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昨夜は、お楽しみでしたね
しおりを挟む保存していた熱々のお湯でお茶を淹れて昼食。たまに食べる串焼きの、肉にまとわり付いた脂の旨味はクセになる。パンに乗せたり挟んで食べるのが特に美味い。
「まだ重量軽減の付与はしてないけど、取り敢えずはこれで品卸しに行けるわね」
「セーナも付いて来てくれるんでしょ?」
「委任状書いてあげるから問題無いわ。それに、ベス嬢が居れば門前払いはされないでしょ?」
「それはどうかと。家名と顔が合致せぬ者もおりますので…」
門番とか、エリートの中でも下っ端だろうし、名を明かして誰だそれ?って事になるやも知れん。騎士であるマイケル様の妹だと言えば流石に面通しくらいはするだろうけどな。
どうやらセーナは移動時間を店の仕事に使いたいらしい。僕がゴネても大丈夫よ、で流してしまった。不安しかないが翌日からは準備に1日使って、明日は王都に向けて出発となった。
「寂しくなるわね」
夕飯後、浴場から帰って居間で晩酌。ロシェルは寝に行ってしまったが、たまには僕もお酒に付き合う。こらから往復100日以上の遠征だ。僕だって少し寂しい。
「とにかく無事で戻るよ」
「私がおばさんになる前に戻りなさいね。今日は一緒に寝る?」
「そうだね」
誰か止めるかと思ったのに、誰も突っ込んでくれないのな。1番のツッコミ役が寝てるからだろうけど、間違いが起こっても知らないぞ?
「帰って来て、腹が膨らんでるか賭けようぜ」
「そう言うのは聞かれてない所でやんなさい」
エヴィナはひとしきり笑うと邪魔者は退散だと行って飲兵衛達を屋根裏部屋に連れてった。残った僕とセーナは会話も途切れ、コップに残った分をチビチビ飲む。
「明日から早いわ」
「そうだね。寝よう」
セーナの部屋は魔道具の材料や工具が置かれ、寝床と言うより作業場だ。横になったベッドからセーナの匂いがしなければ、男の部屋と言われても信じてしまう事だろう。
「期待、してる?」
「…うん」
「生きて戻ったらね。酔った勢いってのも嫌だわ」
「…うん」
僕の半身に乗り掛かるセーナの囁きに答える。少し重くて、柔らかく、温かかった。
冒険者ギルドで移動の処理を行い、乗り合い馬車の受付をする。7人の大所帯なので予約は絶対だ。でないと揉める事になる。
「金は払うからさあ!頼むぜ!?」
「後2人くれぇの空きあんだろーが!」
「馬に負担が掛かるから搭乗数は決まってんだ。男なら歩いて付いて来い」
予約しなかった5人組が楽をしようと馭者に詰め寄る。男2人の女3人。女性達はとっとと馬車に乗っちゃって、ムスッとしながら成り行きを見てる。馬車の外ではそもそも歩くつもりの冒険者からは指を差されて笑われてら。彼等は経験の浅い冒険者なのだ。
多人数パーティーでの馬車移動の場合、メンバー数-2くらいの席を取り、残った2人は徒歩で行く場合が多い。交代で歩けば安上がりだからだ。何度も馬車を使ったり、学園で学んでいれば知ってる財テクだが、それを知らないのは経験が浅いと言うしかない。風体を見ても僕達よりお安そうだもの。女性3人の方も、自分達が歩かされるとは微塵にも思っちゃいないだろう。
「親父、とっとと出ちまいな。金があんなら明日の馬車に乗りゃあ良い。だろ?」
「だな。馬が急くから出発だ」「ちょ!?」「おいっ!」
エヴィナの声で意を決した馭者は馬を言い訳にして出発を宣言した。乗れなかった2人は文句も言えず、徒歩の冒険者達と合流する事になり、新米だの小童だのとからかわれてる。それはそれで楽しそうだ。
「はぁ。男って、すぐ馴れ合うんだから」
3人女性の1人が悪態を吐く。どこのコミュニティでも1人は居るタイプだ。ソロでやれない自分を棚上げしてる事に気付いているのかね。
「男色なのよきっと」「受けですね!」
もう1人の言葉にジュンが食い付いた!受けって何?
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