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メイドの、仕事
しおりを挟む久しぶりの再会を喜び、宴は朝方まで行われていたらしい。朝、食堂に降りて未だ片付かない部屋を何とかしようとしているメイド達がいた。デッドパーソンみたいな動きに一瞬たじろいでしまったが、デッパなら襲って来ないから大丈夫だ。
「手伝うよ。いつまで飲んでたの?」
「お…おはよう、ございやす。さっき終わった所ですわ」
声を掛けると掠れた声で馬鹿みたいな事を言った。
「旦那さんにお手伝い頂く訳には」
手伝わないと終わらないだろ。言い返して体を動かした。
「ユカタ、何してんの?」
「メイドの仕事だよ。手伝えばご飯が早く食べられるぞ」
外から帰って来たのか、汗を垂らしたロシェルが現れる。手伝いを促すが、汗拭いて来ると言い残し、食事の支度が整うまで戻って来る事は無かった。
「すいやせん、料理までさせちまって」
「このご恩は、体で」
「はいはい体でねー」
自分の欲を満たすためなので、やって良いなら進んでやるよ。具だくさんスープを作って味見させた。
「締めのスープが沁みやす…」
「お嬢達を起こして来やしょう」
「無理に起こさなくて良いからね。旅の疲れも出てるだろうし」
こう見えて冒険者。エヴィナですら料理は出来る。スープを温める程度の事は出来るのだ。皆揃っての朝食は無理だろうし、起きてる者だけで食べた方が効率が良い。スープと昨日のパンをトレイに乗せて食事に戻るとロシェルもちゃっかり戻ってて、僕の食事は奪われた。
「旦那さんのはこちらに。さあ、お席にどうぞ」
「みんなも食べちゃおう。少しでも休まなきゃお酒も抜けないよ」
飲兵衛が降りて来ないので、起きてる皆で朝食を摂った。その後ロシェルは食っちゃ寝すると言って客室へ。メイド達もそれぞれ休みを取るようだ。貴族街をウロウロ出来ないし、僕もロシェルみたいに鍛錬でもするか。
メイドの下宿は村人からすればお屋敷だが、貴族から見たら家である。しかし小さな庭もあって剣を振る程度の事なら問題はない。村人から見たら囲い罠程の大きさだけどな。
見えない相手の攻撃を避けながら中剣を振り、ロシェルの影を斬って行く。実体はこれの10倍は強いが、想像に殺されまくられたら鍛錬にならないのだ。
「旦那さん、誰と殺り合っておいでで?」
声がして、タオルを持ったメイドが控えてた。休んでれば良いのに。
「ロシェルだよ」
「クフッ、お戯れを」
それなら避ける練習だけしろ、だって。
「隙は一瞬。雑に振り回してもあの女は斬れやせんぜ?さ、湯でも浴びてくださいや。飲み物も用意しやすんで」
弱い想定より、強い方でやった方が身になると言われた。弱いロシェルなんて僕の頭の中だけだろうしな。メイドに押されて浴室へ向かい、寄って集って全身くまなく洗われたりした。
「でー?なかなかメイド共が見付からなかったって訳か」
「香油まで付けて。貴族みたいですわよ?」
「お嬢は滅多に付けやせんからね」「たっぷり塗り込ませていただきやした」
午後になり、遅い朝食を摂る飲兵衛達に僕の成りについて質問が来る。普段仕舞いっ放しにしてる貰い物の服を着て、髪を整え香りまで付いてる僕を見て、メイドに何かされたと思うのは仕方ない事だろう。
「おめかし人形にされたのね」「可愛くなりましたね」「私もしたかったな」
皆のおもちゃにされるのは嫌だな。
「甘い匂い。ユカタには合わないよ」
「お嬢の香油ですからね」
男用の香油なんてのもあるのか?付ける機会なんて無いだろうけどな。
「で、ヤったか?」
何で食事中にそう言う事言うかなー。何言ってもヤったと捉えられる質問じゃないか。
「中をお見せしやしょうか?」
「…腹膨らしたら容赦しねぇぞ?」
「その時は祝っていただきやす」
メイドのしたり顔に、エヴィナは膨れっ面でそっぽを向いた。メイドのお腹を膨らませる事なんてしてないぞ。膨らませる事は、だが。
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