【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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夜戦の、原因

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 女性陣の査問会に、僕の立ち入りは許可されなかった。出来れば穏便に済んでもらいたいが、客間を追い出されて聞き耳を立てる訳にも行かず、食堂でお水もらって待つしか無かった。

「旦那さん、何か摘みやすかい?」

「もうすぐお昼だし、我慢するよ」

 メイドが来たが、もてなしを断る。食べ過ぎても眠くなるし、頭を冒険者モードに切り替えたいのもある。

「お嬢の事、呉々もお願いいたしやす」

「好いてくれる子を無下にはしないよ」

「その時は、私等もお供しやすので、どうか一つ」

 そう言ってメイドは跪き、僕に触れた。僕は楽しみだと返してメイドに触れる。ご飯美味しいしな。

 しばらくして、厨房から美味しい匂いがして来ると、査問会を終えた女性陣がアルアインさんを連れて食堂に集まる。アルアインさん、ちょっと痩せたか?

「本日より同行する事になったアルアインですわ」

「あ、改めてよろしく…ね」

 僕が連れて来たのに改めて紹介するのはどうしてだろう。同行の許可が降りたって事なのか?バッチリ決め込んだ装備を着て、ダメだとなったらアルアインさん泣いちゃうぞ?

「戦闘の経験は浅いとの事なので、主に装備の整備を担ってもらいます。よろしくて?」

「それで良いよ。あ、馬車の予約しなきゃ」

「それは朝一で済ませてあるから平気だよ」

 予約が埋まってなくて良かった。そもそも予約する者も少ないがな。今日から8人パーティーだ。馬車も宿も取りにくくなるだろう。馬車の予約が取れず日を跨ぐ事もあるかも知れない。ない事を祈る。

「そう言えばさ、アルアインさんは冒険者ギルドに加入してるの?」

「それも平気。身分証は硬券化してもらったから」

 役所に申請すると有料で硬い身分証にしてくれるそうだ。街渡りや国渡りする行商人は硬くしてるんだって。ちなみに商業ギルドの会員証は持っておらず、父さんが亡くなってたら持ってたかもね、だそうだ。



 少し早い昼食を摂り、メイド達に別れを告げて、乗り合い馬車に乗り込んだ。僕等の他には2人の男女。満員御礼での出発だ。同乗した男女は新しく出来た町に家を借りて住むと言う。

 新しく出来た町と言うのは野盗やら地走りに支配され、騎士団に潰された元村の事だろう。未来ある2人に過去の事を言っても悪口にしかならないので黙っておく。皆もソレについて触れる事は無かった。そんな事より2人の馴れ初めを聞いたり女子トークするのに夢中になっていた。

「不寝番、本当にしなくて良いの?」

 夜になり、アルアインさんは不寝番を免除された事に意見を述べる。もちろん敵が出たら起きて身を守ってもらうが、彼女には整備に力を注いでもらいたい。皮も金属も直せるアルアインさんには万全の体調で仕事に望んで欲しいのだ。

「今日は初日だしここまで何にも出なかったけど、明日は夜更かしして直してもらうかも知れないからね。ソレにジュンが作った石の壁があるから余程の事が無い限り戦う事は無いよ」

「あるのね?余程の事」

 ある。馬鹿が肉を食べたくなった時に、食用可能な獲物が来た時だ。ロシェルに羽交い締めにされてエヴィナに腹を殴られたが、アルアインさんは笑ってくれた。覚えとけよ…?

 索敵の問題上、エリザベス様とロシェルは別の組になり、3人4人の2組で2時間毎の4交代で不寝番をする。先にエリザベス様、レイナ、マキが2時間過ごし、寝てる僕等を起こしに来る。

「貴方様、起きてくださいまし。貴方様」

「う…、ベスゥ」

「ささ、あたくしのおっぱいをお揉み遊ばせ」

「あ、あた?」

 伸び掛けた手が止まり、目を開けるとエヴィナだった。寝惚けてたとは言え声が似てて思わずうえっと声が出た。

「ヒヒッ、似てたろ」「似て等おりませんっ」

 似てたけど、似てたとは言えない。

「エヴィナは、エヴィナだ」

 伸び掛けて、止まってた手を伸ばして動かした。硬い皮の感触であった。









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