【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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右往、左往

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 東西南北。即ち4日経った。東の端はオーイに向かう枯れた草地が広がり、南の端は臭い水場で魔物が体を汚してる。北の端は水を貯める太い木が林の中に点在し、西の端はやや湿った草薮であった。

「定住するなら、東西いずれかでしょうか」

 流石エリザベス様だ。西の端は薬草が採れるし東の端は街に行きやすい。南北は論外だと分かっておられる。

「旦那様、南は臭えから分かっけど、北じゃねーのは何でだ?」

「北で小便したら地面に染みて南に流れてく。後は分かるな?」

「ん……水場がある」

「そうだ。水場が臭くなるな」

 良い子のハキは撫でてやろう。エリザベス様も頭を捩じ込んで来た。撫でろと?よしよし。

「じゃあ、西に行くか?旦那も作付けは気にしてんだろ?」

「お嬢、そうなりやすとぬかるみを越えて行かにゃあなりやせん」

「じゃあここか?」

「旦那様、私も同じく思いやす」

「だね。西に伸ばすのは人が増えてからの話になりそうだね」

「村人、増えんのかな」

「頑張れ村人」

「俺、いっぱい産むよ!」

 頑張るのは良いが、ウォリスみたいに毎年ポコポコ生まれたりしないからな?

「まずは住居と畑、当面の食料となる備蓄を揃えましょう。人も赤子もそれからです」

「奥様。この村には建材が少のうございやす。石材は元より少なく、木材は細い物と太くても柔らかい物ばかり。他所から建材を買い付けていたものと予測されやす」

「旦那、村人的にはどう思うよ?それとお前ぇ、何でオレは奥様じゃねーんだよっ」

「慣れです」

「僕は家建てた事無いけど、家を建てるのに建材を買うなんて聞かないね。釘とか鎹とかすがいかの細かい物は、買ったりするのだろうけど」

「貴族も平民も、街に住む者が家を建てる時は大工や建築士に依頼をしやす。そこで支払う代金に、建材料は含まれておりやす」

 村の場合、手伝ってくれた人に振る舞いをするが、それが依頼料代わりになってる感じか。

 村作りの拠点が決まり、今日は1日休みとした。そして翌日から4日、東西南北の間を見て周り、1日休んでオーイへと向かった。



「旦那様、お金はあるのになぜこんな安宿なんですかい?」

 オーイに着いたのは夕方遅く。すぐに宿を取ったのだが、浴場の目の前だからと言う回答もあまり納得してない様子。風呂が近いのは利点だと思うけどな。それよりも。

「ベッド1つ足りないけどどーすんのさ」

 借りたのは以前も借りた4人部屋。荷物を置いたら動線が無くなる狭い部屋に5人。女将さんはハキが子供だからそのまま泊まらせてくれたが、誰か1人は1つのベッドで寝る事になる。

「旦那様、私は旦那様と一緒に寝やすので好きに使って下さいやせ」

「オレが」「私がわたくし」「俺床で良いぜ?」

「ハキと寝る!」

 誰にも文句を言わせなかった。臭くなくなったし、小さいからベッドを圧迫しないしな。そして朝になる。飯食って酒飲んで泥のように寝た。

 翌日、到着の事務手続きのためギルドに向かうと僕達を待っていたと言う女性職員。貴族とメイドが立ち塞がって、話を聞くらしい。

 職員曰く、2日前に来た伝言で、明日セーナ達がオーイに着くらしい。貴族とメイドを掻き分け敢えて聞く。2日前に来たその伝言はいつどこから送られた物なのか。曰く、長距離伝文の魔道具により届いた物で、送り先はムルザバの商業ギルドからだそうな。

「ムルザバから?」

「飛竜便を乗り継ぐのでしょうか」

「セーナ様、金持ちだな」

「そんなに持ってる風には見えないけどね」

 長距離伝文の魔道具は僅かな時間で届くそうで、発着は当日中に行われたようだ。飛竜便に乗って王都、乗り継いでオーイ。出来ない事は無いが、セーナ1人じゃないだろうし、6人で一体いくら掛かるのやら。

「足りない分、僕のお金を当てにしてるのかな…」

「貴方様、その時は私が用立てましょう」

 早く稼ぎを増やさねばっ。










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