【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
74 / 385

サボりは、良くない

しおりを挟む


 マキの挙げた画期的な案に反論する者がいる。ロシェルだ。

「夕方まで我慢はヤダよー」

 一見わがままに見えて彼女の意見も一理ある。昼食を食べて間を置かず夕飯となるのだから、大食いのロシェル以外は食べ切る事は難しくなるだろう。もちろんロシェルは腹が減ると言う理由からだろうが、僕はマキ案の後の事を考えて皆に意見を述べた。

「確かに。考えが至りませんでした」

「夕食を美味しく食べるためにも、昼食は正しく食べたいわね」

 頭を下げるマキの手を握りフォローするレイナは良い主人だ。

「動くなら早い方が良いわね」「薪拾いと、パン生地作りに分かれましょ」

 ペニーとカシーの判断は早い。ジュン、マキカシーはパン作り、残り3人は薪拾い。そんな感じでズバズバと役割を決めてしまった。

「僕は?」

「撤収をお願いするわね」

 自由に動けると言う事か。何故なら撤収なんてトイレの穴を埋めるだけだからだ。

 話が決まり、皆がそれぞれの行動に出る。ロシェル、レイナ、ペニーが外へ出ると、見送った3人はすぐに材料を取り出してパン生地作りに取り掛かる。

「そうだ、コレ使えるかな?」

「「「……」」」

 昨夜食べ忘れていたアレを背嚢から取り出すと、無言で奪われ3人会議が始まった。麦粉を練れ。3人会議はトイレの穴を埋め終えた頃には終わっており、寝かされた生地を安置して、3人串を作ってた。

「こっちは終わったよ。壁は残したからする時は浅く掘ってね」

「分かりました」「は、はい…」「ユカタ君は、あっちと合流して良いよ」

 枝を串にする作業は3人で出来るし、1番拙そうなジュンも意外とキレイに木の皮を剥いでいた。危険度で言えば外に出てる子達の方が大きいので、カシーの言うままに外に出た子達を探しに出た。

 探すと言ってもそう離れてはいない。ペニーとレイナは一緒にいて、2人で薪になる枯れ枝を拾っていた。

「拾い過ぎじゃないかな」

「いつものクセね」「私は初めてだけど、そう言う物らしいから」

 薪拾いに出て数本しか持って来ないとなると、村ではサボりと見なされる。ペニーの言葉は正しい。これから一晩泊まるならそれでも良いんだろうけどさ。

「所でロシェルは?」

「気になるの?」

 ペニーは問い返すが、居ないのだから気になるだろう。

「サボってるとは思わないけどさ。僕の剣持ったままなんだよ」

 このまま借りパクされたらたまったモンじゃない。

「あの子は辺りの警戒に出てるわ」

「仕方ないな。取り敢えずみんなの所に戻ろうか」

「待ってなくて良いのか?」

 レイナの問いには答えず踵を返す。警戒に出て離れ過ぎはサボってるのと変わらないから。

 しかし昼を過ぎてもロシェルは陣地へ戻らなかった。どこかで食べられる木の実でも頬張っているのか?食事を終えて、食休みを終えても戻らなかったので、陣地を引き払って探しに行く事にした。

 間隔を開けた横一列になり、端々に僕とペニーが着いて、隣同士声を掛けながら歩いて探す。木に引っ掛かってたり地面に落ちてたり、茂みに埋もれてたりするかも知れない。全方位を見て、声掛けしてから動くので自然と歩みが遅くなる。

「どうだ?血の匂いとかはしないか?」

「分からないな。マキはどう?」

「感じません。カシーさんはどうですか?」

「この辺り、人が歩いた形跡が無いわ。木の上までは分からないわね」

「こ、こっちも分かんない。そもそも分かんないんだけど」

「10m進むわよー!」

 こんな調子で移動して、立ち止まるのを繰り返す。生徒達の生活痕が現れるまで30分は掛かっただろうか。立ち木が疎らになり湖が見える。

「ユカタ、他のパーティーが見えないわ」

 ペニーの報告に不安を感じ、一旦ジュンの所に合流する。

「ジュン、どこか怪我をしましたか?」

「え?」

 不思議そうに首を傾げるジュンのローブの裾には、赤いモノが着いていた。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です 再投稿に当たり、加筆修正しています

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...