極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

蝶野ともえ

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12話「これからの幸せ」

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   12話「これからの幸せ」




 椿生と畔は手を繋いで、湖の隣りゆっくりと歩いた。

 会話はほとんどない。

 それなのに、彼の手から伝わってる体温が畔を安心させた。先ほどまで話がない時間は不安でしかなかったはずなのに。



 畔はちらりと彼の顔を見上げた。
 いつも穏やかな彼の横顔を眺めながら、少し不思議な気持ちなる。
 この人が自分の恋人になったのだ。
 そんな実感など感じられない。だが、先ほどの言葉は嘘でも夢でもないのだ。
 畔はギュッとノートを強く抱きしめる。畔の視線に気づいたのか、椿生はこちらを向き『どうかした?』と、微笑みながら口パクで言ってくれる?首をかしげてそういう彼を見て可愛いなと思ってしまう。かっこよくて大分年上の男性なのに。畔が微笑みながら首を振ると、椿生もニッコリ笑い、また木々に目を向けて散策を楽しんでいる。

 穏やかな時間。

 けれど、幸せな一瞬を畔は噛みしめながら、一歩一歩歩みを進めた。





 椿生の車に戻ると、彼は畔をもう一度抱きしめてくれた。畔は、その瞬間は恥ずかしさもあるものの、彼に包まれるのが心地よくてつい目を閉じてしまう。彼の鼓動を肌で感じられる瞬間が、好きになってしまったのだ。

 ゆっくりと体を離した後、椿生は少し照れた顔で、手を動かして話し始めた。


 『本当にありがとう。………夢みたいだよ』
 『私ももう椿生さんに会えないと思ってたから………諦めなきゃいけないと思ってた』
 『諦める必要なんてなかったんだよ。両想いなんだから』


 椿生の言葉に、引っ込んだ涙がまた込み上げてくる。畔は頬を赤くして下を向くと、そんな畔の片頬に椿生の手のひらが触れる。そのままゆっくり前を向けられると、椿生は『かわいい』と口で伝える。ハッとした表情で畔が更に頬を染める。

 すると、ゆっくりと椿生の整った顔が近づいてきた。畔は次に何が起こるのかを察知して、咄嗟に眼を瞑ってしまった。
 
 しばらくして、畔の額に指が添えられ、次に柔らかな感触が伝わってくる。温かいものだ。
 畔はゆっくりと目蓋を開くと、そこには嬉しそうに笑う椿生の顔が近くにあった。
 彼が額にキスをしたのだとわかり、畔は彼を見上げてるが、緊張からどうしても目が潤んできてしまう。


 『本当は我慢するつもりだったんだけど、出来なかった。だから、ここのキスだけは許してくれる?』
 『…………許さないわけ、ないです』
 『よかった』


 畔は恥ずかしさのあまりに視線を背けるが、また彼に抱きしめられてしまう。
 心が落ち着く暇がないな、と思いつつもドキドキした気持ちが幸せで、畔はまだずっと抱きしめ続けてほしいな、と願ったほどだった。



 遠出した事もあり帰りはすっかり遅くなってしまった。椿生は『寝てていいよ』と言ってくれたが、到底寝れる状態ではなかった。


 畔と椿生は途中で夕食をとって休息しながらドライブをした。この日は、椿生が畔を自宅まで送ってくれる事になり、椿は道案内をしながら夜道を車が進んだ。


 『ここで間違えないかな?』
 『はい。このマンションです』


 畔のマンションの前に車を停めると、椿生はマンションを見上げた。5階ほどの低階層のビルだが、比較的新しい造りのビルだ。セキュリティは万全で、入り口にはコンセルジュもおり、畔はいろいろと助けて貰っている。一応有名人ながら、セキュリティはしっかりしてる所に住め、と叶汰に
言われ、このマンションを勧められたので、畔はここに住む事に決めたのだ。
 元々、防音完備で近くにスーパーなどがあればどこでもいいと思っていたので、畔は決めてくれたことを感謝しながら、このマンションに住んでいた。


 『………やはり素敵な所に住んでいるね。周りも住宅街で静かそうだし』
 『はい。とても住みやすいです』
 『そう。じゃあ、畔ちゃんの家もわかった事だし今度からここまで迎えにくるよ』
 『そんな……私は駅まで歩いていけますよ』
 『いいのいいの。俺がそうしたいだけだから』


 そう言うと、椿生は自分のシートベルトを取った後、畔に近づき、また優しく畔を抱きしめた。
 耳元に息がかかる。それがどうもくすぐったく、少し体が震える。もしかしたら、耳元で彼が何かを言ったのかもしれない。そんな風に思って顔を上げようとすると、自分を拘束していたものが外れて体が楽になるのを感じた。椿生がシートベルトを外してくれたようだった。

 畔は、『ありがとうございます』と少し恥ずかしそうに言うと、椿生はきょとんとした後、少し困ったように笑った。


 『また、会いに来るよ。恋人になったんだ……沢山会いたい』
 『私もです』
 『うん、じゃあ………おやすみ』


 椿生はそう言ってまた畔をジッと見つめた後、頭をポンポンと撫でてくれた。
 畔は自分が思っていた事をしてくれなかったため、少し照れくさくなり慌てて車を降りた。


 手を振って彼を見送りながら、畔は彼に顔が真っ赤になっているのがバレていない事を願っていた。

 彼の車が見えなくなった後、畔は頬を両手で多いながら、大きな羞恥心に襲われていた。


 (私………椿生さんにキスされると思った………。それを期待してた………!)


 真剣な視線で畔を見つめた椿生を見て、畔はつい目を瞑ってしまいそうになった。
 恋人になったばかりなのに、何を思ってしまったのか。
 恋愛経験が少ない自分が、まさかそんな事を望んでいたなんて、と畔は自分の気持ちが恥ずかしくなった。


 (けど………恋人になったら、キスとかもするんだよね………。今日みたいなおでこじゃなくて………)


 そこまで想像してしまい、畔はハッとして頭をブンブンと横に振った。そして、マンションの中に駆け込んだ。
 真っ赤になった顔も、そして恥ずかしい事を考える頭を冷やすために、畔はすぐにバスルームに飛び込んで温めのシャワーを浴びた。


 (でも………本当に本当に恋人になったんだ。椿生さんと…………)


 畔はシャワーを浴びながら、彼の唇が当たった場所に触れた。
 そこがほんのり熱いような気がして、目を瞑る。すると、その時の記憶が鮮明に思い出される。
 夏なのに涼しい湖のほとり。風で木々が優しく鳴り、小鳥や虫の鳴き声が心地が良い場所。
 そんな素敵な場所で彼に「好きだ」と伝え、そして自分も伝えた。


 今でもとても幸せなのに、これからの日々は椿生と共にあるのだ。
 もっともっと幸せになる。
 それが夢のようなのだ。


 (でも、夢じゃない。………これからが、もっともっと素敵になる。………彼に負けないように私も頑張ろう!)


 畔は普段あまり歌わない鼻歌を口ずさみながら、浴室で新しい歌を考え始めた。


 次の曲はきっと今までで1番甘い曲になる。
 そんな予感がしていた。

 

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