【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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目的と、成果

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 人ならざるロシェルが落とした枝を、エリザベス様が検める。花が付いてない時点でお察しだが、お目当ての木ですら無かったようだ。

「なかなかままならぬ物ですね」

「時期を外すと終わりだし、行けて後1回くらいかな。次は盛りの長い花を狙うのが良いかも」

「そうなりますわね」

 期待していただけあってちょっぴり悔しそうだ。七日に1度しか外出出来ないもどかしさよ。

「ねねユカタ。花って何色?」

「色?」

「今探していた物は白に薄紅の縁がありますわね」

「他には?」

 色や大きさ、花付きを説明するエリザベス様に、ロシェルは答える。

「白いモコモコならアッチに見えたよ」

「真ですか!?」

 ロシェルの指差す方向は、目星を付けた場所の1つに近い。行けるか?だが門が閉まる可能性が高い。だが行かないと枯れてる可能性もある。悩み所だ。

「閉門覚悟で行くか、枯れるのを覚悟で戻るか…」

「口惜しいですね」

「お嬢様、少しよろしいでしょうか」

「…何か」

 僕達の話に割って入ったのは今までずっと手出し口出ししなかった隊長さん。隊長さん曰く、兵士に負傷者が出たので数人を町に戻したいと言う。怪我するような事あったかな?

「そのような事で…、いえ、そうね。大事になさい」

「ありがとうございます。5人を離脱させます事、お許し下さい」

 怪我人を連れて行くリスクに気付いたのか、不快な顔を見せていたエリザベス様はすまし顔に戻って兵の離脱を許した。折檻とかされなきゃ良いけど。

「ユカタ、連れて行ってくださいまし。この期を逃すには惜しいのです」

「みんなはどう?」

 敢えては答えず他の人の意見を待つが、まあ断れないよな。全員が了承し、次の目的地へ向かう事となった。

「右です。もう少し…はいっ」

 槍持つ僕を先頭に、長杖のレイナが殿で、中心をエリザベス様の3人を基準にして直線を確認しながら進んでく。戦線が伸びるので各場所にロシェル、エヴィナ、マキの前衛を置き、エリザベス様の横に残りの後衛を配置した。エリザベス様達が僕とロシェルの場所へ進むとレイナとマキがエリザベス様達が居た場所へ移動し、最後僕とロシェルが進んでレイナとエリザベス様の延長になるよう立ち位置を調整する進み方は、とにかく時間が掛かる代わりにズレを抑えられるので、目的の物が高い所にあって見えない今はこれが最善の移動法だと思う。目の前に木が生えてたり、移動しにくい地形だったりと、アクシデントさえなければ正確度は失われない。

「ユカタ、来ちゃった」

「数は?」

「待って…」「左右から各3。お退きなさいっ」

 エリザベス様からの声が風に乗って運ばれる。コレもアクシデントの1つだ。今回は僕の移動中なので遅延で済むが、戦線が伸び切った状態で殿を狙われると方向がだいぶズレる事になる。今回は特別に、あちらの都合で一部撤退してしまった兵隊さん達が、お詫びとして助力してくれる手筈になってるからそこまでの事にはならない。…分かってる。目的より成果だ。

 不動のエリザベス様の横に後衛が並び詠唱が始まる。ロシェルは射線に入らないように木の上に消えた。僕は殿のマキが振る短剣を見ながら射線を確認して走る。

「撃ち方、放てっ」

 マキの指示にエリザベス様含めた後衛が魔法を放つ。平民が現貴族様に命令等あってはならんが、コレも指示役になるための練習だ。そんな事言ったら初日にやってる僕の首は胴体と離れ離れになってるよ。

 5人の魔法で撃ち漏らしは3匹。十分な結果だ。更に1匹の上からロシェルが落ちて来て数を減らす。後は僕とエヴィナで処理。走り詰めでキツい。

「ふ、ふぅ…」

「ユカタ、代わるぜ?」

 気を使ってくれてるのは分かるけど、エヴィナとロシェルを前にするのは嫌だなぁ。2人共、じっとしてられないから。

「フッ、男を舐めてもらっちゃ困るよ」

 やんわり断れたかな?






 
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