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早寝、早起き
しおりを挟むペニーとカシーに足を引っ張ってもらい、柔らかいホールドから抜け出すと、2人はそれぞれ隙間に潜り込んで動かなくなった。強い子達だな本当に。焚き火の火を上げ過ぎず、且つ消さないように調整しながら時間を潰し、長い長い2時間を耐える。
魔物が居らず、他のパーティーも近寄らない端っこの陣地には、小さく薪が爆ぜる音と、ネズミの足音、そしてネズミを食べる鳥の鳴き声。演習だから起きてるけど、これは辛い。少し音が出ちゃうけど、腕と脚を動かして、睡魔の誘いを抗った。
2時間経ったのだろうか。まだ暗い中起き出したのはマキ。睡魔と和解した僕に目配せで挨拶すると、寝床を出て外へ。トイレするみたいだ。耳と鼻を閉じてれば良いかな?しばらくして戻って来ると、僕の隣に座った。
「紳士ですね」
肩が触れる距離に寄ると、耳を塞ぐ僕の手を外して耳元で囁いた。
「寝なくて良いの?」
「普段からこのくらいですから」
小さく呟いた僕にマキは返す。お世話係の朝は農家より早いようだ。それでも座ってじっとしてると睡魔の囁きが聞こえ始めたか、僕の肩に頭を預け、スーッと寝息を立ててしまった。
次に起き出したのはロシェルだ。夜明け前から鍛錬してると言ってたし、習慣なのだろう。
「ユカタ…、イチャイチャしてんの…?」
「そう見える?」
「見える…かな…」
「おはようございます、ロシェルさん」
寝床から這い出て来たロシェルにマキは小さく挨拶する。
「アタシも」
そう言うと胡座をかく僕の腿に頭を乗せるロシェル。それはアタシもでは無いよな?
「脚が痺れちゃうから止めてよ」
言ったが止めてくれはせず、睡魔に意識を持って行かれた。
「そろそろ食事の支度をしたいのですが…」
「火を強めると火傷するからなぁ。それに鍋はジュンのカバンだし」
「そうですね…」
マキも睡魔に連れて行かれた。おかげで動けない。動かせるのは左腕だけだ。静かに腕を上げたり下げたりして過ごす。
次に起きて来たのはペニーとカシー。左右に女子を侍らせてる僕を見て何を思うのか。
「時間よ」「少しでも、寝て」
「動けないんだ」
「でしょうね。みんな起きなさい。交代の時間よ」
「んぁ…」「もう、朝か…」「おはようございますレイナ様。おはようございます、皆さん」
ペニーの声に反応し、ジュンとレイナが目を覚ます。4人が寝床から出て、ロシェルの顔を腿から外すと僕は寝床で横になった。
夜が明けて、スープの匂いに起こされる。焚き火に掛けられた鍋からスープをよそるマキと目が合った。
「丁度良い時間ですね。起き抜けで食べられますか?」
「うん、お腹減ったよ」
小さい丸パンとスープで腹を満たし、昼までの予定を話し合う。
「お昼ご飯も作んなきゃいけないんだよねー」
「麦粉はあるからパンは作れる。スープの材料もあるよ。水はどう?」
「1食分は、ありますね…」
夜と朝の分で作った分は食べ切ったから昼は新たに作らなきゃいけない。前回はどうしてたかを聞くと、ロシェルは寝て空腹を紛らわせてた。3人衆は講師の陣地の近くで待機。気になる2人は生食出来る食べ物を摘み食いしながら散策してたと言う。
「奪われたりしなかった?」
「お腹の中の物を奪う気は無かったわね」
「何人か、ゾロゾロ付いて来てたけど」
「パンを焼くなら動かない方が良いかもね。けど他のパーティーがウロウロしだしたらココも見付かっちゃうかも」
「あの、素早く作ってココを離れるのはどうでしょう?」
「食事はどこでするつもり?」
ジュンの意見にレイナは疑問を投げる。汁物を移動しながら食べるのは難しいよな。出来ればゆっくり食べたいが、そうも言ってられないか。
「コレが終わってから食べるのは如何でしょうか」
マキの意見は、昼になったら食事をすると言う概念に凝り固まった者達に、一石を投じる物であった。
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