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フリージア

シンデレラ

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エバンスと1曲目のダンスを踊ろうとしたその時、会場が騒めいた。

「シアン王子よ!」
「シアン王子がダンスのお相手を選ばれたわ!」
「美しい女性だわ!どこかの姫か、ご令嬢かしら?」

シアン王子からお誘いを受けるのは自分ではない…そうわかっていたはずなのに…胸に広がる嫉妬の渦で体の隅から隅まで覆い尽くされそうだ。

「ドレスも素敵だわ。美しいラベンダー色で装飾もとても上品!」

誰かが囁き声で話したドレスが気になり、王子の方を横目で見てハッと気がついた。

ラベンダー色のドレス。それは昨日、マドレーヌの仕立屋で直してもらうはずだったわたしのドレスだ…。

「どうゆう…こと?」

舞踏会に遅れてきたエラが私のドレスを着て王子とダンスを踊っている…

なぜ彼女がそんな事を?

考えを巡らせている間に一曲目が終わり、エラとシアン王子はバルコニーへと移動した。

「フリージア。どうかな?もう1曲ぼくと」
「ごめんなさい!エバンス…私どうしても確認しなくちゃいけない事が…本当にごめんなさい!」
「フリージア!」

エバンスに頭を下げ、急いでバルコニーに向かった。

息を切らせながら螺旋階段を駆け上り、バルコニーの窓際まで辿り着いた時、

見てしまった…

シアン王子とエラが抱き合い、キスをしているのを…。

(そんな…どうして…)

体から力が抜けるのと同時に、目頭が熱くなるのを感じる。

気持ちを押し込めようと下唇をぎゅっと噛み締めると、一筋の涙が頬を伝った。

昨日私を抱きしめた腕でエラを抱きしめ、私に好きだと言った唇はエラとキスをしている。

…何もかもが信じられない…

シアン王子は誰でもいいの?

唯那さんのことは?私は?

…違う。そもそも…私はシアン王子と結ばれるような身分じゃない。


「どうしたのフリージア?顔色が悪いわ?」
「あぁ…お母様。気分がすぐれなくて…先に帰らせていただきます…ね…。」
「ロッソ婦人。僕がフリージアを送ります。」
「エバンス。助かるわ!お願いね。私はリリアとエラを連れて帰るわ。」

お城の外階段にある大時計は24時をさしていた。

















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