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密室の、男女
しおりを挟む「ロシェルが済んだんだからな、分かってんだろーな?」
「まあまあ。これからムルザバに戻るのだから。慌てる事は無いわ」
「ちっ、そーだな。セーナ嬢にある事ない事吹き込んでやっか」
貴族2人が不穏な言葉を口にする。そしてエヴィナよ、ない事は、言うな。
そんな事があった朝でも僕達は忙しい。王都を立つのは明日なので、今日の分の宿賃を払ったら食料等の買い出しをして、馬車の予約もしなけりゃならない。
「貴方様は馬車の予約に。残りは適宜買い出しへ。よろしくて?」
エリザベス様の一言で、僕はボッチになってしまった。
「ならギルドにも寄って来るよ。戦利品もあるからね」
大通りから外れなければ迷う事は無いだろう。宿屋街から右に行けば停車場で、門の隣がギルドなのだから。朝食を摂ると女性陣は固まって街の雑踏に消えて行く。通りを右。頭で唱えて僕も出た。
停車場で明日の予約をして目と鼻の先のギルドへ向かう。冒険者の姿もまばらな昼前は、王都も田舎も変わらないのな。
「いらっしゃい。見ない顔ね」
「4日前に来たきりだからね。買い取りはどこかな?」
暇をしていた受付嬢に誰何されて用件を告げると、あっちよと指差して行先を示してくれた。見ると買取り嬢も手を振ってる。暇なのだな。
「そうだ、貴方仕事は請けないの?」
「今パーティーで輸送の仕事してるんだ。明日には立つ予定だから、明日事務処理に寄るよ」
受付嬢に礼を言い、買取りカウンターへ向かう。
「聞いてたわ。まだ若そうなのに輸送なんて、良いパトロン見付けたじゃない」
「パトロンかどうかは分からないけど、すごくお世話になってるよ。所で…」
少し声を落として話す。野盗の首があるなんて大きな声じゃ言えないからな。僕達程度の若造が獲れるなんて思ってないが、賞金首には金貨何十枚ってのもいるのだ。人のまばらな時間帯とは言え、迂闊に聞かせる事も無い。
「まあ良いわ。付いて来なさい」
で、連れて来られたのは尋問室。どこのギルドも必ずあるんだな。
「血抜きはしてある?」
「ドバドバ出ない程度には」
「そ。ならコレに入れて」
机に出されたタライへ背嚢を開けて首を出す。
「マジックバッグじゃない…。貴方、お金持ちなの?」
「田舎に家を作れるくらいかな。まだまだ稼がなきゃだよ」
「まあ、そうね。若い内から田舎暮しじゃ体を持て余すわ。じゃあお仕事お仕事…」
そう言うと生首を持ち上げて紙束とにらめっこを始めた。紙束には賞金首の人相書きでも書いてあるのだろう。手持ち無沙汰だけど仕事の邪魔になっちゃうし、大人しく待つしかない。
「ねえ、首はこの3つだけ?」
「敵は22人いたけど、仲間が火魔法で焼いちゃったから、顔の分かるのだけ斬って来たんだ」
「勿体ないわねぇ。焼けてても持って来た方が得なのよ?」
持参した首の仲間に少し高い奴が居たらしい。手配書を見せられこんな奴居たかと問われたが、夜戦だから分からないと答えておいた。壁越しに魔法で殺ったとか言って、信じてもらえるとも思えない。
結局首は3つで銀貨20枚、2人が各5銀貨、1人が10銀貨だそうだ。
「掘ったらまだあるかな?」
「埋めたなら1日で骨も残ってないわね」
地中に棲む魔物が食べちゃうんだよな。村にも割と出た。
「野盗と魔物からの剥ぎ取りもあるんだけど」
「数が多そうね。少しずつ…まずは賊の物から出して」
武具や装飾品、中身不明の袋を種類分けして出して行く。皮鎧が多く、大半は焼けてしまったのでおかげで僕でも背負えたが、回収出来た武器は中剣が大半で結構重かった。
「やっぱり大口が居たみたいね。確認が出来ないのが残念だわ」
「親玉みたいな偉そうなのはいたよ?武器と指輪しか獲れなかったけど」
どうやら大口の武器は特徴として手配書に書かれてるみたい。上に報告するかと聞かれたが、確証が持てないからと断った。
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