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衛兵は、3時間交代
しおりを挟む「賑やかね。今日はどちら?」
長い列がいなくなり、僕等の番が回って来ると、ルイ姐さんは優しい笑顔で対応してくれる。前より一層優しく見える。
「今日も清掃依頼だよ。コッチのマッチョがやってみたいって言うモンだから」
「自分の弟でクリスと言います。無視してください!」「なので兄は無視で。自分はクリスチャンです。クリスと呼んでください」
「そ。後ろの彼女達はユカタのお気にかしら?あまり担当は変えたらダメよ?」
ルイ姐さんは素っ気なく答えると、僕の後ろに目を移す。ちょっと怖い。
「うあっアタシのお気に入りなのっ!今日は一緒に依頼請けるんだもんっ!」
それで朝から居て待ってた訳か。僕一言も聞いてなかったけど。
それならまあ頑張ってらっしゃいと送り出されて集合場所へ向かう。集合場所の広場にはなぜだか学生が多く居る。特に男が多く、皆キョロキョロと何かを探しているようで、隣の弟マッチョも辺りを見回していた。
「おい馬鹿、視線を逸らすな」
「兄者よ、如何に?」
「モテない奴程目が泳ぐ…ってな」
「おっ、兄ちゃんだ!」「隣のもデケー!」
子供の声に、年寄り達も寄って来て、マッチョ兄弟はモテモテになった。良かったね。
「やはり兄貴は幻術症に…」
「文句は仕事してから言え。皆、割符貰いに行くぜ!?」
「「「おーーうっ!」」」
子供と年寄りを引き連れるマッチョ兄に弟マッチョと僕は付いて行く。女子達も同行するみたい。
「どこやんだろ?ユカタ分かるの?」
「分かんない。今から割り振られるんだ。バラけると困るだろうし、固まっててね」
冒険者7人に子供と年寄り。僕らの集団は合わせて21人もいるから分けるのが大変だろうな。係員は考えて、年寄り4人追加して25人のグループにして清掃先を決めた。
「うわ…」「俺初めて入った…」
職員の指定した場所は、地下上水路。アッゼニの水源と井戸を繋ぐ水路で大きく5つに分けられている区画の1つ。水路沿いの通路や壁に着いた汚れや蜘蛛の巣を掃除したり、水路に潜む敵を排除する仕事だと経験者の年寄りは言う。
「水路にゴミを入れんように、気を付けねばの」
確かに、汲み上げた水に蜘蛛入ってたらびっくりだよな。細かい目の網も用意されているが、落とさない事に越した事はない。男児はランタンを持って前後の明り取りに。女児は後方で落ちたゴミ掬い。背の高いマッチョは天井、その他は床と壁の掃除となった。
「炎で焼き払ったら早いわね」
「お嬢さん、そんな事をすれば息が出来なくなりますよ」
「あら、それは危ないわ。勉強になります」
人が居なければその方法も良いかも知れない。だが出来ない事がしばらくして判明する。なぜなら区画と区画の間に兵士が立ってたからだ。この先は貴族街の地下で、許可のある業者が掃除してるんだって、経験者のお爺さんは言う。
「今は息子がアッチ側をやっとるんじゃよ」
「息子?マリオ達か?」
「ええ。息子が世話になっとります」
衛兵の人と休暇がてらに話をして作業再開。このお爺さんのおかげで迷わず帰って来られたのだが、外に出てから聞いてみた所、普通は散々迷った挙句、違う出口から出ちゃうモンなんだって。
「もうカサカサヤダー!」
少し時間を遡り、女児の声が水路に木霊する。カサカサは、寮の倉庫に住んでた虫で、女の子からは特に嫌われている奴等だ。上水路に出る敵は蜘蛛とカサカサとネズミが主で、たまに足がいっぱいある奴等がいる。明り取り男児の足元を抜けたカサカサに女児が悲鳴を上げるのを、追い掛けて潰すのは僕の役目になっちゃった。
「ユカタァ、頑張れ~」
「頑張れユカター」「お兄ちゃん、頑張って~」
ロシェルの煽りに女児が乗る。後者は純粋に応援してるだけか。女児の笑顔を守るべく、僕は虫を潰して回収して回った。
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