【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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学び次第で、苦手は無くなる

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「それこそ学んで慣れれば使いこなせるわ。簡単ではないけどね」

 レイナとジュンの言葉に、セーナは自慢げに返した。簡単ではなくても使いこなせる術師がいるからこそ、数少ないマジックバッグやボックスが金持ちのステイタスになっている訳だ。

「ユカタ、カバン出しなさい」

 作ったばかりでまだ使ってない背嚢だ。食事前に持って来いって言われたから持って来たけど、まさかコレに仕込むのか?

「画期的よ?見てなさい?」

 セーナが新品の背嚢に魔石を入れて、魔力を注いで起動する。背嚢の中でゴロゴロしてるが、それで起動出来てるのか?

「入れた物の時間が止まるの?」

「止まるわよ?生肉でも入れてみる?」

「1年で分かるモノなのかな…」

「お、お湯ならどうでしょうかっ」

 肉でもお湯でも、それこそ1年単位で見なくちゃ停止と停滞は変わらないと思うんだ。ドヤ顔だったセーナもソレに気付いてうあーっと情けない声を上げた。多分凄い事したんだろうけど、凄さが伝わらない事を嘆いてるって事は分かった。

私達わたくし程度には過ぎたる品。ですが国の宝物庫に納められるべき品である事は確かですわ」

「古い宝物もあるでしょうし、それ等を守るには必要ですね」

「フォローありがと。けど宝物庫にはこの魔石じゃ足りないわ。異界で保存しないのであれば…せいぜいお店の大きさくらいね」

 店舗の大きさの保存庫か。凄いは凄いな。中に入った人も動けなくなりそうだけど。聞いてみるとやはりそうで、この背嚢も迂闊に手を突っ込むと、突っ込んだ手の時間が止まるそうだ。防犯対策としては凄い罠だな。

 セーナは魔石の起動を止めると取り出して、今度は背嚢に魔法を付与するみたい。異界に繋げてマジックボックスにするそうだ。

「保存と空間と軽量化。これは前に言ったわね?」

「保存庫作る時言ってたね」

「マジックバッグやボックスは異界の一部を切り取って、カバンの入口に繋げるの。こんな付与を3つも使うから失敗も多くなるのよ」

 失敗すると、カバンが異界に吸い込まれちゃうんだって。異界を見る事が出来る者は、カバンが浮いてる世界を見る事が出来るとセーナは冗談めかした。

「1番失敗するのは異界と繋げる時だから、異界のカバンを持って帰れば一財産築けるわ」

「セーナのカバンもあるかな?」

「無いわ。私失敗しないもの。みんな少し離れて」

 多分今のは嘘だろう。確認しようがないが皆で間合いを取ると、セーナは魔石を背嚢に入れて、手を突っ込んだまま魔石を起動させた。

「掌を広げた状態で付与するのがコツね。取れなくなる所だったわ」

 そのまま引っこ抜いたら部屋の時間が止まったそうな。怖や怖や。確認の為、ストーブの上のヤカンを入れた。明らかに入れにくい大きさの物が、入口にかざすだけでにゅるんと入った。

「取り出す時はどうすんの?手は突っ込めないでしょ?」

「念じれば出るわよ。ジュンのカバンと一緒よ」

 ジュンのカバンは個人用だし、彼女の背嚢から取り出した事無いから分かんないよ。マジックバッグを使った事のある子達は理解してるみたいだった。

 ヤカンの代わりに鍋が乗り、クツクツとお湯が沸く。何もしないでのんびり休日を過ごした。

 翌日は装備の整備が終わるので受け取りに行き、帰宅したのは昼を過ぎた。ロシェルが串焼き食べたいとか言ったからだ。

「ただいま。お土産の串焼き買って来たよ」

「そんな事だろうと思ってたわ。スープ作ってあるからさっさと食べちゃいましょ」

「ご飯っご飯っ」

「お皿並べてからだよー」

 すっかり餌付けされたウォリスだが、ちゃんと待ってるだけウォリスより偉い。手伝わないから人以下だが。

「そうそう、カバンからヤカン出しなさいよ」

 昨日から放ったらかしにしてたんだった。傍に居たマキに聞きながら取り出すと、ヤカンはまだ湯気を上げていた。






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