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サボりは、良くない
しおりを挟むマキの挙げた画期的な案に反論する者がいる。ロシェルだ。
「夕方まで我慢はヤダよー」
一見わがままに見えて彼女の意見も一理ある。昼食を食べて間を置かず夕飯となるのだから、大食いのロシェル以外は食べ切る事は難しくなるだろう。もちろんロシェルは腹が減ると言う理由からだろうが、僕はマキ案の後の事を考えて皆に意見を述べた。
「確かに。考えが至りませんでした」
「夕食を美味しく食べるためにも、昼食は正しく食べたいわね」
頭を下げるマキの手を握りフォローするレイナは良い主人だ。
「動くなら早い方が良いわね」「薪拾いと、パン生地作りに分かれましょ」
ペニーとカシーの判断は早い。ジュン、マキカシーはパン作り、残り3人は薪拾い。そんな感じでズバズバと役割を決めてしまった。
「僕は?」
「撤収をお願いするわね」
自由に動けると言う事か。何故なら撤収なんてトイレの穴を埋めるだけだからだ。
話が決まり、皆がそれぞれの行動に出る。ロシェル、レイナ、ペニーが外へ出ると、見送った3人はすぐに材料を取り出してパン生地作りに取り掛かる。
「そうだ、コレ使えるかな?」
「「「……」」」
昨夜食べ忘れていたアレを背嚢から取り出すと、無言で奪われ3人会議が始まった。麦粉を練れ。3人会議はトイレの穴を埋め終えた頃には終わっており、寝かされた生地を安置して、3人串を作ってた。
「こっちは終わったよ。壁は残したからする時は浅く掘ってね」
「分かりました」「は、はい…」「ユカタ君は、あっちと合流して良いよ」
枝を串にする作業は3人で出来るし、1番拙そうなジュンも意外とキレイに木の皮を剥いでいた。危険度で言えば外に出てる子達の方が大きいので、カシーの言うままに外に出た子達を探しに出た。
探すと言ってもそう離れてはいない。ペニーとレイナは一緒にいて、2人で薪になる枯れ枝を拾っていた。
「拾い過ぎじゃないかな」
「いつものクセね」「私は初めてだけど、そう言う物らしいから」
薪拾いに出て数本しか持って来ないとなると、村ではサボりと見なされる。ペニーの言葉は正しい。これから一晩泊まるならそれでも良いんだろうけどさ。
「所でロシェルは?」
「気になるの?」
ペニーは問い返すが、居ないのだから気になるだろう。
「サボってるとは思わないけどさ。僕の剣持ったままなんだよ」
このまま借りパクされたらたまったモンじゃない。
「あの子は辺りの警戒に出てるわ」
「仕方ないな。取り敢えずみんなの所に戻ろうか」
「待ってなくて良いのか?」
レイナの問いには答えず踵を返す。警戒に出て離れ過ぎはサボってるのと変わらないから。
しかし昼を過ぎてもロシェルは陣地へ戻らなかった。どこかで食べられる木の実でも頬張っているのか?食事を終えて、食休みを終えても戻らなかったので、陣地を引き払って探しに行く事にした。
間隔を開けた横一列になり、端々に僕とペニーが着いて、隣同士声を掛けながら歩いて探す。木に引っ掛かってたり地面に落ちてたり、茂みに埋もれてたりするかも知れない。全方位を見て、声掛けしてから動くので自然と歩みが遅くなる。
「どうだ?血の匂いとかはしないか?」
「分からないな。マキはどう?」
「感じません。カシーさんはどうですか?」
「この辺り、人が歩いた形跡が無いわ。木の上までは分からないわね」
「こ、こっちも分かんない。そもそも分かんないんだけど」
「10m進むわよー!」
こんな調子で移動して、立ち止まるのを繰り返す。生徒達の生活痕が現れるまで30分は掛かっただろうか。立ち木が疎らになり湖が見える。
「ユカタ、他のパーティーが見えないわ」
ペニーの報告に不安を感じ、一旦ジュンの所に合流する。
「ジュン、どこか怪我をしましたか?」
「え?」
不思議そうに首を傾げるジュンのローブの裾には、赤いモノが着いていた。
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