【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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試験、初日

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 学生達の日々の様子が少しだけ慌ただしくなって数日。慌ただしくなった原因の日となった。クラスの入れ替えが行われる試験の日である。

 試験は座学と実技があり、今日明日の2日で座学の試験が行われた後、その翌日から1日実技の試験となる。しかし試験はそれだけでは終わらない。その日の午後から23日間の長期休暇中に課題をこなしてギルドへ提出。ギルドからの評価が学園に届けられ、クラスが入れ替わったり学園を追い出されたりすると言う。

「ユ、ユカタ君、助けて…。追い出しは嫌だよおぉ」

 余程のヘマをやらかさない限り問題ないと思われるジュンは、自己評価があまり高くない。

「まあなるよーになるっしょ」

 余程のヘマをやらかしそうなロシェルは危機感が足りない。

「みんなやるだけやったからね。後はロシェルがヘマしない事を祈るだけよ」

「昨日は泊まり込みましたからね」

 女子4人、お泊まりで座学を叩き込んだと言う。ジュンが追い出されると言っていたのはロシェルの事だったか。

「ロシェル」

「ん?」

「追い出されても盗賊にだけはなるなよ?困ったら僕達が養ってやるから」

「酷い!アタシ追い出されないもんっ!ユカタこそ名前書き忘れちゃえ!」

「その時はロシェルが養ってくれるのか?」

「う、自分で稼いでよ」

「私がお爺様に頼んで、置いてもらいますっ」

 僕の将来は安泰だな。でも出来れば冒険者になりたいので試験を頑張る事にする。



 一日目が終わり、教室がざわめく。勘定と薬草学の試験の塩梅を皆と照らし合わせて一喜一憂する者の中、朝とは打って変わって元気を無くしたロシェルは項垂れて一言も発せないでいた。

「ヘマしたか?」

「してないっ…と、思う」

「名前は書いたんだろ?」

「書いた」

「問題は解いたか?」

「多分…」

「ロシェルさん、明日は地形学と読み書きです。落ち着いてこなせば何ともありません」

「寮に戻って予習しましょ」

 マキとレイナに促され、ロシェルは重い腰を上げた。

「ユ、ユカタ君は、どうだった?」

「取り敢えず、クリスエス商会にお世話になる事は無さそうかな」

「そう…。よ、良かった」

 残念なのか良かったのか分からない笑顔で、ジュンはロシェル達を追い掛けてった。僕も寮に帰ろう。資料室は満員御礼だろうし、予習出来そうにないから。

「お暇なら私にわたくし付き合いなさい」

 教室を出て、耳元で声がするが、隣に声の主は居ない。また風魔法で声を飛ばしているようだ。廊下の奥を見遣ると取り巻き沢山の中に派手な人。エリザベス様だ。あの輪の中に入るのは嫌だな。けど断れる雰囲気を取り巻き達からは感じない。行かなきゃダメかー。

「夕飯には間に合いたいので、それまでなら」

 僕は取り巻き達の集団に寄ってって断りを入れる。

「無能クラスのクセに断る事も出来んのか」「コレだから無能は」

「断われない事を知らないのか?モノを知らん奴め」

「お止めなさい。私がわたくしお呼びしたのよ?」

 煽りに返す僕にエリザベス様は割って入り、貴族でもないクセに偉ぶって煽って来た2人を咎める。しかし2人は不服そうにですがしかしと駄々をこねる。

「ユカタ、アレを見せ付けておやりなさい」

 エリザベス様は呆れてしまったようで伝家の宝刀を抜けと言う。そんな使い方して取り上げられないのか心配になるな。

「アレ…。こんなつまんない事で見せて良い物なの?」

「2人は商家の出。意味が分からなければそれまでの男と言うだけです」

 ジュンも割符について、詳しい事までは知らなかったんだけど、良いのだろうか?商家程度には信用の証程度にしか知れ渡ってないのだろうな。学生証に挟んである割符を取り出し見せてやる。裏側は見せないよう注意だ。取り巻き達は割符を凝視すると、驚いたり不思議な物を見るような顔をした。ほとんど商家の出みたいだな。





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