目はやさしく、マスク越しにも笑顔が想像できた。どこにでもいる母親と、どこ
にでもある日常に思える。
どの家庭でもそうであるが、一見して問題などなさそうに見え、実はそれぞれの家庭には
周りからは分からないそれぞれの問題があるのだ。隣の芝生は青く見えるとはよく例えた
もので、本書の家族とてその例外ではない。
母親にくっついて離れない男の子。その男の子にはほんの少しだけ違和感を覚える節が
あった。彼は発達障がいを持っていた。より正確なことを言うのであれば、グレーゾーン。
場面緘黙。一定の者以外との会話ができず、彼の場合、家族以外との会話は難しい。
時折、夜中に少年が外で泣き喚いて母親が必死に抑えてなだめている姿を見かけること
もあった。近隣のマンションの男性が「いつもいつもうるせえんだよ!」
とベランダから
母親に怒鳴っているところも見かけた。
常に母親が対応いていて、父親はいつも見かけなかったことから、はじめは母子家庭かと
思っていたが、その想像はしばらくしてからみかけた父親の姿とともに消え去った。
ひと昔前まではこういった発達障がいのある子どもたちへの理解や支援は今とはくらべ
ものにならないくらい厳しかった。ただ最近では、今回の場面緘黙を含む発達障がいへの療育の体制や理解が深まってきたとは言える。
現にここ最近で児童発達障がいへの世間の味方は明らかに変化した。これまでは当事者
だけの問題として考えられていたものが、社会全体で考えるべき課題に変わってきた。その
おかげもあってか、最近では発達障がいへの早期からのアプローチ( 療育) にて、保護者含め
本人の悩み感を解決できる道筋ができつつあるのだ。
どの家庭でも例外なく、それぞれの「大変さ」をもって過ごしているが、それでもその生
活中にささやかな幸せを積み重ねていく。それこそが家族なのだと、母親のやさしい目が訴
えかけているようだ。本書の親子もそういった幸せを培っていたのだ。
そう、あの日までは。
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