【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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10日しないで、野菜は尽きる

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 村名は保留と言う事で、まずは周囲の脅威を確認し、それから井戸に入って水が上がってるかの確認を行う。ランタンを持ったライラがスルッと入り、しばらくして上がって来た。

「ダメですね。呼び水しててコレじゃあ使い物になりやせん」

「はぁ、無駄手間だったな」

「それならそれで、諦めが着くと言うモノです」

 ライラの回答にエヴィナは息を吐く。エリザベス様は切り替えが早い。

「貴方様、新しい井戸を掘らねばなりませんね」

「水源ならあるじゃん」

「あそこか?旦那、あんな場所じゃ家も建てらんねーぜ?」

「お嬢、あそことは?パー家の知らない水源があったのですか?」

 ライラに以前見付けた湧水の事を説明すると、パー家の当主は水が枯れた場所を僕達に割譲したそうなのだ。ライラは自らの目でその現状を確認し、事実であれば国に報告する目論見であったと言う。

「水があるなら使わない手はありやせんね」

「だがよ、家建てらんねーぜ?」

「エヴィナの鄉だとその認識なんだよね」

「他の街だってぬかるみン中に作ってなんてねーだろ」

「まあまあ、まずは行こう。馬も洗ってあげたいしね」

「俺も体洗いたい」

 皆水浴びはしたいので、翌朝水源に向かう事となった。翌日になり水源に向かい出発すると、臭い水場で会敵し、ブフリムとゴーラを排除して食料を増やす。水源に近付いた時、戦車がぬかるみにハマって動けなくなったが、特段支障なく移動出来た。

「沈んでた水が上がって来てやしたのですね…」

「な?家建てらんねーだろ?」

 エヴィナの言葉に皆考えてしまうが、僕だけは違った。

「僕思うに、元々水が上がりやすい場所だったんだと思うよ?」

「と、言いやすと?」

 倒壊した家屋を収納した時、家屋には床下があり、床を高くしていた事を挙げる。それは水が上がっても生活に支障を来さない工夫であると考えを述べた。

「僕の住んでた村じゃないけど、桟橋の上に家を作って住む集落とか、筏や船を住処にする村もあるんだよ」

「なるほどなぁ」

「思い出しましたわ。海戦だった戦場で、船の上で生活する民が居たとお父様に聞きましたわ」

「聞いた事はありやすが、一時しのぎだと思っておりやした。定住していたのですね」

「じゃあ、桟橋でも作っか」

「先に馬洗お。僕達も交代で休もう」

「俺、穴掘るぜ」

 ハキにはスコップを渡して、僕とライラは馬を洗う。残る2人は警戒と休憩だ。馬の世話して昼食を食べ、装備の整備に水浴びをすると、僕はようやく重い腰を上げた。

「まずは川から出よう。馬鹿みたいにこの上に住む必要はないからね」

 少し歩けば乾いた陸があるのだ。何も準備のない状態でぬかるみの上に住む必要は無い。水の出やすい所から東に向かい、乾いた場所に馬を誘導すると、細い木に馬を繋いで作業に入る。

「10日くらい暮らせれば良いし、この辺りにテントを張ろう」

「10日とは、どのようなお考えで?」

「ここに村を作る。作るとして、周囲の確認しなきゃね。それに10日使おうと思う。ここを起点に歩いて10日なら端から端まで1日掛かる。そのくらいの広さなら僕等でも管理出来るでしょ」

「敵の排除もしておきやせんとね」

 テントを張り、竈とトイレを作って今日はここまで。早めに夕飯を食べて夜襲に備えた。

 明け方に夜襲があってまだ少し眠いが、朝食を食べて野営を出発する。今日から10日は歩いて見回るので、馬とライラとハキは留守番してもらう事にした。もちろんハキはごねたがライラが説得したようで、見送りは笑顔であった。また戦車に乗せてもらえたりするのだろうな。羨ましいぜ。

 下草を剣で切り払いながら進路を東へ。林が開けて枯れた草地が広がった。村の入口として見やすくなれば、廃村から一々移動しなくて済むので戦車が通れる程の道になるように草刈りと伐採をしてその日を終え、野営に合流した。







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