23 / 40
22話「風呂場での戯れと」
しおりを挟む22話「風呂場での戯れと」
「おまえ………何でそんなに離れてんだよ」
「…………」
「小さい頃はよく一緒に入ってただろ?」
「それは子どもの頃だったでしょ?!」
響は浴槽の端に寄り、千絃から離れるようにして背を向けて座っていた。
恋人になってまだ数日。そして、まだ裸など見たこともないのに、何故一緒に入らなければならないのだろうか、と響は千絃を睨み付けたいぐらい恥ずかしい思いをしていた。
怪我の抜糸が終わった後。
響を迎えに来た千絃は、そのまま彼の部屋へと連れていった。そして、千絃にキスした後「じゃあ、約束通り綺麗にしてやる」と、風呂に入ろうとしたのだ。響は何度も拒否したけれど、彼も意思を曲げず、響の服を脱がそうとし始めたのだ。千絃は「自分で脱がないなら、そのままベットに連れていく」と言われてしまい、響はやむなく彼に隠れて服を脱いで急いで風呂場まで逃げたのだ。
けれど、彼が風呂場に入ってくるのは当然の事で。響はさっきから体を丸めて座るしか出来なかった。
「………おいっ」
「っ!………キャアっ!!」
響の体を千絃が引き寄せ、千絃は後ろから抱きしめるように体を寄せた。
「……どうせ今から全部見ることになるんだから、もう諦めろ」
「………そ、そうかもしれないけど……明るい所は恥ずかしいのよ」
「はいはい」
何を言ってもダメだと思ったのか、千絃はスポンジを取り出して、そこにボディソープを垂らす。すると、そこから華やかな香りが浴室に広がってきた。彼はそれをお湯の中に入れると、泡を作り響の肩に当てる。
「え!?千絃……何でお風呂の中で洗ってるの?」
「おまえ、上がって体見られるの嫌なんだろ?だからここでやるしかないだろ?ここなら後ろからだし見えなくていいだろ」
「………そう、だけど………」
響は反論したい気持ちもあったけれど、それでも彼が優しくいたわるようにして体に触れてくれると、どうもくすくったくも心地がよく感じてしまうのだ。自分でもわかっている。
止めて欲しくない。そう思ってしまっていると。
「………ぁ………」
少し声が漏れただけで、風呂場に声が響く。それが何とも快楽的で、響は思わず自分で体が震えてしまう。そんな響に気づいている千絃だったが、何も言わずにゆっくりと泡を響の肌に滑らせていく。くすぐったさで鳥肌が立ちそうになってしまう。
「千絃。後は自分でやるから………」
「あと少しだから」
「恥ずかしいから、そこはダメ!」
響の敏感な部分に千絃の手が伸びそうになり、響は慌てて彼からスポンジを取り上げた。響が振り替えって睨み付けようとするけれど、目が潤んでしまい、全く反抗の効果はなかったようだった。彼は満足そうに微笑むと、ゴシゴシと体を洗い始めた響を面白そうに見つめていたのだった。
響は千絃を何とか先にお風呂から出して、一人でシャワーを浴びていた。
「もう………千絃のえっち………!!」
響はお風呂に長く浸かりすぎたわけではないのに熱くなり火照った体に、少し冷たいお湯をかけながら、そう一人呟いた。
まさか、本当に全身体を綺麗にされるとは思っていなかっただけに、響は逃げてしまった。けれど、これからの事を考えてしまうと、響は体の奥がきゅんとなった。
そして、自分がこんなにも快楽に弱いのだと知って、ため息が出そうにもなる。
けれど、きっと響の事を待っているであろう千絃の元に、響は早く向かいたくて、シャワーの水を止めて浴室から出たのだった。
「………水。随分長く入ってたから、暑くなっただろ?」
「あ、うん……。ありがとう」
浴室から出ると、すでに千絃の大きめのシャツが置いてあった。それに袖を通すと、先ほどのボディソープの香りとは違った彼の香りに包まれる。それが、これから彼に抱かれるのだと改めて感じさせられるもので、また瞳が潤んでくるのがわかった。
それでも、必死に平常心で居ようと響はぐっと体の力が抜けそうになるのを必死で堪えた。
彼が準備してくれた水のペットボトルと貰うと、千絃はジーッと響の事を見ていた。
「………おまえ、体冷えてないか?」
「っ………」
彼の手が突然響の頬に触れたので、響は体がビクッと震えてしまった。
千絃は少し目を開いて響を見ていた。彼に触れられただけで敏感に反応してしまったというのを彼に察知されないように、咄嗟に言葉を発した。けれど、焦っているから少し早口になってしまう。
「こ、これは……少し熱くなりすぎたから、冷たいシャワーを浴びたの!だから、大丈夫だよ。最近はとっても暑い、丁度いいから」
「…………確かに、丁度いいな。どうせ、今からまた熱くなるんだ」
「……ぇ………ん…………」
響が返事の声をあげる前に、その言葉は彼に唇ごと飲み込まれてしまった。
軽いキスを何度かすると、彼はゆっくりと響の瞳を見つめながら唇を離した。それでも彼との距離はとても近い。
「風呂場で気持ちよくなったんだ。これからの事を期待してただろ?」
「そんな事は………」
「俺は期待してた。………だから、今日はもう逃がさない。ずっと待ってたんだ。後はおまえを貰うだけだ」
そう言うと、千絃は響の手を引いて足早に寝室へと向かった。
そして、千絃をベッドに押し倒すと、またキスの雨を降らせていく。
彼の手が頬から首筋、そして服の中に侵入してくると、甘い痺れから体が震える。
こうなることを期待していなかったわけではないけれど、いざ千絃とこのような関係になると思うと緊張が高まっていく。
目の前にいるのは、変わらぬ幼馴染みであるのに、いつもとは違う大人の男なっている。瞳はギラつき、響の体を貪欲に求めてる。そして、それだけではなく響が快楽を求め、震える姿を見て楽しみ、喜んでいるようにも見える。
「悪い………」
「……………え?」
「長年の夢が叶う時だから、抑えが効かない。まぁ、抑えるつもりは元々ないから。ずっと俺を我慢させていた責任をとって」
「ん……………あ………待って……」
「これ以上待てないっ!!」
「………っっ…………」
体の奥底で彼を感じ、響は声にならない悲鳴を上げた。
その苦しささえも愛おしく、そして気持ちよささえも胸を締めつけられる。
何度も何度も彼に名前を呼ばれ、耳を舐められ、キスを求められる。
自分を求めてくれるのが、好きな人だなんてとても幸福な事だ。
けれど、そんな事を考える暇もないままに、響は彼の熱に溺れ、幾度も彼の名前を呼んで求めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる